第8話鎧族出陣②

 ライはオニサザエの吹き飛ばされた後、オークコング達と戦闘を繰り広げていた。


「ギッ…!」

 

 オークコングの拳を上手く捌き、右ストレートを入れる。訓練とはいえ大人と本気の殴り合いをしていたライ、その訓練の経験はしっかり活かせれていた。

 5体の剣を持ったオークコングがかかってくるが恐れることなく、それぞれ一撃で沈めた。

 そこに銃を構えるオークコングの部隊がライ目掛けて発砲する。ライはそれを跳んで、宙で反転して回避する。


「ソコニ落チテイル石ヲ使エ。」


 白龍から指示が出る。ライは側に落ちていた石ころを拾う。


「石ニ力ヲ込メロ」


 言われるがままに握った石に全身の力を注入する。すると石は一瞬光った。


「今ダ、ソレヲ奴ラに投ゲロ」


 ライはオークコングの銃部隊に石を投げつけた。すると


ドカンッ!!


 石は爆発を起こしオークコング達は飛び散った。


「やった!」


 喜ぶライしかし


ドオンッ!


 背後で大きな音と共に一瞬地面が揺れた。

 ふと、振り向くとオニサザエが拳を振りかざしていた。そしてライを殴る。


「グウゥゥ…!!」


 堪えたが殴られた衝撃で2〜3メートル後方に下がる。


「さぁ殺してやる!」


 オニサザエが腕を振り下ろしてくる。ライはそれを躱し、手甲の爪を伸ばす。そのままオニサザエに目掛けて爪を撃つ。オニサザエは後ろ向きになり貝を盾にする。爪は貝に命中するが貫通することなく、弾き飛び地に落ちる。


「俺の貝は攻防の要だ、崩せるものなら崩してみろ!」


「くっ、このっ!!」


 爪をマシンガンのように発射する。しかしオニサザエは殻に籠もり防ぐ。


「そんな細い針でオレの殻を砕けるわけないだろ。こんどはこちらから行くぞ。」


 オニサザエはサザエ貝の棘を撃ち出した。


「ワッ!」


 飛んでくる棘を慌てて避ける。地面に当たった棘は爆発を起こす。

 爆煙が起こるそのまま走り続け棘から逃げ回る。しかし棘の一つが煙に紛れてライの正面に出てきた。


「ッ!?」


 間に合わず直撃し爆発が起こる。


 ドカン!!


「ウグッアッ!!」


 ライは4〜5メートル程後ろに吹き飛んだ。鎧からは黒煙が出ており、肉体もダメージを受けていた。


「やはり耐えたか、だが次はこうも行くまい!」


 オニサザエは再び棘を発射した、無数の棘がライの頭上に降り注ぐ。

 ライは今度は精神エネルギーで網を作り出す、先ほどのオークコングの集団を捕らえたものよりも網目が細かいものを自身の頭上に巡らせる。棘が全て網に掛かった。網を振り回し、オニサザエに向かって投げる。


 ドカーーン!!!!


 先ほどとは比べものにならない爆発が起きる。


「どうだっ!」


 ライは煙が晴れるのを待つ。数秒後煙が晴れる。そこには無傷のサザエ貝がおり、そこからオニサザエが身を出した。


「ハハッ!良い攻撃の返し方だったが俺には効かん。」


 オニサザエはピンピンとしていた。


「く…くそぉ…」


 ライは悔しそうに小さな声を出した。


「今度はこれはどうだ?」

 

 オニサザエが殻に身を引っ込める。巨大なサザエ貝は急速に回転し始め、ライに向かって突進してくる。


「うわわっ!」


 ギリギリのところで回避する。避けられたことでオニサザエは地面に激突する。しかしまた回転し、ライに向かってくる。


「ッ!」


 ライはバリアを張り耐えようとする。

 しかしバリアはオニサザエと激突するとパリンと簡単に割れてしまった。


「ヤバいッ!!」


 慌ててもう一枚バリアを張る。が、それも破られライはオニサザエと正面衝突する。

 ガガガガガガガッ!!

 ゴツゴツした貝の表面が音を立てて鎧を傷つけ、火花が散る。


「ガアァァァァ!!」


 まともに喰らったライは数メートル飛ばされた。


「ウッ…ウウッ…」


 強烈な一撃をもらったがまだ意識はあった。


「ハハッ!まだ意識が残ってるとはな!もう一撃だ!」


 オニサザエは再び殻に身を隠し回転して突進してくる。


「ライ、シッカリスルンダ、オニサザエガクルゾ!起キルンダライ!」


 白龍の呼びかけに応えるようにヨロヨロと起き上がる。


「うおおおぉ…!」


 痛む身体を無理に動かしオニサザエの攻撃を回避する。だがオニサザエは続け様に迫って来る。


「撃チ落トスンダ!」


 白龍の指示で右腕を伸ばしオニサザエに狙いを定める。右腕に電気エネルギーが溜まっていく。


「雷龍波!!」


 ライはオニサザエに電撃光線を放った。電撃は回転して来るサザエ貝に命中し、サザエ貝は弾かれたようにクルクルと地面に落ちた。


「ほぉ、俺の攻撃を殺すとはそれほどの力が残っていたのか。だが俺には通じん!!」


「くっ!」


 ライは手甲の爪を伸ばし再び構えるのだった。




 ネイルを抑えたままムササビは空を滑空していた。


「このっ、いい加減離せ!」


 ネイルはどうにか離れようと足掻いていた。


「ヘッヘッ、もうそろそろ良いだろう。ほらよっ!」


 ムササビはネイルをポイッと離すしかしそれは地面から何十メートルも上空からだった。


「おおっ!?うおおおぉぉ!!」


 ネイルは地面に真っ逆さまに落ちていく。


「ねうううぅぅこのっ!!」


 パワードスーツの背中と踵のジャンプ補助用のブースターを起動させ、上手く着陸する。


「ヤロウ何処だ!」


 ネイルは周囲を警戒する。すると


「ぐあっ!」


 後ろからムササビが突進して来た。ぶつかった衝撃から前に倒れそうになると今度は正面から突っ込んでくる。


「うわっ!!」


 後ろに倒れそうになると今度は左横から、つぎは右斜め前からと素早い動きで体当たりしてくる。


「このっ!!」


 迫りくるムササビを専用槍アイアンランスで払いのける。しかしムササビはそれを身軽に躱し、2階建物の屋上に着地する。


「喰らえ、ムササ火」


 ムササビは口から火炎を吐く、ネイルはそれに対して右前腕部の装甲を展開して消火ガスを噴射する。火炎とガスがぶつかり合うが僅かに火炎が上回っていた、火炎がどんどん迫って来る。左前腕部からも消火ガスを噴射し、逆に押し返す。そのままガスがムササビにかかった。


「うわっ!ブッ!」


 ガスを浴びたムササビの体は白くなっていた。ブルルルと全身を震わせて泡をとると大の字に手足を広げる。


「これはどうだっ!」


 ムササビの全身の毛が針状になり、それを飛ばす。針となった毛はネイルのパワードスーツの前腕部消火ガスの噴射口に命中し、これを破壊する。


「グハハッ、さぁどうだ!」   


 ムササビは再び火炎を吐く、


「うわっ、何とか近づければ…」


 ネイルは火炎から逃げながらムササビに接近する機会を覗っていた。


「ふぅぅぅぅ…ボァ!」


 ムササビは息を吸い込み、一気に火炎と一緒に吐き出した。大きな火球となりネイルを襲う。ドカンと爆発が起こる。


「吹き飛んだかっ!?」


 ムササビは手応えがあると実感した。ネイルがいた場所は地面が黒焦げていた。


「こっちだ!」


 上から声がする。ムササビは上を向くとそこには今まさにアイアンランスを投げようとするネイルがいた。


「ルゥアアアアァァァァ!!」


 ネイルはアイアンランスをムササビに向かって投げた。


「ギイィィ!」


 ムササビは大きく左に逸れて回避する。がそこにジャンプ補助用のブースターで加速を付けたネイルが突っ込んでくる。


ドカッ!!!!


 ムササビの顔面に拳を叩き込む。そのまま連続でフックを繰り出す。勢い止まらず肩を抑え腹部に膝蹴りを入れ、怯んだところにローリングソバットを決める。


「ぐぅぅ、チクショー!この…」


 ムササビは反撃しようと火炎を放とうとするが目の前でネイルがビーム銃を構える。


「!?」


 不利だと悟ったムササビは地を蹴り上空に逃げた。

 逃さないとネイルは発砲するが、攻撃は避けられ、毛針で攻撃される。それを躱し態勢を整えるがそこに空から一気に降下してムササビが襲ってくる。


「オワッ!!」


 ムササビに殴られネイルは倒れる。そして立ち上がっところでムササビが再び降下してきて攻撃する。その繰り返しだった。反撃しようとするが避けられ、上空から火炎や毛針攻撃でカウンターされる。


「ぐうっ!」


 ネイルは膝をついた状態から立ち上がるとワイヤー銃二丁をムササビ目掛けて撃った。


「そんなものっ!」


 ムササビは2本のワイヤーを難なく躱すと思われた、しかしワイヤーは3つに枝分かれし、計6本のワイヤーがムササビに向かってくる。1本から5本までのワイヤーを躱せたが最後の1本が足に絡みついた。


「なっ、しまった!!」


「しめた!」


 ネイルはワイヤー銃のワイヤーを射出したトリガーの下にもう一つあるトリガーを引いた。

 するとワイヤーを伝って電撃が走り、ムササビを襲う。


「ギャアアア!!」


 感電して落ちてくるムササビの飛膜を光線銃で撃ち、破る。

 重力に従いなす術なく落下してくるムササビの真下に立つとアイアンランスをムササビ目掛けて投げる。


「っ!!」


 最後の抵抗とばかりにムササビは飛んでくる槍に向かい息を思い切り吸い込み火球を放つ。火球はアイアンランスに直撃するが落ちることなくムササビに向かって飛ぶ。


「チイィィ!」


 毛針を放つが特殊合金で出来たアイアンランスには傷一つ付けられず逆に弾かれていく。

 そして白い閃光となったアイアンランスはムササビの胸を貫いた。


「こ、ここまで…」


 ムササビは爆散した。

 敵を倒し膝を着いて一息ついた後


「さぁ、あいつ等を探しに…」


 ネイルは走り出した。



 オリビアは専用武器クレセントウィップをナメクジに振るっていた。しかしナメクジは身体を液状にし、軽く躱していく。


「ムムッ!隙のない攻撃、油断大敵出来ないな。」


 ナメクジは溶解液を吐く、


「!!」


 オリビアはすぐさま回避し、右腕にハンドガンタイプのビーム銃を持ち、発砲する。それもサラリと避けられてしまう。お互いの攻撃が一発も

当たらないまま体力だけが減っていく。


「はぁ…はぁ…」


 息を切らすオリビア。相手はまだスタミナ充分のようだ。このままではいずれ負ける。オリビアは何としても攻撃を当てておかなければならないと考えた。

 クレセントウィップの刃を連結させ、大剣の形にする。


「エヤアァァァ!」


 オリビアはナメクジに突撃する。


「ハハッ、何度やっても同じこと。」


 ナメクジは液状になると弧を描くように大剣の攻撃を避け、オリビアの背後に周ると実体化し蹴り飛ばした。


「ガアァァァ!!」


 蹴り飛ばされたオリビアは背中から倒れる。そこにナメクジの追撃で無理やり立たされ、拳の連撃を喰らう。


「ヒョホホ!まだ死なれては困る。せっかく良い身体をしているんだ。」


 ナメクジは液状になるとオリビアに覆い被さった。するとパワードスーツの僅かな隙間に侵入し、オリビアの身体を包みこむようにスーツを支配した。


「おお、これはなかなか。」


 オリビアの頭上には上半身だけ実体化したナメクジがいる。


「ほほっ、柔らかい柔らかい、出るとこ出ていて非常に良い身体だ。」


 オリビアは羞恥で身体が震える。ヌメヌメヌルヌルした感触が全身を包んでおり生臭さも相まって生理的な不快が襲う。


「はっはっは、以前ソルフォムの女を嬲ったがそれに劣ることのない良い女だ。」


「ん…くっ!」


「殺すのは勿体ない、連れ帰り自分の奴隷にしよう。」


 身体が徐々に重くなる、スーツに侵入したナメクジはオリビアのアンダーシャツを突破し裸体を包み込んだ。その感触は毛糸で出来たブラシで全身を撫でられてるようだった。


「そろそろいい加減に…!」


 オリビアは力を絞り出し動き出す。そしてそのまま近くの民家に突っ込んだ。

 ガラスを突き破り突撃した場所はキッチンでテーブルや棚を壊していく。そのとき、


「ギッ、ギャアァァァ!」


 ナメクジは悲鳴を上げる。オリビアから離れ、倒れ悶える。

 見るとナメクジのそばに食塩の袋が落ちていた。屋内に突っ込んだとき食品棚と接触しており、衝撃で置いてあった食塩が落ち、ナメクジにかかったのだった。


「と、溶ける!!」


 ナメクジは未だに悶え苦しむ。


(今だ!)


 オリビアはクレセントウィップをナメクジの足に巻き付け、壁を突き破って屋外に放り投げる。


「ウゥゥ、痛い…」


「まだっ!」


 地面に激突したナメクジを今度は上空に放り投げる。


「ッ!トドメッ!!」


 宙に上がったナメクジの体にクレセントウィップを巻き付ける。巻き付いたウィップの刃はナメクジの体に食い込む。


「ハアァァァ!!!」


 オリビアはウィップを引くと数十の三日月刃がナメクジを切り裂いていく。


「ぎゃあああ!!」


 絶叫が空に響く。オリビアはスーツの肩部分を展開し、ミサイルを放つ。

 ミサイルはナメクジに一直線に向かい見事命中、ナメクジは木っ端微塵になり、さっきまで「それ」だった肉塊が落ちくるのだった。



 

 ライとオニサザエの戦いは圧倒的にオニサザエの有利に展開されていた。


「そおりゃあぁぁ!」


「おわぁぁ!!」


 オニサザエの巨大な手の張り手を喰らい吹き飛び背中から転がる。しかしただ黙ってやられる訳ではなく倒れながらも爪を発射する。

 爪はオニサザエの左肩に刺さる。


「ガアアァァァ!」


 オニサザエは左肩を抑え、痛みに苦しむ。


「ライ、奴ハ本体ノ生身ノ部分ハ攻撃ニ弱イミタイダ。」


 白龍がライに伝える。


「ああ、そうみたいだ!」


 ライもそれに気付き痛みを堪えながら、反撃に出る。


(あれをやってみるか…)


 ライは両脚にエネルギーを集中させる。そして地面を強く蹴り込むと一瞬で10メートル以上離れていたオニサザエの目の前に現れた。


「!?」


 これにはオニサザエも驚きを隠せなかった。今さっきまで自身から離れた場所にいた、相手が一瞬消えたかと思ったら目の前にいるのだ。

 そうライは目に見えない程のスピード、高速移動をしたのだった。

 

「うっ…」

 

 まだ発展途上の高速移動で全身を疲労感が襲い、身体が重く感じるのだった。


(今はこれが限界か…)


 10メートルを1秒後半それを1回しただけで体力を多く奪われてしまう。まだまだ思い描く超高速には程遠いと感じていた。


(だけど改善するのは後、今は)


 両手甲の爪をオニサザエに斬りつける。


「この間合いなら殻の中に逃げることは出来ないはずだ!」


 斬りつけられたオニサザエの身体から血が噴き出す。


「グワアァァァ!!」


 オニサザエは大きな悲鳴を上げる。


「まだまだぁ!!」


 ライは掌から衝撃波を放ち、オニサザエを吹き飛ばす。オニサザエは背中から倒れる。


「さぁ、一気にトドメ!」


 体力の限界で高速移動は出来ないがこの距離なら普通に走って攻撃することが出来る。これで終らすそう確信してオニサザエめがけて一直線に走る。

 が、しかし倒れていたオニサザエは起き上がるとギロッとライを見つめ、口から桃色の液体を吐き出した。

 ライは桃色の液体を被ってしまう。しかしダメージは無い、


「今更こんなもの…」


 気にせず走って距離を詰めようとしたそのとき

 ガクンッ

 体が急に動きを止める。いや、止まったというよりは動かなくなったと言ったほうが正しい。見ると足に付いた桃色の液体が固まり地面にくっついていたのだった。それにより足が固定され動かなくなってしまった。

 足だけではなく体中に付いた液体が固まり、腕や関節が動かなくなっていく。


「な、な、なんだこれは…」


「ぐはははっ、掛かったな。これはナメクジの溶解液や身体を液体状する技を参考にオレが作ったものよ。」


 四肢が完全に固まり身動きが取れない状態になってしまった。


「動けまい、これで確実にお前を倒すことが出来る。」


 オニサザエは殻に身体を引っ込めると殻は回転して飛び上がった。そして凄まじい速さでライ目掛けて一直線に落ちて来る。

 そのままスピードを落とすことなくライに激突した。

 ガガガガガガガガガガガガ!!!!

 先程受けた突進よりも強い攻撃だった。さっきよりも速い回転で鎧からはより激しく火花が散っている。

 オニサザエハ再び宙に飛ぶ、地面には直径5メートルほどのクレーターが出来ており、ライはその中心で倒れていた。桃色の液体による動きの制限は解かれていたが、攻撃でダメージを大きく受けたため立ち上がることは出来なかった。


「フン!」


 再びライに向かって落ちる。

 ズドンッ!!!

 凄まじい音と衝撃が地面には響く。もう一度宙に飛び、落ちる。もう一回、またもう一回、何度ものしかかり攻撃を続ける。


「やったか?」


 オニサザエが攻撃を止める。ライは完全に失神していた。


「気絶したか、鎧が壊れない限り装着者は死ぬことはない。どれ、連れ帰るとしよう。」


 オニサザエはライを連行しようと近づいたそのとき、

 ビュウゥゥゥー!!

 ビームがそれを遮った。オニサザエはビームが放たれた方向を見るとそこには朱色のパワードスーツのネイルがいた。


「ムッ、貴様は…」


「そこまでだ、巻き貝ヤロウ!!ムササビの化け物は倒して来たぜ!」


「ムササビがっ!?よくも仲間を!!」


 オニサザエは怒りを露わにする。するとそこへ


「こっちもやって来たわよ。」


 ネイルの反対側から赤と白のパワードスーツのオリビアが現れた。


「貴方のお仲間はもう倒したわ。」


「なんだとナメクジもだとッ!!」


 オニサザエは動揺する。町の住人達の精気を吸って力を上げた、それは他の2体も同様だ。負けるなんて全く想像していなかった。


「ウワアアァァァ!!」


 オニサザエは殻の棘を二人に撃ち出した。二人の周囲に爆発が起きる。


「なんて威力だ…」


「これじゃ近づけ無いわ…」


 爆発の衝撃、爆風があらゆるところから襲ってきて二人は動くことが出来なかった。


「3人まとめてオレが倒してやる!!」


 オニサザエは先に倒れた仲間の敵討ちで燃えていた。


「ッ!!」


 隙を見てオリビアがクレセントウィップをオニサザエ目掛けて伸ばす。オニサザエはそれに気づき背を向け、殻で防ぐ。それと同時にネイルがワイヤー銃を射出、オニサザエの首に巻き付け自分から接近し顔面に蹴りを入れる。


「グッ…!!」

 

 顔面を蹴られたオニサザエは動きを止めた。その一瞬を二人は見逃さずそれぞれの得物で攻撃する。


「ガアァッ!!」


 オニサザエは身体を斬り裂かれて血が出る。続け様に二人はワイヤー銃で両の腕を縛る。電流放射のトリガーを引き、電撃を浴びせる。


「ギャアァァァァァァ!!」


 電撃に苦しむオニサザエだったが、やがてワイヤーを掴み振り回す。それに従い銃を持つ二人も振り回される。


「ダアァ!!」

 

 オニサザエは二人を地面に叩きつける。


「まだまだ!」

 

 巨大な腕を伸ばし、オリビア、ネイルを殴り飛ばす。


「グワッ…!」


 二人は数メートル吹き飛ぶ。ダメージが大きくなかなか立ち上がることが出来ない。


「ライ、ライ!起キロ!目ヲ覚マセ…」


「はっ…!」


 白龍の呼掛けにライは意識を取り戻す。オニサザエのプレス攻撃を喰らった際、痛みよりも先に衝撃に襲われて気を失ってしまったのだ。

 気絶してる間に自然治癒が働いたのか身体に感じる痛みはほぼなくなっていた。


「あれからどのくらい気絶してた?」


「10分程ダ、ソノ間ニアノ2人ガ相手ニナッテイタガ…」


 ライは視線を変える。と、そこにはオニサザエを前にして倒れているネイルとオリビアがいた。


(なんて化け物だ…)


 ライは起き上がる。それにオニサザエが気付く。


「貴様気絶していたんじゃなかったのか。」


「おかげさまでちょっと休んだら傷は治っちゃった。さぁ、第2回戦と行こう…!」


 ライは大きく跳び上がった。


「馬鹿な奴だ、また気絶させてやる。」


 オニサザエは鼻で笑い、馬鹿にする。オニサザエの言葉を聞いたライは


(傷が治ったといえ、体力が限界なのは事実…どうにかしてアイツの柔らかい身体の部分に攻撃を当てなければ。)


「ここからは気力の勝負だっーー!!」


 ライは空中にバリヤを張る。本来攻撃を防ぐ用途だが、それを足場にし跳ぶ。再びバリヤを張りそれを蹴り跳ぶ。オニサザエの周りでその行動をひたすら続ける。オニサザエもそれを目で追う、徐々にそのスピードが速くなっていく。

 やがて完全に目では捉えきれなる。


(どっ、どこから仕掛けてくる!?)


 オニサザエも内心ビクビクしていた。これ以上体に攻撃を受けたら無事では済まないとわかっていたからだ。

 やがて真正面からライが飛び出して来た。


「前からか!」


 オニサザエは桃色の粘着液を吐くが目の前でまた跳びはねた。


「何っ!」


「コッチだ!!」


 オニサザエから見て左側からライが突っ込んできて手甲の爪ドラゴンクローでオニサザエの身体を深く斬りつける。


「ギィィィヤアァァァ!!」


 血が飛び散り、オニサザエは悲鳴を上げる。更にそこに


「これも!」


「貰ってけ!」


 ネイルとオリビアがそれぞれの専用武器でオニサザエの両腕を斬り落とす。


「グアァァァァ、あ!あ!あ!あ!」


 腕を切断されたオニサザエは殻に籠もる。


「貴様ら許せん!もう加減はしない!このまま潰してくれる!!」


 そう言い殻に籠もったまま、三人めがけて突進してくる。


「奴ハ我々ヲ倒スマデ貝カラ出テ来ナイ気ダ。」


「じゃあ、どうすれば良いの!?」


 あのサザエ貝は今の自分では破れないそれを痛いほど身を持って知ったライには何とも悪い知らせだった。


「口ダ、アノ貝殻ノ口カラ攻撃ヲ入レルンダ、ソウスレバ貝ノ中デハ逃場ハナイ!」


「OK、わかった!」


 白龍の提案に全てを懸けることにした。


(でもどうやってあの口に攻撃を当てようか…)


 こうしてる間にもオニサザエはオリビアとネイルを常に動き回りながら襲いかかっている。ついでに殻から身体を出す気配は全く無い。


(動きを止めなくちゃ…何か良い考え…んっ?)


 ライの視界にあるものが入る。それは先程復活してから戦闘になった際、ライのフェイントに対してオニサザエが迎撃で吐いた桃色の粘着液だった。

 近づいてみるとまだ乾いてなく、充分な粘着力があった。


(これだっ!!)


「お前たちなどペシャンコにしてやる!」


 オニサザエはオリビアとネイルの2人を追い詰めていた。何度も何度も2人めがけて突っ込んでいた。

 が、頭に血が上り本来倒すべき相手を見失っていた。


「くっ、アイツ大分興奮してるな。」


 ネイルがハンドガンタイプのビーム銃で発砲する。


「ええ、あの柔らかい身体を攻撃出来れば良いけど、完全にお家を引きこもっちゃったわね。」


 オリビアはパワードスーツの腰部からグレネードランチャーを発射する。

 しかしどの攻撃もオニサザエには通じなかった。


「死ねぇぇぇぇー!!」


 オニサザエが真上から迫ってくる。


「くっ…!」


「どうすれば奴に攻撃を通せるんだ…」


 そのとき、石ころがオニサザエに向かって飛んでくる。石はサザエに命中すると爆発を起こす。

ドカンッ!!

 オニサザエは地面に墜ちた。墜ちた衝撃が地面に広がりちょっとした地鳴らしが起こる。


「コッチだ、サザエ貝!!」


 ライがオニサザエに呼びかける。


「御使い…貴様…!」


「オイラはまだ負けてないぞ。さぁ、蹴りを付けてやる。こっち来い!!」


 ライはオニサザエを誘き出すため走る。


「待て…!!」


 オニサザエはライを追いかける。


「それっ!!」


 ライは石爆弾を何個も投げ付けた。これは石に込めるエネルギーが少量で済むため、限りなく出来るのだった。

 石爆弾が当たっても何のその、オニサザエはライを追いかける。依然として殻から体は出さない。

 

「見えた!!」


 走っていると先程の桃色の粘着液のポイントまで来た。


 クルッとオニサザエの方を振り向き、


「さぁ、オイラを潰せるものなら潰してみろ!」


 ライは挑発する。


「コイツーー!!」


 オニサザエは全力で潰しにかかる。


(体が高速移動に耐えれるのは後1回タイミングを間違えず…!)


「オオォォォォー!!」


 段々と近づいて来る。そして2人の距離が2メートルもないほどに近づいたとき。


「今だ、それっ!」


 ライは加速した。ライが消え、その背後に自身の粘着液があるのをオニサザエは見る。


「ナニィィィィ!!」


 そのままオニサザエは粘着液に着地した。


「うおぉぉ…動かないぃ…」


 サザエ貝が藻掻くが粘着液は徐々に固まっていき、完璧に身動きが取れなくなった。


「よしっ!!」


 ライはサザエ貝の口に石爆弾を投げ入れる。


(さぁ、爆発しろ)


 後ろに下がり距離を取る。が、


「……………」


 何も起こらない。


「な、なんで爆発しないの?」


「恐ラク奴ノ貝ノ中ハ思念ヲ遮断シテイルノダロウ。」


「じゃあ直接攻撃を入れる!」


 ライはオニサザエの前に立つ。


「本物のサザエは食べた事ないけどサザエは焼くに限る。」


 右腕に力を込める。その時ふっと空を見上げる。日没が始まり空は赤い色になっていた。


(そう、この赤を、炎を意識するんだ。)


 ライはイメージする。この夕焼けと同じ色の熱く、熱く燃える炎を


「!?」


 腕が熱を帯びているのがわかる。腕から炎のメラメラという音が聞こえてきそうだった。

 自分の腕に太陽を掴んでいる。そう思えたとき、放つ。


「火龍!!」


 腕から赤い炎が殻の口に放たれた。

 炎はサザエ貝の中を駆けて行く。内側から焼き尽くしていく。


「…ァァァァァッ…」


 中からオニサザエの小さな断末魔が聞こえたような気がした。

 スッと距離をとるライ。貝は焦げて煙が出ていた。そして中からドバッと液体が溢れてきた。それは“オニサザエ”だったものだった。


「やっ、やった。どうにか倒せた。」


 変身が解けると同時にへたれ込むライ。そこに


「オーイ、大丈夫かー」


 ネイルとオリビアが来る。


「うん、平気平気。2人の助けがあったからだよ。ありがとう。」


 ネイルがライを起こす。


「じゃあ、戻るわよ。司令に報告しましょう。」


 夕日から空が青く、黒くなっていく。太陽がしばし空という舞台から降りるように3人も戦場という舞台から消えていった。

 が、その戦いを見ていた人影までは3人は知らなかった。




 



 


 



 



 

 

 


 


 



 


 


 

 


 


 

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