第5話3体の怪人②
EGESTを誘い出す為エレキテントウ、カミキリ、サラマンダーは海辺の町で暴れていた。
「町の住人たちは皆逃げてしまったようだ。」
殆どの建物が半壊し、音は瓦礫の崩れる音しかしない人ひとりいなくなった町で周囲を見渡しながらエレキテントウが口を開き話す。
「これだけ派手に暴れたのにまだ奴らは現れない。世界の平和を守ってると良く言ったもんだ。」
町の公民館だったと思わしき建物の瓦礫の山に立ち、まだかまだかと待ち構えながらカミキリが呟く。
「んぐぐぐっ、なら、次の町にでも、行く?ンムッ!人間の食べ物も美味しいな〜」
サラマンダーは何処からか盗んできた食料をたべながら次の町を襲う提案をする。
「いや、これ以上は体力を温存したい。それにあれだけの人間が我らを見たんだ、噂は奴らにも届いているだろう。此処で迎え討つ。」
エレキテントウは今いるこの町を戦いの場にすることに選んだ。
「…どうやら来たようだぞ。」
気配を感じ取ったカミキリは背後を見る。つられて二人も振り返る。そこにはパワードスーツを着た黒部と伊織が立っていた。
「待っていたぞ。」
エレキテントウが最初に口火を切る。
「お前達はメガフィス帝国の者なのか?」
黒部はエレキテントウに問いかける。
「いかにも電気族カミナリテントウ」「刃族カミソリカミキリ」「炎族サラマンダーだよん」
3人は名乗りを上げる。
「何故このようなことをした?」
黒部が3人に問う。
「全てはお前達を誘き寄せる為だ。黒い鎧の御使いはいないようだがお前達なら奴の居場所を知っているはずだ。大人しく教えてもらおうか。」
エレキテントウは自分達の目的を話す。目的を聞いた二人はライが目的だと知り覚悟を決める。伊織が返す。
「そんなの教えるわけないでしょっての!どうせろくでもないことをするに決まってるさ!」
「うむ、各地で君達は一方的な武力による被害を出している。そんな連中の要望を聞く訳にはいかない。」
黒部も続いて返事を返す。その返事を聞いてエレキテントウは睨む、そこにカミキリが瓦礫の山から降りて来て話す。
「なら仕方ない、お前達二人を倒して力尽くでも聞き出す。出てこい!」
カミキリの掛け声で周囲から無数のオークコングが現れる。
「キャメレオンのときより倍以上の戦力がこちらにはある。果たしてどこまで戦えるかな?」
エレキテントウは数では自分達が有利なことを告げる。
「奴らの狙いはあの少年だ。絶対に渡す訳にはいかない。今の会話を作戦室に繋いで援軍を要請しているが、前回よりも数が多いやれるかい?」
黒部は伊織に覚悟を問いかける。
「わかってます。覚悟はとっくに出来てますよ。前回は不甲斐なかったけど今回はやってやるんだから!」
伊織は戦意剥き出しで応える。
「かかれ!殺すなギリギリで生きている状態にして居場所を吐かせる。」
エレキテントウの号令でオークコング達が一斉に二人に向かって来る。
「雑魚は通常火器で十分対処可能だ、ここはマシンガンで行くぞ。」
「了解!」
黒部の指示に伊織は従う。どこからともなくマシンガン銃が二丁飛んできて二人の手元に着地する。二人同時に素早く構えて銃口を迫ってくるオークコングの集団に向ける。
「蹴散らす!ゴリラ共!」
伊織が叫ぶと同時にトリガーを引き、銃弾が放たれる。
ババババババ!!
向かって来るオークコング達を次々と撃ち抜く。倒れる仲間の屍を踏み、それでも向かって来るがまた撃ち抜かれ倒れる。次第にちょっとした死体の山が出来ていた。
その光景を見て自分達も銃で応戦しようと動きを止め、銃を構えようするオークコング達を側面から周り込んだ黒部が撃ち抜く。
応戦する間も無く撃たれ倒れる。オークコング達。更にもう側面からも伊織が周り込みはさみ撃ちにする形で一網打尽にする。別方向から迫って来たオークコングには格闘戦で応戦する。蹴る、殴る、投げ飛ばしなどで蹴散らしていく。
だが更に集団はかかって来る。黒部は肩の装甲を展開してペン型の小型爆弾を数個地面に撃ち込む。地面に埋まった爆弾は即席の地雷なものとなり、オークコングが近付いたのを感知すると全ての爆弾が爆発する。オークコング達は皆吹き飛んだ。
「多くの武器を備えているようだ。」「次は我々が相手だ。」
3体の怪人は戦闘態勢に入る。黒部と伊織も構える。今戦った雑魚とは比べものにならない戦闘力を一人ひとりが持ち、それが3体まとめて襲いかかって来る。それだけでも大きなプレッシャーとなっていた。
「死なない程度に傷を負わせる。」
エレキテントウは羽根を羽ばたかせると身体が宙に浮き、上空に上がる。エレキテントウの目が発光し二人を捉える。
「喰らえ!」
ビビビビビビビビビビ!!
エレキテントウの目から電撃が発射される。
「「ッ!!!!」」
黒部達はエレキテントウの目が光った瞬間、何かを仕掛けてくると感じ取り回避行動をとる。黒部は左に、伊織は右に大きく避けると二人が回避する前にいた地点に電撃が当たる。当たったと同時に大きな土煙が上がり、地面が直径5メートル、深さ1〜2メートル程抉れた。
「何が死なない程度よ。殺す気満々じゃない!」
伊織は電撃の威力を見て、エレキテントウを罵倒する。
「悪く思うな、なんせこの技を手加減して撃ったことがないのでな。」
エレキテントウは満足げに嬉々として言う。羽ばたくのを止め、地に着地する。
「それっ、ドンドン撃つぞ果たして避けられるかな?」
エレキテントウは再び目を発光させると二人目掛けて電撃を連射した。
「くそ、避けるのに精一杯か。」
黒部と伊織は動き回り回避することで精一杯で反撃出来ずにいた。
「ちぃ、キリが無いわね…」
伊織も走ったり、跳んだりして回避に専念する。が、目の前の直線上に電撃が来るのが見えこれを避けようとする。
「くっうぅぅぅ…」
避けたと思われたが僅かに電撃が右肩を掠った。その瞬間右肩、腕に強い痺れが走る。
「掠ってこれなワケ!?」
咄嗟に右腕を抑える。
「私も腕が落ちたか。」
エレキテントウは中々当てることができない。ことに嘆きつつ羽根を羽ばたかせる。
テントウの上を2つの影が過ぎる。
「次は」「我々だ」
カミキリが黒部に、サラマンダーが伊織と相対する。
「楽しませてもらおうか。」
カミキリは左手の鉤爪で黒部を攻撃する。黒部はそれを避けながら攻撃のチャンスを窺う。
一瞬の隙もなく鉤爪で攻撃を続けるカミキリ、避けながらどんどん後ろに下がりつつ黒部は遂にチャンスを見つけ出す。
「フンッ!」
左腕を右手で掴む、カミキリは右拳で応戦しようとするがそれを左腕で阻止する。すかさず左手の手刀を腹部に叩き込む。怯んだ様子でカミキリは後ろに下がる。追撃に左脚で飛び蹴りを喰らわす。
「くっ、甘く見ていた。」
カミキリはもう一度鉤爪での攻撃に出た。黒部も相手に向かい突っ込む。鉤爪の攻撃を避け、右腕をカミキリの首に巻き付け、ランニングネックブリーカードロップを喰らわす。
このとき右肘の装甲が展開し、スラスターとなり地面に倒れる際のスピードを上げている。
頭から地面に倒れるカミキリ、頭から徐々に痛みと衝撃が広がっていく。
「があぁ!ァァ…」
カミキリもこの衝撃には耐えきれずうめき声を出す。がしかしカミキリも負けていなかった。すぐさま首に巻き付いた腕を解き、黒部を投げ飛ばす。続け様に左手鉤爪から斬撃を飛ばす。
投げ飛ばされた黒部は受け身をとりすぐに立ち上がり、斬撃を避ける。躱された斬撃は背後の建物や木を真っ二つにする。
躱した直後の黒部にカミキリが飛び蹴りからの膝蹴りの2連撃を放つ。
「ウワッ!!」
黒部は背中から倒れる。そこにカミキリが馬乗りになり、鉤爪を黒部に構え振り下ろす。
場面は変わり伊織とサラマンダーの戦闘が繰り広げていた。
「丸焼けになっちゃえ!」
サラマンダーが口から炎を吹く。それに対して伊織はスーツの前腕から消火ガスを噴出しこれを相殺する。
「またトカゲが相手ってわけね。」
ハンドガン型のビーム銃を撃つ、サラマンダーはそれを俊敏に避け、再び炎を吹く。また消火ガスで相殺する。その繰り返しであった。
サラマンダーの動きは素早く、木や瓦礫の上を一瞬で移動し、次々と場所を変えて攻撃してくる。
(攻撃が当たらない動きをなくちゃ…)
サラマンダーの炎を消火ガスで相殺しているがガスの残量にも限りがある。ガスの残量が尽きる前に仕留めなければならなかった。
「よしッ、やってみるか。」
再び炎が襲い来る。それに対してガスを噴出した後、スタングレネードを炎が出た位置に投げた。
「!!?」
サラマンダーは投げつけてきたモノを避けようとしたその瞬間、閃光が走りサラマンダーの視界を奪う。
「あぁ、ううぅ…」
目が見えずふらつく、しかし人間と違い感覚は早く戻る。目が慣れてきて、背後を振り返る。
そこにはビームの刃を今まさに振り下ろそうとする伊織がいた。
「もらったーーー!!」
逃げようとするサラマンダーを逃さないとビームソードを振り下ろす。刃は身体には当たらず尻尾を切断した。
「チィィ!」
伊織は悔しそうに声を上げた。
「オレの大事な尻尾が〜!」
サラマンダーは尻尾を切られたことに悲鳴を上げて驚いていた。
「どうせトカゲなんだか生えてくるでしょ。そんな痛々しい演技しても無駄よ。」
伊織はサラマンダーに言った。敵は生物の特性を持っている。ならばトカゲの特性はそれしか無いそう考えてのことだった。
「あっ、バレた?」
サラマンダーは演技を見抜かれ冷静に言う。
「そうその通り、オレは身体が欠損してもすぐに再生するんだ、こんな風に」
ググググググッ
サラマンダーが身体に力を込めると切断された断面から新たに尻尾が生えた。
「そしてこんなことも出来るのさ!」
サラマンダーは尻尾を振ると尻尾が身体から外れ、伊織目掛けて飛んでいく。
「!?」
伊織はそれを避けると尻尾は周りの木々の太い枝を切り落として、ブーメランのようにサラマンダーの元に戻り、再び体とくっつく。
「チッ、蜥蜴の尻尾切りなんて可愛いものじゃ無いわね」
サラマンダーは再び尻尾を振り投げつける。切れた断面からまた新しい尻尾が生え、再びそれを振り投げる。
伊織は次々と来る尻尾ブーメランを切り落としていく。そこに炎が飛んで来て、ジャンプで躱した、腰部からグレネードを発射する。サラマンダーの近くにあたり、爆風でサラマンダーはダメージを負い倒れる。
すかさずそこにニードロップをサラマンダーの腹部に落とす。
「ギッ!!」
一瞬痛みで怯むが尻尾で払いのける。顔面から尻尾の攻撃を受けた伊織は後ろにに尻もちを付くように倒れるが、間髪入れずに頭から突進し、サラマンダーの顔を数発拳を叩き込み、右アッパーを繰り出す。アッパーを放った後素早く回転し左肘でエルボーパッドを仕掛けた。
その後も二人は移動しながら格闘戦を繰り広げ、遂には黒部とカミキリが戦ってもいる地点に辿り着いた。
「隊長!!」
黒部は馬乗りになったカミキリの鉤爪を既のところで受け止めていた。
「ホウ、サラマンダーよ思った以上に苦戦しているじゃないか。」
「いや~意外と強いね〜」
「何故彼を狙う!?」
黒部はカミキリに問い掛ける。
「あれは―龍王装甲 我らメガフィス帝国が出来る前から存在する神秘の力なのだ。」
カミキリが説明し、エレキテントウが言葉を続ける。
「誰もが装着出来る訳ではなく、選ばれた者だけが力を得ることができる。」
サラマンダーも続く
「龍王装甲は装着者の最も優れた能力を最大限伸ばす特性があるのね。だから人によっては神様みたいな力を持てる。」
「敵の手に渡ってしまったらこれほど脅威になるものはない。だから始末するのだ。その為にお前達には奴の居場所を吐いてもらわなければならない。さぁ、教えるのだ!!」
黒部と伊織は3体の気迫に押されていたのだった。
怪物が現れたと知らせがあり黒部、伊織が基地から出動した後ライは変わらず基地のゲストルームに家族といた。
「またあんな怪物が出たのか、しかも三匹も…」
英丸は以前の襲撃を思い出し、ゾッとする。
「狙いはわし等かそれともライなのか。」
「もぅ、義父さん不安になるようなこと言わないでよ。」
麗は我が子が不安になるようなことを言うなと怒る。
ライは黙ったまま考える。
(なんだか胸騒ぎがする…これはそうだ!父さんが拐われたときと似た感覚だ。お姉さん達2人は大丈夫かなぁ…)
「…イ、ライ?ライ?」
麗はライの肩をポンポンと叩き声をかける。
「ん?ああ、何、母さん?」
「大丈夫?さっきからずっと無言でいるから。」
麗は心配になり声をかけた、しかし考えてみればこんな幼い子どもにとって怪物が自分の命を狙って来るなど想像を絶する恐怖なのは言うまでもないと思い、無言で表情が硬くなるのも無理も無いと思った。
ライは今2人が戦っている場に自分は行かなければならない。そんな気がしていた。
(ううん、狙いはオイラだ。それにいたところでオイラは何も出来ないから…)
前回は瀕死のキャメレオンを偶然力が働き、倒せたがあのとき何がどうなっていたのか自分ではわからなかったのとほぼあの2人が倒したようなものだと今自分は此処に安全だと判断し、黒部達が勝つことを祈ることにした。
がそこに、
(アイノコヨ、アイノコヨ)
ライの頭の中に何者かの声が響く。
(!?この声はあのときの白い龍!)
それはライが初めて龍王装甲を纏ったときにライの意識の中に現れた白龍の声だった。
(…コノ軍団トニンゲンガ戦ッテイル、シカシ勝ツニハオマエのチカラガ必要ダ。)
(オイラの力が?でも鎧を着てもオイラ弱くて何も出来ないよ。)
(フッフッフッ心配ナイソノチカラハヤツ等ニ負ケハシナイ。サァ戦場ヘ行クノダ、我ガ戦イヲ補助スル。先ニ戦ウ2人ノ気配ヲ辿レバタドリ着ケルハズ。)
ライは白い龍の言葉を信じ、意を決する。
「トイレに行ってくる。」
ライは麗と英丸にそう告げるとゲストルームを後にする。廊下に出ると目を閉じ、意識を集中させる。すると2人と接したときに感じた雰囲気を感じ取ることが出来た。それと同時に2人がゲストルームを出てからの移動する映像が微かに頭をよぎった。気配をたどり基地内を移動する。途中人がいた際は身を隠して何度かやり過ごしながら気配の続く地下へ進む。
地下のリニアまで辿り着いた、しかしリニアのレールはあらゆる方向に伸びていた。再び意識を集中させる。
「こっちか!」
気配を感じたレールのリニアに乗り込む。センサーが感知し、リニアが動き出す。戦場へと向かうのであった。
「いつ敵と会うのかわからないからあの鎧に変身しとかなきゃ。ねぇ、白い龍のおじさん教えてどうした変身できるの?」
変身の仕方を尋ねる為何も無い空間に向かって話しかける。
(何モスルコトハナイ。タダ鎧ヲ纏ッタ姿ヲ想像スレバ良イ。元ノ姿ニ戻ルトキモ同ジ。)
「わかったイメージすれば良いのね。」
方法を聞いたライはイメージする、鎧姿の自分を、すると身体全体が光に包まれ、次の瞬間には以前と同じ鎧姿になっていた。
「わぁ、またなれた。」
ライは大きくなった自身の拳を握りしめながら呟く。
「ソレト私ハ雌、人間デ言ウトコロノ女ダ間違エナイデモライタイ。」
「あっ、そうなんだ…」
その後しばらく沈黙の時間が続くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます