第4話 3体の怪人①

 メガフィス帝国の将軍たちは騒然としていた。それは魔族キャメレオンが人間に倒されたからだ。


「どういうことだ!キャメレオンが倒されるなんて、人間にそれほどの力があったというのか!!」


 獣族将軍フレオーンはあり得ないと言わんばかりに叫ぶ。

 それに対しシュタールが答える


「人間共は光線や銃弾が出る鎧の様なものを身に着けていたと報告があった。」


「キッヘッヘッそれは人間の科学が発達したんだろうねぇ」


 魔術族将軍グリモワは人間の科学力に関心があるように話した。


「それともう一つ話しておかなければならないことがある。」


 シュタールが連絡を続ける。


「生き残ったオークコングからの報告によると龍王装甲、御使いが現れたそうだ。」


「「「「!!!!」」」」


 将軍達は激しく動揺した。


「チッ、探しものが見つかりはしたが」


 ブレイズはことが面倒になっていると思いながら呟く。ボルダーも口を開く


 「あれは勝手に動くようなものではない。適合した装着者がいて初めて動く。もしやこの時代に適合した者がいるのか?」


「それに関してはわからないそうだ。そのオークコングが現場に行ったときには既に装着した後だった。闘いこそは人間共がしていたが、キャメレオンの直接的なトドメは御使いだったと言っている。」


「御使いになった位だ、其奴それなりの力を持っているんだろうな。」


 フレオーンは実力が気になる様子である。


「殆ど腰が抜けていた様子だったそうだ。キャメレオンも倒せたのは人間が瀕死の傷を負わせたこともあり、偶然に近いものだ。オークコングに力を振るった際にも己の力に怯えていたとの話だ。」


「それじゃぁ、まだ力を制御出来ない感じだねぇ。一体どんな腑抜けが装着してんだい。」


 グリモワがほくそ笑む。


「うむ、今がチャンスかもしれない。」


 シュタールが強く頷く


「正体がどうであれ、力が上手く制御出来ない、戦い慣れてない今こそ叩くおくべきだ。かつての御使い達もその力を扱い切れず自滅していった。が、その最期はどれも強大な力を放出しながら死んでいった。そうなる前に倒し、我々の中から新しい適応者を見つければ良いのだ。」


「なら今回は我々の陣営から出そう。」


 ボルダーが龍王装甲の退治に名乗りを上げた。


「待ちな、オレ等からも出すぜ。」


 ブレイズも名乗りを上げる。


「うちも行こう。3陣営から出れば倒せるだろう。」


 フレオーンも名乗りを上げた。


「カミナリテントウ」


 ボルダーが名前を呼ぶと巨大な二足歩行のテントウムシが現れた。


「電気族カミナリテントウただいま参上しました。」


「カミキリ!来い!」


 ブレイズに呼ばれ人型のカミキリムシがやって来た。触覚は真っ直ぐ立ち、左手は3本の刃物の様な爪になっている。


「サラマンダー、出番だ」


「はいよはいよはいよはいよ〜」


 フレオーンに呼ばれ二足歩行の黄土色をした巨大なトカゲが駆けてきた。


 シュタールが3体に命令する。


「お前達3人協力して御使いを倒すのだ。」


「話はわかった。オレが御使いを倒してやる。」


 カミキリが自信有り気に言う。


「イヤイヤ、このカミナリテントウの高電圧の電気光線で御使いを仕留めてみせる。」


 カミナリテントウも負けじと前に出る。


「オレ達3人力を合わせなきゃいけないんでしょう〜ねっ、将軍様?」


 サラマンダーが2人に呆れながらシュタールに問う。


「その通りだ。いいかお前達誰が御使いを倒すのかではない。どう協力して倒すかだ。わかったら行けぇい!」


「「「ハハッー!」」」





 場所は変わりEGESTの基地、ここではライが身体検査を受けていた。魔族キャメレオンとの戦いの後変身が解け倒れた。何故姿が変わったのか、メガフィス帝国と関係があるのか、それを探るために精密な検査が行われていた。

 作戦室でライの身体を映したレントゲン写真が貼られる。

 

 早川がレントゲン写真を見ながら話す


「ライ君の話だと桂さんから貰った菱形のクリスタルが身体の中に入ってから身体に異変が起き、あの黒い姿になったと聞いているが、レントゲンにはそのようなものは見当たらない。」


「あの化け物は彼の変身した姿を見て何やら興奮したように襲い掛かっていました。」


「彼の鎧を探していたと言ってました。」


 黒部と伊織キャメレオンが言っていたことを報告する。


「では彼らの狙いはライ君なのか?」


 早川が考えを口にする。


「そうかもしれません。あの怪物の様子からして必死でした。奴らにとって余程重要なモノのようです。」


「それに桂さんの義息子さんも奴らに囚われています。それをどう使って来るのかも気になります。」


 黒部達もメガフィス帝国が狙うのはライだと考える。


「向こうの戦力は?」


「手下の戦闘員は通常火器で倒せます。それを指揮していたモンスターは生物の特性を…ヤツは生物の特性を持っていて、そこに加えて特殊能力を持ってスーツと互角かそれ以上の実力があります。実際私も殺られかけました。今回はどうにかなりましたけど、次はこうはいかないのではないかと」


 キャメレオンと戦いその力を直に感じた伊織が話す。


「今回はどうにかなりましたが次もこう行くとは思えません。我々だけでは近い内に必ず負けます。」


 黒部は率直な意見をだし、敵の強大さを語った。


「うむ、世界各国でも奴らの人攫いが同様に起こっているがこちらに人手がまわるよう手配しよう。」


 早川も早急に当たらなければいけないことだと理解した。


「それでライ君は今どんな状態なんだ?」


「現在意識が回復し、心身共に正常です。ただ…」


「ただ?」


「姿が変わったことの驚きと襲われた恐怖であの姿になることを拒否しています。」


「なるほど、いやっ、無理も無い。あの歳で理解が追い付かない経験をいくつもすれば怖がるものだ。本人にその気が無いならそれ以上の検査はしないほうが良いだろう。」


「はい、そのように本人と桂さんたちには伝えます。」


「彼に一体どんな能力があるのか正直知りたくはあるが、奴らが取り戻そうとする程のもの強力な力があるのは間違いない。」


「ええ、手甲から爪を出し、手からは怪物を倒すほどの衝撃波を放っていました。見た目からして内蔵火器や近接格闘武器を収納出来るスペースがあるとはとても思えません。それに子どもの彼の身長が姿が変わると大人以上に大きくなるの私達の科学力では無理です。」


 伊織がライが変身した姿の異様さを語る。


「彼を戦力として扱うのですか?」


 黒部がライの将来的な措置について早川に問いかける。


「組織の上層部は戦力として使いたい派閥と未知の力を使うこと、それに子どもを戦いに出すことに反対派の2つに分かれている。もちろん私は反対派だ。君達二人はどうかね?」


「私も反対です。」


「同じく」


 黒部に続くように伊織も反対の意思を示した。

 早川は椅子に座り込み半回転させながら呟く


「せめて彼の鎧が何なのかそれさえわかればいいのだが。」





 海辺の崖にある洞窟の中そこには打倒ライの名を受けたカミキリ、エレキテントウ、サラマンダーが会議をしていた。


「まず最初に御使いがどこにいるのかを知らなければならない。」


 エレキテントウが2体に話す


「そういえば何処にいるんだ?」


「オレ知らねぇ」


 カミキリとサラマンダーは互いに顔を見合わせて言う。


「それを今から考えんのだろうがっ!」


 呑気な2体にエレキテントウは大声を上げる


「そうか」


「そだね」


 2体はああぁ、そうかと納得した様子を見せた。


「んで、何か手掛かりはあんの?」


 サラマンダーが問いかける


「いや、これといったものはない」


「カァ、リーダーぶっておいてお前も考えなしじゃないか!!」


 カミキリはエレキテントウに対してツッコミを入れる


「将軍様達も情報集めとか下準備をちゃんとしてほしいよねぇ」


 サラマンダーも愚痴をこぼす。だがエレキテントウは


「ええい!情報が無くたってなんとかなる!はず…」


 強く出たものの自分達はなんの情報も無いまま出てきてしまったことに心細さを感じていた。


「そういえば御使いはあの後EGESTに回収されたらしいから、アイツ等んとこにいるんじゃ?」


 サラマンダーが一言話す


「っ!!そうか、例え一緒でなくても捕まえて居場所を吐き出させれば良い!」


 エレキテントウは良い考えが浮かんだような様子で話す。


「しかしどうやって見つけ出す?奴らの拠点は何処にあるか知ってるのか?」


 カミキリがさらなる問題を上げる。


「それもわからない。帝国が今も調べているからな。」


「ならばこちらから誘い出すか。」


  エレキテントウの返答を聞き、カミキリは相手から来る方向で考えを変えた。


「どうおびき出す?」


 エレキテントウがまたさらなる問題点を上げる。


「「「む〜〜〜〜」」」


 3体は考えるが中々案が浮かばない。するとサラマンダーが一言


「暴れれば来るんじゃない?」


 それはシンプルな考えだった。


「いやっ、それでは我々の存在も世間一般に知られてしまうことも考えられる。一番可能性があるが将軍様達はあまり派手な行動はしないようにと話を受けている。」


 エレキテントウは即却下した。


「しかし帝国は活動を再開したばかりで十分な物資が提供されていない。大きな作戦を展開するのは無理だろう。多少の無茶は承知で我々が自ら赴いておびき出すしかないのではないか?」


 カミキリが現在の自分達の状況を踏まえてエレキテントウに語る。


「わかった万が一、御使いと一緒にあの鎧を纏った二人が来ても相手が出来る。先の戦いではキャメレオン一人であたっていたが、今回は我ら3人それぞれ1対1で戦ってもオークコング部隊もいる、負けることはないだろう。よし、やってみよう。」


 エレキテントウは今自分達に出来る最大限のことすると決めた。


「それじゃ、来てくれる確証は無いけどやってみようかね。」


 サラマンダーの意気込みが台無しになるような一言の後動き始めた。




 


 舞台は変わりここはEGESTのゲストルーム、そこには検査を終えた龍峰ライと母麗、祖父英丸が滞在していた。


「ライ具合はどう?」


 検査を終え自分達の下に戻って来たライに麗が寄り添いながら調子を尋ねる。


「もうなんともない。あの倒れたときからすっかり体調が良くなったみたい。」


 ライは心配する母に大丈夫だと伝え安心させようとする。


 「しかし研二君が今どうなっているのか、そこが心配じゃのう…」


 英丸は肩を落としライの父研二の身を案じていた。それを聞いて麗とライも表情が曇る。研二は今想像を絶する化け物達に囚われている。その命も保証されていない、心配すればするほど考えれば考える程不安は大きくなるばかりであった。

 そこにゲストルームの扉が開く。早川と黒部、伊織が室内に入って来る。


「あぁ、早川君それでどうなんだ?ライの状態は、研二君はどうなってるのかわかったことはあるのかね?」


 英丸は早川に今の状況について問いかける。


「えぇ、まずライ君の体内にあると言われたクリスタルの結晶ですが検査をしても見つかりませんでした。レントゲン、カメラ、エコーあらゆる方法で探りましたが、体内に異物はありませんでした。これは私の考えでしかないのですがクリスタルの結晶体は体の中で消化いや、吸収か融合したそうとしか説明出来ない状態です。とにかく今は取り出すことが出来ません。」


「まぁ、なんてこと」


 麗は我が子の現状に言葉が出なかった。


「なんてことだ、わ、わしが余計なモノをあげなければライはこんなことにならずに…」


 英丸は自分のせいだと思い、頭を抱えた。


「気にしないで爺ちゃん、オイラ気にしてないし、後悔して無いよ。」


 自責する英丸を気遣うようにライはニィの平気とばかりな笑顔を見せる。


「ごめんなぁ、ライ」


 ライの言葉と笑顔に少しばかり英丸の気持ちが軽くなる。


「それと研二さんの行方ですが…」


 早川が話を続けたそうにしていた


「研二さんについては何も手掛かりが掴めていません。奴らに捕まっているのは確かなのですが、何しろ大昔に沈んだ大陸。記録が少ないから幻、都市伝説といわれたくらいの国です。生き残り達が何処に拠点を持つのか検討がつきません。」


「そうじゃよなぁ、遥か昔にあんな化け物がいて、それを支配する国があるとは」


「そう、そこなんですがね」


 英丸の言葉に早川が反応して話を続ける


「あの戦闘があった跡地を調べて見たのですが、あの化け物達の身体の破片を見つけて調べたら、一つの破片からカメレオンの細胞と人間の細胞が摘出されたんですよ。それも人間の方は現代のではなく、メガフィス帝国が栄えていたであろう年代の人間の細胞だとわかったんです。」


「じゃぁ奴らは人間と動物を合体させて何千年も生きているのか!」


「そうなるんですよ。」


 英丸の言葉に早川は頷く。


「とにかく当面の間は我々の用意する住居エリアで生活をしてもらいます。皆さんお仕事や学校はしばらく行けないことになりますがご了承下さい。」


「うん、わかった。お前たちもそれで良いな?」


 英丸は早川からの提案に了承するとライ、麗の二人にも同意を促した。


「ええ、わかってる義父さん。」「うん。」


 二人も同意した。すると


 プルルルルル


 ゲストルームの壁に備わっている電話が鳴る。


「はい、早瀬です。……」


 伊織が電話を取り、聞いている。


「司令、至急作戦室に戻って来て欲しいそうです。」


 電話の作戦室からの連絡を早川に伝える。それを聞いた早川は頷く。


「では私はこれで。後で担当の者を遣わせますのでそれまでは此処にいて下さい。」


 早川は英丸達に一礼したあと、ゲストルームから出ていく。後に続き黒部と伊織も退室する。

 3人が退室した後それぞれがくつろぐように過ごしているが、ライは作戦室に戻っていったことを気にしていた。


(嫌な感じがする。あいつ等を初めて見たときと同じ感覚だ。)


 とてつもない胸騒ぎをライは感じ取っていた。





 作戦室に早川が戻る。室内は慌ただしい様子であった。 


「どうしたと言うんだ一体?」


 開口一番オペレーターに尋ねる。


「7G49地域に3体の怪物を確認しました。民家を襲ったりしてるようです。」


「SNSなどにも画像や動画が上げられています。」


「3体?奴ら数を出して攻めてきたな。投稿されたものから情報がわかるものはないか?」


「待って下さい。モニターに出ます。」


 モニターに複数の動画や画像が表示される。


「トカゲ、背中の模様からテントウムシ、頭の触覚からカミキリムシの怪人ですね。これらからはどんな能力があるかはわからないですが…」


 黒部は見た目からで正体を推測するが動画には能力を使う描写は撮られていなかった。


「この怪人達もメガフィス帝国の者だろう。既にいくつもの町が被害にあっている。前回よりも敵の数が倍以上に多い、それでも君達にやってもらわなばならない。行ってくれるか?」


 早川は黒部と伊織に問いかける。


「やります。そのために我々がいるのですから。」


「私も同じです。」


 二人は迷うこと無く返事を返した。


「ありがとう。あそこの地域なら地下のリニアで繋がっている。ではよろしく頼む。」


 二人は早川に敬礼すると作戦室を出て現場に向かった。



 





 











 






 




 








 










 




 



 


 

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