第12話雷脚の飛蝗女②

 ライジンホッパーとの戦いでライはホッパーの飛び蹴りを受け、崖から落ちた。


「捜せ、どのような状態であっても私の前に連れて来い。」


 ホッパーはオークコング達に命令する。命を受けたオークコング達はライを捕らえに行く。


「あれぐらいで死ぬような相手ではないはず。私が確実に殺す。」


 ホッパーはグッと拳を握った。



 

 ネイルとオリビアはデビルウータンとオーガホーリーと交戦していた。ネイルはオーガホーリーの、オリビアがデビルウータンの相手取っていた。


「ったく、またアイツは離れて…」


 ネイルはオーガホーリーの手裏剣を捌きつつ、向かって来るオークコング達を槍で倒していく。


「早くあの子と合流しないと…!」


 クレセントウィップでオークコング、デビルウータンに応戦しながらオリビアはライの身を案じていた。


「行かせるものかっ!」


 オーガホーリーは両腕に巨大な柊の葉の刃を装備し、身体を回転させて、ネイルに襲いかかる。


「うおっ!ううううぅぅぅっ…!」


 ネイルはアイアンランスで回転攻撃を受け止める。

 刃と槍が接触するたび、火花が散る。

 

「っ!!」


 このままでは押されると判断したネイルは肩と腰部分のパワードスーツの装甲を展開し、ミサイルを放った。

 ドオォォン!!

 ダメージはあまり無かったが動きを止めることは出来た。

 すぐさま後ろに後退するオーガホーリー。それを逃がすまいとハンドガンタイプのビーム銃で狙撃するネイル。

 しかし巨大な柊の葉の刃を楯にしてビームは防がれた。


「チッ!」


 アイアンランスで突きを連続で放つ、それをオーガホーリーは刃を盾にして駕ぐ。


「これは避けれるかな?」


 デビルウータンは念動力で石や木を浮かばせる。それをオリビアに向かって飛ばす。


「ーっ!」


 冷静にオリビアはクレセントウィップを振るい360度からの攻撃を捌く。

 完璧。まさにそう言わざるを得ないほど、彼女の身体には石ころ一つ届かなかった。


「ならっ、幻覚イリュージョン」


「なっ!?」


 デビルウータンの水晶が光を放つ。光が周囲を包んだ瞬間、オリビアの周りには大勢のデビルウータンが囲っていた。


「デビルウータン私にも頼む!」


 戦闘の隙をついてオーガホーリーは柊の木に変化した。それが水晶の光に当たると数えきれないほどの柊の木々が生い茂り、どれがオーガホーリーが変化したものか分からなくなった。


「うっ…!なんだっ!?このっ!」


 手当たり次第ネイルは槍で周囲の柊の木を突く。木々は突かれると消えていく。しかし本物には当たることはなかった。


「コッチだ…!」


 背後からオーガホーリーが斬りかかる。ネイルのパワードスーツから火花が飛び散る。


「ぐぅっ…!!」


 すぐにオーガホーリーが消えた方向にビーム銃を発砲する。しかし撃った木は偽物だった。


「くたばれっ!」


 オーガホーリーの声が響き渡る。そして次の瞬間全方位から手裏剣が飛んでくる。


「チイィ…!」


 ネイルは守るように腕を組んで頭を伏せ、防御の態勢をとった。

 次々と飛んでくる手裏剣。強化されたパワードスーツの装甲のお陰で大したことは無かったが永遠に耐えれる訳では無い。反撃に出たいが勢いが強過ぎてなかなか身動きがとれなかった。


「ハハハッ!いつまで耐えられるかな!」


 嘲笑いオーガホーリーは挑発するのだった。


 オリビアもデビルウータンの幻術に手こずっていた。


「っとに、キリがないっ!」


 クレセントウィップで十数体薙ぎ払うが全て幻であった。

 デビルウータンの大群が掌からリング状の光線を放つ。

 オリビアはスーツからビームシールドを発生させ攻撃を防御する。


「ぬっ、ぬうぅぅ…!」


 後ろに倒れそうになるのをなんとか堪え、クレセントウィップ、グレネードランチャーで反撃する。デビルウータンの大群を蹴散らすが本物には当たっていない。


「このままじゃ、こっちが尽きちゃう!」


 オリビアはマスクの下で表情が険しくなる。次の瞬間


「!?うっ、くっ、苦しい…!」


 オリビアの首が絞められていく。首には何も巻き付けられてないが、ドンドン絞められ苦しくなっていく。


「ーっ!そ、そうか…!!」


 オリビアは思い出す。それはさっきデビルウータンがライに対して使った技、念動力で相手を絞め上げるエアチョークのことを。


(確か、あのとき手で首を絞める動作をしていたはず。)


 オリビアは周りの無数のデビルウータンを見渡す。目視できる限りではそのような動作をしているものは確認できない。

 捜している間にも首はドンドン絞まっていく。


(こ、呼吸が…意識が…)


 薄れ行く意識で諦めかけようとしたそのとき、


「ーっ!!」


 偶然目線の先に両腕で首を絞める動作をするデビルウータンを見つけた。


「っのおぉ!」


 前腕部からビームを発射する。


「ー!?」

 ドカーン!!!

 放たれたビームはデビルウータンを直撃する。

 そして分身たちは消えていく。

 同じくネイルと剣戟を繰り広げていた無数のオーガホーリー達も消えていく。


「むっ!お前が本物か!」


 ネイルは槍でオーガホーリーを突く。


「グワッ!」


 槍で突かれオーガホーリーの脇腹から鮮血が流れ出る。

 そのまま連続突きでオーガホーリーを攻撃する。


「わっ、加減してよ!」


 オーガホーリーは防戦一方、ネイルが押す形になった。


 オリビアは跳び上がりクレセントウィップでデビルウータンを攻撃する。

 デビルウータンはそれを流れるように避ける。しかしタイミングを見計らったのと落下の勢いを利用したオリビアのニードロップがデビルウータンの胸に直撃する。

 続け様に左フックで殴り飛ばす。


「ぐっ…!」


 殴られたデビルウータンはオリビアに背中を見せて走り出す、逃がすまいとオリビアは銃を発砲するがあっという間に木に登り距離をとられた。

 しかしそれでもEAGEST組の有利は変わりなかった。




「ライ、起キロライ、起キロ。」


「うっ、う〜ん…。」


 白龍の呼掛けでライは目覚める。変身は解除され元の少年の姿に戻っていた。

 ライジンホッパーに崖から落とされ運良く木がクッションとなり、大きな怪我をせずにいた。


「あのバッタ女強いね…。あの蹴り痛いのなんの。」


 ライはホッパーの蹴りを思い出しブルッと寒気がした。


「電気ヲ食ベル飛蝗騒動ノ犯人ハアイツデ間違イナイ、恐ラク飛蝗ノ溜メ込ンダ電気ヲ自分ノエネルギー二シテイルハズ…」


「しっー…」


 白龍の言葉を遮りライは目を閉じ感覚を研ぎ澄ませる。


「…ドウヤラ追ッテガ来タヨウダ。」


「そうみたいだ、ねっ…!」


 ライは跳び上がる、跳び上がった先にはライを探すオークコングがいた。


「だあぁぁ!」


 そのまま飛び蹴りをオークコングの胸に放ち、両手刀を挟むように首に喰らわす、背負投げして倒した。


「オゴッ!」


 もう一体のオークコングがライを殴る。しかし効いていなかった。


「であぁっ!」


 お返しとばかりにアッパーカットからのボディブローで沈めた。

 ババババババババッ!

 駆けつけた他のオークコング達が銃を乱射する。


「うわっ!」


 その場で伏せ、銃撃を躱すライ。


「生身デノ戦闘モ良イ経験ダ。」


「まったく…そうだねっ…!」


 銃撃が止んだ一瞬の隙をついて、ライは光弾を放ち応戦する。粗方倒し、ライは走る。


「とにかくどうやって飛蝗女を倒すかだね。」


「奴ノ攻撃ノ要ハ脚ダ、ソレト体ノ何処カニエネルギーヲ貯メテ変換スル器官ノヨウナモノガアルハズ、ソレガワカレバ…!」


「…っ!ネイルとオリビアの居場所が分かった。」


「ナラ、2人ト合流シヨウ。」


 ライは2人の気配を感じ取り、2人のいる方向へ走る。



 ネイルとオリビアは確実に勝利に近付いていた。


「ハァァッ!」


 オーガホーリーが二対の刃でネイル攻撃するす。

 ガキンッ!!


「おおっ…!くっ…たぁっ!」


 ネイルは槍で刃を受け止めると押し返した。オーガホーリーが押し返されて態勢が崩れたところに回し蹴りを繰り出す。

 そして突きを連発して、巨大な柊の葉の刃を一つ破壊した。


 デビルウータンはオリビアのクレセントウィップから必死に逃げていた。反撃で紫の火球を放つがスーツの消火スプレーで鎮火されてしまう。


「逃さない…!」


 オリビアはハンドガンを発砲する。

 シュッ!

 ハンドガンは木に飛び移ろうとするデビルウータンの右肩に命中する。

 弾は貫通し、右肩を抑えながらデビルウータンは落ちる。


「「終わりにするっ!」」


 2人はそれぞれの敵にトドメを刺そうとしたそのとき。

 ドカッ!バキッ!

 一瞬にして2人は何かにふっ飛ばされた。


「「!?!?」」


 2人は何が起こったのか分からなかった。2人はそれぞれ戦っていた場所は互いに目視できる距離だが決して近くはない距離だった。その2人をほぼ同じタイミングで攻撃を受けたということだ。ただ一つ分かることは攻撃を受けてから今までビリッと残る電撃を受けたこと。


「何をやっている!人間如きに遅れを取るなんて!」


 ホッパーが姿を現す。


「あっ!お前、あいつと戦っていたはず!あいつはどうした!」


 ネイルは怒気を含めてホッパーに問いかける。


「あの黒龍なら谷に落としてやったわ。もうすぐ死体が見つかる頃。」


 フフッと得意気にホッパーは言う。


「な、なんですって…!」


 オリビアは愕然とする。幾ら自分から志願したとはいえ子どもを死なせてしまっては早川や麗に何と言えば良いのかオリビアとネイルは青ざめる。


「お前ら許さねぇ、纏めて串刺しにしてやる!」


 ネイルはアイアンランスを構える。


「面白い、蹴り殺す!」


 ホッパーの脚が電気を帯びる。

 とそこに


「待て!」


 場を制す一声が響く。


「残念だったなホッパー!オイッ…私はこの通り無事でいるぞ。」


 森の闇の中から変身したライが現れる。


「貴様、生きていたのかっ!」


 これにはホッパーも驚きを隠せない。正直生きているとは思っていた、だがそれはボロボロの死にかけの状態と想像していた。ここまで良い状態とは思っていなかった。


「さぁ、リベンジマッチだ!トォ!」


 ライは跳び上がるとホッパーの近くに着地した。すると周りをオークコングが取り囲む。


「お前たちを相手にしてる暇はない!!」


 全身から衝撃波を放ち、オークコング達を吹き飛ばす。


「超能力、透視!」


 ライはホッパーの身体の中を見たいと意識を集中させる。するとホッパーの身体が徐々に透けて内部構造が視える。


「うへぇ、気持ち悪い…」


 人間とは違う身体の作りにライは本音が口から漏れてしまう。


「何処だ、何処だ…!」


 距離を取って攻撃を仕掛けながらエネルギーを作っている場所を探す。


「んっ…?あれは?」


 右胸に電気を帯びた心臓に似た臓器を見つける。


「右の胸に電気が出てる心臓みたいなのがあるよ。」


「ソレダ、ソレコソガ奴ノエネルギーヲ作リ出スモノダ。」


「よーしっ!」


 白龍の言葉でライはホッパーの右胸をピンポイントで狙う作戦で行った。


「槍龍!」


 槍状の光をホッパーに放つ、が、それは見事に躱される。


「まだっ!とあぁぁーーっ!」


 ライは飛び蹴りで突っ込む。


「私に蹴りで挑んでくるとはっ!!」

 

 ホッパーは脛で受け止める。


「たあぁっ!」


 間髪入れずにマシンガンのように素早いパンチを連続で放つ。狙いは右胸。


「くっ、このおぉ!」


 ホッパーは左脚に電撃エネルギーを込めると上段蹴りをかけてくる。


「いぃっ!」


 ライは手甲の爪ドラゴンクローを伸ばし、防御する。蹴りを受け爪は折れてしまった。


「きっ…!」


 すぐさま新しい爪を生成し、次に備える。


「はっ…!」


 ホッパーの右跳び膝蹴りを再度爪で防ぐ。

 パリンッ!

 また爪が折れる。


「…!ならっ!」


 ライは加速し、高速攻撃を仕掛ける。


「逃がすか!」


 ホッパーは強靭な脚力と電撃の力でライの高速移動と同等以上の速さで走ることが出来る。

 高速で何度もぶつかり合う2人、が、スピードと力でホッパーが僅かに上回っていた。


「たぁっ!」


 ローキックを受けライは転がる。


「くそっ!」


 ライは右胸に向け爪を飛ばす。しかし全てホッパーに蹴り落とされる。


「フン、どうやら私の完勝のようね。」


 ホッパーは己の勝ちを確定したと言わんばかりの余裕を見せる。


「ハハッ、化け物でも女だろ?幾ら戦いとはいえお股おっ広げにするのは見てらんないな。女ならもっとお淑やかに華麗に技出せってんだ。」


 苦し紛れにライは口で反撃する。


「…っ!コイツ…!!!」


 完全に頭に血が上ったホッパーは跳び上がり、蹴りの体勢で降下して来る。


「死ねやぁぁぁーー!」


 ホッパーが飛び蹴りを仕掛けながら迫って来る。そのとき

 ビュウウウッッ!

 何処からともなくビームが飛んできてホッパーを撃ち落とした。

 ホッパーは空中で態勢を直し着地した。


「誰だっ!?」


 予想外の攻撃を受けホッパーの怒りは更に上がる。

 パキッ、ミシッ


「「!!」」


 ライとホッパーは足音がする方を向く。そこには緑色のパワードスーツを纏った人物がいた。デザインがネイルやオリビアと同じモノからEAGESTの者だとわかった。スーツのフォルムから女性であることもわかる。

 左手指から煙が立ち昇っていて、恐らく先程のビームを放ったのはこの女性なのであろう。


「貴様、EAGESTの新手の者かっ!」


 ホッパーが緑のパワードスーツの女性に問う。


「はぁ…司令から救援に行けと命令されたけど何これ?龍が飛蝗にやられてるって、これ何の昔話?」


 冷めたように女性はライがホッパーに追い詰められている現状を口にする。


「理由のわからないことをっ!」


 ホッパーは目にも止まらぬ速さで女性と距離を詰め、右脚で蹴る。

 ガキィィン!!

 左腕で蹴りを防ぐ。


「ならっ!」


 ホッパーは様々な蹴り技を出す。女性はそれを全て左腕で防ぐ。


「くっ、なんだ!?いくらスーツを着ていても、まともに蹴りを何発も受けてたら無事じゃすまないはず…!」


「そう、私の腕はこんなんだから!」


 女性は左拳を“発射”した。


「な、何ぃぃぃ!?」


 ホッパーはギリギリで躱す。が、パワードスーツの女性は瞬く間にホッパーの間合いに入り、ホッパーの腹部に膝蹴りを入れる。


「っ…カッ…!」


 右腕のラリアットで地面に叩き付けられる。そこに飛んで行った左拳が戻って腕に連結する。

 すると手の側面から肘にかけてエネルギー刃が出てくる。


「ハッ!!」


 その刃でホッパーを斬りつける。


「ギイィ!」


 ホッパーは痛みで倒れる。そして女性はライに近付きスーツのマスクを取る。緑色のロングヘアーがマスクから開放される。そして白い肌で整った顔の美人が素顔を見せる。


「はじめましてね…パリ支部から来たイレーヌ・セレンよ。以後お見知りおきを…坊や。」


「オイラのこと知ってるの?」


「日本に着いてすぐ救援要請が出て、向かう道中で貴方達の情報を見たわ。」


「なら話が早い。お願い力を貸して。アイツの右胸にエネルギーを作る心臓みたいなのがあるんだ、そこに当てたいんだ。」


「ふぅ、良いわ。やろうじゃない。」


 2人は態勢を整えるとホッパーに突っ込んで行く。



 場面は変わりネイルとオリビアの2人はデビルウータンとオーガホーリーの分身攻撃に苦戦していた。


「くそっ、もう本物がわからない!」


「虱潰しにしてもこの数じゃ…」


 分身体は攻撃すれば消えるがまた新たな分身体が現れる。その繰り返しであった。

 持久戦では絶対的に不利、諦めが2人の脳裏に過ったとき、

 ドンッ!

 空から何かが降ってきた。いや、降りてきた。土煙が立ち、それが収まると降りてきた正体が現れる。それは人型、ネイルやオリビアと同じEAGESTのパワードスーツ、色は赤と白である。


「ご無事ですか?バンクーバー支部から来ました。ノア・バンダンであります。お二人を救援に来ました。」


 ノアと名乗る男は2人に敬礼する。そんな彼にオーガホーリーとデビルウータンが立ち塞がる。


「お仲間の登場か、だが何人来ようが」


「同じこと」


「我が魔術で呪い殺す。」


「我が刃で切り刻む。」


 分身体達が一斉にノアに襲いかかる。


「おっと!」


 ノアは地を蹴り跳び上がる。


「早めに決着を付ける。来いっ!!」


 ノアのもとに2門の砲身が備わっている、スーツと同じ赤と白色の飛行ユニットが飛んでくる。

 ノアは肩に飛行ユニットを装着する。


「カナディアンキャノン、標準セット。」


 キャノンが無数の分身体を捉える。


「拡散ビーム砲発射!」


 砲門からエネルギーの球体を作り出し、そこから無数のレーザーが放たれる。

 レーザーは全ての敵に命中する。レーザーの直撃で分身は全て消えた。


「ぐう、ぅぅ…」


「イタタタ…」


 本物のオーガホーリーとデビルウータンが姿を現す。


「「今だ!」」


 ネイルとオリビアは仕留めにかかる。


「デエエェェェイッッ!!!」


 ネイルはアイアンランスで渾身の突きを放つ。


「グッ、キャアアアアァァァ!!!!」


 槍の刃オーガホーリーの身体を突抜け、オーガホーリーは断末魔と共に爆発四散する。


「そぉぉれぇぇ!!」


 オリビアはデビルウータンの身体にクレセントウィップを巻き付ける。


「ハッ!」


 柄を思いっきり引く。引っ張られクレセントウィップはデビルウータンの身体に刃が刺さったまま動く。


「ギャアアアァァァ!!」


 全身の肉を裂かれてデビルウータンも爆発四散した。


「なんとか…倒せたわね…」


 オリビアは膝から崩れる。ネイルもマスクを外す、その表情はどう見ても疲労していた。


「さぁ、ボーイを助けに行かないと。」


 もう一仕事とネイルは立ち上がる。


「いえ、お二人はここでお休み下さい。私が行きます。それに彼のもとにも一人救援が行っています。では。」


 ノアは二人を気遣いながら、ライの下に向かった。




 ライのイレーヌはホッパーに攻撃を仕掛ける。


「ソレッ!タァ!トォ!」


 先にライが両拳でホッパーを殴るまくる。ホッパーはイレーヌに斬られた傷のダメージで身体を動かせないでいた。


「舐めるなっ!」


 ホッパーは口からの牙を剥き出しにし、ライの肩に噛みつく。


「うおぉぉっ…!」


 噛みつかれたことに驚きライは攻撃の手を止めてしまう。そこに

 ビゥゥッ!!

 イレーヌが左指先からビーム砲を放つ。それを避けるためにホッパーはライから離れる。

 その隙を逃さずライはくさび状の光弾を発射する。

 それを脚で弾き、素早い蹴りでライの頭部、肩、腹を蹴る。


「がっ…!!」


 ライはとっさに肩を押さえる。イレーヌはホッパーの攻撃を阻止するため、パワードスーツの肩からミサイルを発射する。

 ホッパーは回避運動をとる。それでもホーミングでついて来るミサイルを蹴り落とす。


「ムンッ!」


 身体から放射状に電撃を放ち、残りのミサイルを破壊する。


「おりゃあ!」


「!!」


 ライがホッパーにタックルをする。ドサッと二人は地面に倒れる。が、すぐにほぼ同タイミングで起き上がり、二人は睨み合う。お互い目を逸らさず、円を描くように足を動かし、牽制し合う。

 ライが手甲の爪を伸ばす。それを合図に二人は一直線にぶつかり合う。ライの爪がホッパーの脚が攻撃しあい、防ぎ合う。

 ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!

 激しい攻防が繰り広げられる。そのスピードは加速していく。ライは高速移動を応用し、ホッパーの雷速の蹴りに食らいつくが、

 パリン!

 両爪が折られる。


「っ!次!」


 すぐに爪を生成し、攻撃するが、そのスピードに付いて行けず、蹴り飛ばされる。


「くっ…!」


 受け身を取り衝撃を逃がし、すぐに立ち上がる。


「やっぱりアイツの蹴り、速い。それに一発が重い。」


 折れた手甲の爪を見る。


「高速運動ヲ腕ト意識二限定シテカケテミロ。身体全体ヲ加速スルトソノ分体力ヲ使イ、出セルスピードモ認識出来ルスピードモ遅クナル。加速ポイントヲ限定スルコトデ体力消耗ヲ抑エ、出セルスピードモ認識出来ルスピードモ速クナル。」


「わかった。」


 白龍の助言に従う。


「ソレト手甲ノ爪二エネルギーヲ集中シテミロ、威力ト硬サガ上ガルハズダ。」


 白龍の言葉通り、ライは爪にエネルギーを集中させる。すると爪は青く光り、今まで以上に長くなった。


「良し、名付けてエナジークロー!」


「それで強くなったつもりかっ!」


 ホッパーは電撃を纏い攻撃して来る。


「恐レルナ、腕ト頭以外力ヲ抜ケ、ソノ分ノ力ヲソノ2ツ二込メロ。」


 ライは深呼吸をし、全ての力を頭部、腕部に込める。

 ホッパーの左脚が迫る。


(来る!)


 ホッパーの蹴りがライを捉える。が、ライはその攻撃のスピードをしっかり認識出来ていた。

 ホッパーの脚よりも速く右腕を動かし、爪で弾く。ホッパーは脚を変え、真正面から攻撃する。それを左爪で防ぐ。逆に斬りつけた。


「な、なんで…?」


 ホッパーは驚きを隠せない。その右足からは血が流れる。


「お前の攻撃は全て見切った。もうお前に勝ち目はないホッパー。」


「言わせておけば調子に乗るなああぁぁ!」


 ホッパーは怒りに任せ蹴りの応酬をする。ライはそれを全て捌く。カウンターに腹部を切り裂く。


「キッ…!」


 ホッパーは腹部を押さえる。だがホッパーもただやられるわけでなく。自分を守るように飛蝗の大群を召喚する。


「行けっ!」


 ライに攻撃するよう命令する。その間に電気を蓄えた別の飛蝗の群れがホッパーのエネルギー補給をする。電気エネルギーを浴びることで傷も治っていく。

 飛蝗の大群がライ目がけて一直線に向かって来る。


「っ―火龍!」


 ライは炎を放ち、飛蝗達を一掃する。


「へへへ、トドメ…っ!!」


 一瞬身体が動かなかった。どうやら体力が尽きそうなのだ。身体の一部分限定で加速を行って体力の消耗を抑えていたつもりだったが、興奮で思った以上に力がはいってしまっていた。結果余計に体力を消耗していたのだった。


(不味い、あと一撃分しか力は残ってない…!!)


 ホッパーが完全回復するのも時間の問題である。ライは覚悟を固め、


「おおおおおぉぉ!!」


 ライは走り出し、ホッパーの懐に飛び込んだ。

 迎撃する飛蝗を衝撃波で落とし、ホッパーを羽交い絞めにする。


「今だ、イレーヌ!コイツの右胸を狙って!」


 イレーヌに叫ぶ。


「はぁ、しっかり抑えててよねっ!!」


 イレーヌは走り出し、ホッパーに急接近する。

左手指先から短いビームを出す、それは爪のような形になる。


「しゃぁぁあっっ!!」


 大きな爪を携えた左手の貫手でホッパーの右胸を刺す。


「ガガガガ…」


 バチバチッ!

 ホッパーの身体から電気が漏電する。


「くっ、こ、このぉ…まだ、まだイケる。」


 ホッパーは自分の使役する、飛蝗を全て呼び寄せ、ライ達を襲うよう命令する。


「わっ!」


 途方も無い数の飛蝗にライは圧倒される。

 そのとき、


「カナディアンキャノン、ファイヤーモード」


 突如炎が飛蝗の大群を包む。飛蝗達はポタポタと焼き落ちていく。

 ノアがカナディアンキャノンで飛蝗の大群を焼き払った。


「あの人も援軍?」


 ライはイレーヌに聞く。


「ええ、あんな武器を持ってる相手で良かった。」


 飛蝗の大群全てを処理しきれないと思ったイレーヌはほっと胸を撫で下ろす。


「さぁ、今のうちです!」


 ノアはライに呼びかける。


「よーし、新技」


 ライは全身をスパークさせる。


「ブルークラッシャー」


 腕から青色の光球を放つ。


「うっ!…」


 光球を受けたホッパーは身体が青く発光し、木っ端微塵に吹き飛んだ。


「て、手強い相手だった。」


 ライはドッと疲れが出て、変身を解き、へたれ込む。

 だが、メガフィスはこのときも恐ろしい計画を立てているのだった。








 



 



 







 



 

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