第9話吸血ヒルの抑止力

 メガフィス帝国の基地では次なる龍王装甲を倒すための話し合いがなされていた。

 新しく戦闘状況を観るべく、中継モニターが設置されていた。そのモニターで先の戦闘を観ていた。


「鎧族が敗れるとは…」


「御使いは着実に力を付けているな。」


 フレオーンとボルダーがモニターを観て呟く。

龍王装甲の戦闘を始めて観た将軍達は次はどうしようか頭を悩ませる。だが、彼らはチャンスを逃していた。 

 それはオニサザエが倒されたところで映像の中継を切ってしまったのだ。ライが変身を解いて元の姿に戻るところは記録されていなかったのだ。


「危険だけどアイツを使ってみるかねぇ。」


 グリモワが口を開く。


「ほぉ、アイツとは?」


 シュタールが尋ねる。


「ちょっとデカくてここには呼べないけど、うちの吸血ヒルを出そうかねぇ。」


「ヒル!?あの化け物をか?」


 ブレイズは少し声を上げて驚く。どうやらどんな怪物か知っているようだ。


「そうさ奴は血を吸えば吸っただけ強くなる。大昔ヨーロッパで暴れていたのを捕獲し、飼っているのよ。」


 グリモワは吸血ヒルの強さに自信があるようだった。


「確か奴は人間の血が一番力を得やすいのだったな。それなら人間を誘い出すのに適任がいる。」


 ボルダーも吸血ヒルの生態を知っているように話す。


「カミナリボタル」


「ははっ…!」


 ボルダーに呼ばれ現れたのは、人型二足歩行の蛍だった。


「お前の催眠蛍火でヒルの餌となる人間を確保するのだ。」


「仰せのままに…」


 ボルダーからの命を受け、深々と頭を下げ了承するカミナリボタルだった。


「なら我らからも一人出そう。」


 フレオーンが今回の計画に参加する意思を示す。


「ポイズン」


「お呼びでしょうか。将軍様」


 現れたのは緑色のヘビの怪人だった。


「お前も人間捕獲に協力するのだ。」


「かしこまりました。」


 フレオーンからの命を受け、ポイズンは作戦準備に行こうとする。


「お待ちっ!」


 グリモワがポイズンを引き止める。


「フレオーンお前さんのことだ。ただポイズンを今回の作戦に参加させて訳じゃないんだろ?」


 グリモワはフレオーンに何か意図があると感じた。


「その通りだ。グリモワよ、“もしも”のときのためにポイズンに力添えをしてくれないか?」


「ま、いいさね。毒蛇さん付いてきな。」


 グリモワはポイズンを連れて何処へと行った。

 と、それに入れ替わるように一人の人影が来た。それに最初に気付いたのはボルダーだった。


「ムッ?貴様は…」 


 現れたのは金髪で革ジャンを着た見た目二十代前半の青年だった。


「フッ、久しいなお前達…」


 青年は将軍達に親しげに挨拶をする。


「貴様、ティーグ!そうかお前も動き始めたのか…」


 シュタールも驚く。


「話は全部聞かせてもらった。が、それにしても随分御使いにお熱のようだが、秘宝の方は探せているのか?」


「ぐっ、痛ぇとこついてくるじゃねぇか…」


 ブレイズが気不味そうに言う。


「進んでないなら私がそちらを受け持とう。余裕があればそちらに手を貸す。個人的にあの御使い気になるのでな。」


「おお!それは助かる。」


 フレオーンはいやぁ助かるよといった明るい雰囲気を出す。


「良いだろう、そちらはお前に任す。」


「話は決まったな。では…」


 ティーグは立ち去る。


「やっぱりアイツ見ると良い気分にはならねぇ。」


 ブレイズが不機嫌に言う。


「だが奴がいることで心強いのも事実。そんな男だ。」


 ボルダーがまぁまぁと言わんばかりブレイズをなだめ、ティーグを評価する。


「けっ、どうせまだ愛しのお師匠様に思い馳せてるんだろ。」


「アノ者がいなくなってからかなりの年月が過ぎているのに…」


「ロマンチストなのか未練がましいのかどっちなんだろうな…」


 



 所変わりEGEST基地トレーニング室今日もライは黒部や伊織に投げ飛ばされ、鉄拳を貰っていた。


「もう限界だ…」


 変身を解き倒れ込むライ。


「よし、今日はここまでにしよう。明日から新しい学校に行くのだからしっかり休んだほうが良い。」


 黒部は本日の訓練の終了を告げる。


(ああ…本日も限界迎えて動けません…)


 ライは立ち上がれず大の字で倒れたまま。


「はいはい…じゃあ私が連れて帰ろうかねぇ。」


 伊織はライを抱きかかえ、お姫様抱っこのする。


「わぁ!そこまでしなくても引っ張って起こしてくれれば良かったのに…」


 照れと動揺がライを襲う。まさかここまでしてくれるとは想像もしていなかった。


「いいから。ヘタレドラゴンは黙ってお姉様に背負われな。」


 軽々とライを持ち上げスタスタと歩く伊織

 抱き上げられたライの体の左側面はタンクトップの薄いトレーニングウェアの布越しに柔らかいモノが押し当てられている感覚があった。


「っ!!!」


 一気に顔が赤くなる。が、落ちないようしっかり伊織の首に腕をまわしていた。顔が紅潮しているのをバレないよううつむく。

 しかしそれはバレていた


「何照れてんのさ、マセガキくん」 


「うるさいなぁ、専用武器がグ○ート○ジンガーのニー○ンパルス○ックのくせに…」


「マニアック過ぎるわっ!!」


「それ知ってる時点で伊織もね…」


 結局そのまま自宅まで抱えられて帰り、それを見た麗から


「あら、どっちが彼女?」


 とからかわれてしまう。

 夕ご飯を食べているとき、麗がライに話しかける


「明日からの学校の準備は出来た?」


「うん、ばっちし」


 EGESTの新しい住居に越してから以前通っていた小学校では危ないと判断され、新住居の近くの小学校に転校することになった。もちろん手続きなどはEAGESTが行い、学校内部にもEAGESTの者が沢山いる状況になる。麗の職場の高校でもEAGESTの関係者が学校職員として入ることになっている。


「新しい学校どんなんだろうなぁ…」


 ライは期待に胸躍らせる。前の学校とはキャメレオンの襲来以降1回も登校出来ないまま去ることになったので別れを言えないままになってしまった。親しかった学友たちと会えなくなるのは思うところはあるようだ。


(いつか落ちつたら会いに行こう…)


 そのためにも早く父親を助け出し、メガフィスを倒さなくてはと改めて決意を固めるのだった。



 ここは深夜の郊外の住宅街誰もが寝静まった中酔った男性二人組が千鳥足で歩いていた。


「うぃ~」


「これは今夜も飲み過ぎましたなぁ」


 2人はいい気分で歌を歌いながら道を歩く。深夜で気温が下がったことによる冷たい風が火照った体に丁度良い。

 そこに2人の目の前にあるものが飛んでくる。


「んっ?なんだこれ?」


「あんっ?どうしたい?」

 

 まじまじと目の前に来たものを2人は見る。それは黄緑色に光る小さな物体だった。


「ンああぁ、これ、これは~蛍じゃ~ない〜ですかい?」


「あぁ!?ホタルだぁ?んなぁモンこんなところをいる訳ねぇだろバカこのぉ」


「あイテッ、いやぁよく見てくださいよぉ。」


「んんっ?確かに蛍に見えて来たような…」


 酔っぱらい2人が蛍を見ていると

 ピキッ!

 2人は固まったかのように動きを止めた。蛍が何処かへ飛んでいく、それを追うように2人は無言で歩く。

 ザッザッザッザッ

 酔っぱらい達は林の中の廃墟へと入っていく。

 大広間に入った瞬間ハッと2人は正気に戻った。


「あ、あれ〜俺たちなんでこんなところに…」

 

「何処だここ?」


 周囲を見渡しているとそこに


「シャー!!」


「ピカー!」


 ポイズンとカミナリボタルが酔っぱらい達の前に現れる。


「う、うわーっ!!!」


「いっ、一体全体何なんだお前達は!?」


 2人は抱き合いながら怯える。


「掛かったな馬鹿な人間め!」


「お前たちはこれからこいつの力の源になるのだ。」


 カミナリボタルの言葉と共に吸血ヒルが姿を現す。


「わ、わ、わ!また化け物が出てきた!」


 酔っぱらいが動揺していると吸血ヒルの身体から触手が伸びて来て2人を捕まえる。

そして触手の先端を首に付けると血を吸い始めた。


「あっ!ワーーー!!」


「ギヤャャャアァァァ!!」


 瞬く間に血を吸われた2人はカラカラとなり絶命した。


「フッフッフッ、成功したな。」


 カミナリボタルが満足と言った様子で話す。


「これからもドンドン人間を誘き寄せて血を吸わせるか。」


 ポイズンも不敵に笑うのだった。




 新しい学校での生活が始まった。


「龍峰礼です。よろしくお願いします!」


 ライは新しいクラスメイトに自己紹介をした。教室にパチパチと拍手の音が響き渡る。


「はい、ではライ君は窓側の4番目の席ね。」


 担任の女性教師から席を言われ、そこに着く。


「はい日直さん朝の会を始めてください。」


 学級の日直がホームルームの司会を始める。そこでホームルームの一環の時事に関するニュースを発表する。


「今日のニュースは山に近い街でそこに住んでいる人が全員いなくなる事件をテレビで見ました。とても怖いと思い、戸締まりとか安全にち気をつけたいと思いました。」


 そう、オニサザエ達との戦いの後街1つから人が全員消えたのは流石に隠しきれなく連日報道されることになった。

 人間ではない異形の者の仕業と話がチラホラ出てしまっている。メガフィスの存在が世間に知られるのは時間の問題かもしれないとEAGESTの関係者は誰もが思っている。

 その日は何事もなく一日が終わり、下校を迎える。


「ねぇねぇ!一緒に帰ろうよ。家はどっち?」


「彼女いるの?いたら何歳なの?」


「ゲーム何やってるの?」


 クラスメイト数人が話し掛けて来た。


「いや、今日はその…引っ越しの片付けがまだ終わってなくて、それしなきゃいけないから早く帰ってこいって言われてるんだ。だからごめんねまた今度誘って!」


 バツが悪そうに言う。


「そっか~、じゃまたこんどね。」


 クラスメイト達は帰っていく。ライはその後ろ姿に


「ごめんね、これからよろしくね!」


 申し訳無さそうに声をかける。今のライは学校が終わってからすぐに訓練を行っている。友達と遊びたくても遊ぶ暇がないのだ。

 しかしそれは全て父親救出とメガフィスを倒すためであり、仕方がないと自分自身の中では割り切っていた。校門を出ると真っ直ぐ自宅に帰って行く。




吸血ヒルは順調に人間の血を吸っていた。カミナリボタルの催眠蛍火で連れてこられた人間は全て血を吸われた。その数はもうすぐ4桁になろうとしていた。


「着々と力を付けてきているな。」 


 カミナリボタルは人間の血を吸っている最中の吸血ヒルを見上げて言う。


「コイツ自体に考えがあるのかはわからないが我々の言葉は理解できている。制御は出来よう…」


 ポイズンも同様にヒルを見上げて話す。


「しかし本当に暴走して制御出来ないなんてことは無いよな?」


 カミナリボタルがポイズンに尋ねる。それに対し


「大昔のあれは何万何十万人と吸血したからだ、それに奴は栄養度の高い血を好む。栄養が高ければ高いほど力を持つがたった千人ぐらいで暴走はしまい。もし、制御出来なくなったときは策がある。」


「なんだ、それは?」


 そしてポイズンはカミナリボタルに耳打ちするのだった。




 今日もひたすら訓練に励むライ。能力を使うことで体力が大幅に消耗してしまう欠点を改善するため体力作りを行っていた。

 ランニングや適度な筋力トレーニング、黒部達との組手それらを毎日こなしている。

 それと同時に技の技術向上も図っている。技を放つ時間が長いほど体力を消耗しており、その部分を見直し、少ない回数で当てる命中精度を高めることと、一発で敵を倒せるほどの威力の調整が出来るよう試行錯誤していた。


「相手ノ強サヲ見極メロ、ドレホドノチカラ。ヲ持ッテイルカ、ドノクライノチカラ加減デ倒セルカ考エテ戦ウンダ。ソノタメニハ多クノ経験ヲ積ムシカナイ。」


 白龍からもアドバイスをもらう。


「ワッブッ!」


 組手で伊織の掌底で吹き飛ばされた。これで飛ばされるのはかれこれ何日目だろうか?そんかなことを思いながら立ち上がる。


「あイタタ…もうちょっと加減してよ。」


 ライは変身を解き、パッパッと足や臀部を払う。


「何いってんの、それじゃ訓練にならないでしょ。」


 伊織はドリンクを手渡す。


「厳しいな、だから今までの彼氏みんな逃げちゃうんだよ。」


「うっさいわね!だったらあんたを彼氏にしちゃうから!」


「母さん本当にさせそうで怖い。」


「っておい!」


 とそこにトレーニング室に黒部がやって来る。


「んっ、二人共トレーニングは終わったかい?」


「あっ、隊長」


 2人はキッと姿勢を正す。


「「終わりました!」」


 声を揃えて訓練の終了を報告する。


「よし、訓練後に申し訳ないのだが作戦室に来てくれないか?メガフィスのような動きを捉えた。」


 3人は作戦室に入る。すでに早川が待っていた。


「3人揃ったな。では聞いてほしい。郊外で人が行方不明になる事件が連続している。それも膨大な数の人数だ。」


 モニターに問題となっている地域が映される。


「行方不明者は皆性別、年齢バラバラだ。無差別の拉致だと思っていたが」


「が?」


 黒部は語尾が引っかかった。


「ある行方不明者と一緒にいた人物がこんな証言をしている。“蛍を見た”と」


「蛍?そんなのここらじゃいないと思いますけど。」


 伊織が早川に返す。


「まぁ、ここからなんだが、行方不明者はその蛍の光をみた途端吸い寄せられるようにその蛍を追いかけて森の中に入ってしまったらしいんだ。証言者も後を追いかけたが見失ってしまったそうだ。」


「蛍の光、蛍火を追って行方不明。」


「どう考えてもそこに秘密がありそう。」


 黒部と伊織は今の話からその考えに至った。


「恐らくその蛍は催眠術のようなものを出して人間を誘ってるのかもしれない。こんなものメガフィスが絡んでいるに違いない。」


 早川が核心を突く。


「事件は全て夜に起こっている。早速で悪いが今夜調査して来てくれないか?」


「わかりました。黒部他2名調査に行ってきます。」


「すまない、よろしく頼む。」


 早川は頭を下げる。

 黒部達が作戦室を出てライも準備しに行こうとしたとき、


「ライ君」


 早川に呼び止められる。


「どうかね、新しい学校は?」


「等分友達付き合いはできなさそうです。」


 ライは率直に述べた。


「そっか…すまないこんなことに巻き込んでしまって。」


 早川は申し訳無さそうに話す。それに対し


「気にしないでください。オイラが望んで始めたことですから。まだまだ弱いですけど…」


 アハハと頭を掻き笑いながら言う。


「そっか…いや本当にすまない。前もいったが危なくなったら逃げるんだイイね?」


「はい!」

 

 ライは作戦室を後にした。



 それからライ達3人は事件のあった地域に到着し、蛍の目撃があったなかで一番多い場所で張込みをしていた。


「本部が報道しないようにマスコミを抑えているがそれも時間の問題かもしれない。これだけ人が消えていれば住人もかなり混乱している。」


 黒部がこの事件が今世間ではあまり知られていないことを告げる。先のオニサザエ達の街の住人達を殺害したのが報道された。それに今回のことも知られてはパニックどころの話ではなくなる。メガフィスの存在が世間に明るみになるのもそう遠くないとライは思った。

 夜も深まって来た頃目撃ポイントにサラリーマン風の男性がスマホをいじりながら通りかかる。


「あの人あれだけの事件が起きているのに良く一人で夜道を歩けること…」


 伊織は危機感の無さに呆れていると


「?何か来たぞ…!」


 黒部が何かが出てきたことに気づく。それは黄緑色に近い色をした発光物だった。


「あれだ、あれが言っていた蛍だ。」


 伊織はそれが話に聞いていた蛍だと気付く。

 蛍は男性のもとへふらふらと飛んでいく。


「んっ?」


 男性は顔を上げ、蛍に気付いた。その時ピシッと男性の動きが止まり一瞬硬直する。すぐに動けるようになるとなんのためらいもなく飛んでいく蛍について行く。


「やっぱりただの虫じゃない。追いかけよう。」


 一連の様子を見ていた黒部が動く。既にパワードスーツを着ていた黒部と伊織はすぐさま男性の後を追う。ライも変身し後に続く。

 3人は林の中に入り男性を追いかけた。先頭が黒部、真ん中に伊織、後ろにライの順だった。

 ふとある瞬間

 ガサッ

 左側後方から音がする。気付いたのはライだった。それと同時に足を止め振り返る。


(もしかして別の人も蛍に誘われてきたのかな?)


 そう考え他の2人に声をかけようとしたが既にその姿はなかった。ライハはぐれてしまったのだ。

 せめて自分に出来ることがあると音のあった場所に行く。周囲を見回すが人っ子1人いないと思ったが、10メートルほど離れたところに人影を見つける。


「良かった見つけることが出来て…」


 安堵したライは人影に近付こうとする。が、動きを止める。その人影に違和感を感じたからだ。何か良くない存在だと直感が働き、胸騒ぎもしてきたため後ろに下がり距離をとる。


「ほぉ、本能で危険を感じたか…」


 人影が喋る。そしてライに近付いて来る。ドンドンその全貌が明らかになっていく。その姿は全身金色の鎧を纏った者だ。  

 鎧のところどころにライの龍王装甲に似た部分がある。しかし龍を模した龍王装甲と違いその鎧は虎や獅子などの獣を模した姿に見えた。


「お、お前は何者だ?」


 ライは恐る恐る名を尋ねる。


「何者?まぁ、この姿を見ればもう気がついているとは思うがメガフィス帝国の者だ。そうだな今はこの鎧が獣王装甲ということだけ教えておこう。」


「なに!?獣王装甲?」


「そう、お前の龍王装甲ほど神の加護を受けていないがそれでもお前と対を成す強力な力だ。」


「龍王装甲とは兄弟みたいなものか…」


「どれほどの力があるかお手並み拝見といこう。」


 獣王装甲を纏う者の言葉を聞いた瞬間にライは戦闘態勢をとる。


「龍退治で活きるのはこれか…アスカロン!」


 獣王装甲の右手に剣が現れる。それを掴むとライに襲いかかって来る。


「さぁ、私に見せてくれ龍王装甲の力を!」




 黒部と伊織は蛍の催眠術にかかった男性を追いかけた続け、廃墟に辿り着いた。


「あの男この廃墟に入っていったが一体何が…」


 黒部が疑問を口に出す。そこで伊織が


「大変です。隊長!ライがいない!」


「なんだって!」


 黒部も声を上げてしまった。が、すぐさま伊織と自分自身に対してシーと人差し指を立てる。

 そして冷静になり


「仕方がない、あの男性をここからは連れ出して、急いで彼を探そう。」


 黒部の指示に伊織は了解と頷き、2人は廃墟に突入する。

 廃墟を警戒しながら歩き、やがて最奥の大広間までやって来た。ここまで全ての扉を開けて来たが誰もがいなかった、残るはここしかない。2人は銃を構え扉を開ける。そこには男性の血を吸う吸血ヒルがいた。血を吸われ男性はやがて息絶えた。


「なっ、なんだこのバケモノは!」


 黒部は異形の化物に流石に動揺にする。伊織も同じく動揺し言葉を失う。

 そこに


「現れたな邪魔者が。」


 2人の前にポイズンとカミナリボタルが現れる。


「やはり連続行方不明者事件はメガフィスの仕業だったのか!」


 黒部が言い切る。


「その通り!」


 ポイズンがそれに応える。


「この吸血ヒルに人間の血を吸わせる。血を吸えば吸うほどコイツは強くなる。全ては御使いを倒すため。」


 カミナリボタルが計画を話す。


「何?彼を!」


「だが肝心の御使いが来ていない。ならお前たちを倒してその血を吸わせてやる!」


 2人の周りをオークコングが取り囲む。


「くっ、どうやらすぐに探しに行けそうではないな。」


 黒部はボソッと呟く。


「やれっ!!」


 ポイズンの合図と共にオークコング達が一斉に襲いかかる。

 こうして2箇所で戦闘が開始された。








 

 

 













 



 





 


 






 


 



 




 

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