第6話

 遺伝子情報をもとに、遺伝子そのものを使用せず合成樹脂や人工の臓器を利用して作られたロボット、らしい。


「いやわからん」


 つまりなんだ。人間か?


「ロボットですよロボット。人型ロボット」


 シャワー上がりに缶ビールのふたを開けてぐびぐび飲んでるこの女性が。ロボット。


「なんで狙われたんでしょうね、わたし」


「それは知らん」


 怪訝な顔をするな。知らんものは本当に知らん。


「じゃあ、なんで逃げたんだ?」


「そりゃあ、狙われたら逃げるでしょ普通。わたしを作ったエンジニアも近くにいたら危ないわけだし」


「パパとママね」


「そう。パパとママ」


 飲み終わった缶ビール。を。


「おい投げるなって」


「ごみ箱に入れる最短ルートですってば」


 がこんっ。がらんがらがら。


「ほら入らねぇじゃねぇか」


 ロボットが聞いてあきれる。


「うるさいです。たまたまエイム《照準合わせ》がわるかっただけですって」


「俺以下のエイムじゃん」


 缶ビール。投げる。入る。いつもの通り。


「なんですかもう。だいたい、その胸とその顔で俺は違うでしょぜったい」


「いま俺の顔と一人称は関係ないだろ」


「いいえ関係あります。その顔とその胸でエイムがロボットみたいな精密さなの腹立つんですけど」


「ロボットじゃねぇんだけど俺」


「だから腹が立って外したんですぅ」


「意味分からん理屈をつけるな。エイムミスはエイムミスだろ」


 ぷしゅ。


「おいもうひと缶は違うだろ」


「待ってなさい今度は絶対綺麗に投げ入れて見せるぐびぐび」

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