第38-1話 溝は少しずつ広がって行く その二

 前話からの続きです。


―――――


 雄二への思いは変わらない。金曜日の我家での夕食と金曜の夜から月曜の朝まで雄二と一緒にいる生活も変らない。


 でも私はもっともっと雄二と一緒に居たい。でもあれも少なくなってきて。体の底で私に声を掛けてくるものがある。

でもそれを今はぐっと我慢しなくてはいけない。それは自分自身が目覚めてしまったものへの辛い仕打ちだった。


 そんな私の心の寂しさに声を掛けて来たのが青山君。


 とても優しくって私が授業が無くて雄二の授業が終わるのを待っている間、午前中の大学構内ではほとんどこの人といる様になった。


 でも決して何をするでもなく、一時間から一時間半位お話をして、どこかに行ってしまう。多分自分が受ける科目が午後に集中しているからなのか。


 そんな金曜日の午前中、いつもの様に青山君とカフェで紅茶を飲んでいると


「一条さん、来週の水曜日、俺、四限で終わりなんです。もし良かったらその後、食事でもしませんか?」

 流石にそれを受ける訳にはいかない。


「ごめんなさい。私、婚約しているの。他の男の人と外で食事をする事は出来ないわ」

 そう言って、婚約指輪を見せた。


「えっ、そ、そうなんですか。すみません、知らなくて。でもこうして一緒にカフェで話してくれていますよね」

「これは大学構内で顔見知りとお話をしているだけの事よ。別にあなただからって訳では無いわ」

 この男何勘違いしているんだろう。


「でも、色々話もしてくれるし」

 私は立ち上がって


「何を勘違いしているか分かりませんけど、結婚を約束した人がいるんです。失礼します」

 全く、何考えているんだ。もしかして私を彼女にでもしたかったのか。冗談でしょ。



 あーっ、怒らせちゃった。急ぎ過ぎたかな。あんなに綺麗な人だもの彼位は居ると思っていたけど、まさか婚約しているとは、諦めるかぁ。



 私は、それ以来、青山君とは午前中にカフェにいく事を止めた。彼もそれに気付いているらしく、私に近付こうとはしなかった。


 でも今度は別の男が寄ってくる。中にはしつこく言い寄る人もいる。これでは青山君が横に居た方がいい。もう一度彼にお願いするかな。あんな事言ったから無理かなぁ。



 金曜日、雄二の授業が終わり、教室のある建物の下で雄二を待つ。今日は少し遅れているようだ。彼が現れると


「ごめん、区切りが悪くて」

「いいの。雄二、今は勉強が一番だから」

「そう言ってくれると嬉しいよ」



 私の家に行きながら

「ねえ、雄二。今日、家に着いたらお願いがあるの。いいかな」

「なに?」

「着いてから」

「そっか」


 家に着いて、門の鍵を開け、玄関の中に入ると

「雄二、食事までちょっと時間有るから私の部屋に行こう」


 いつもそうしているのに何で今日に限ってなんでそんな事言うんだろう。彼女の部屋の中に入るといきなり口付けされた。舌を入れて来ている。俺もそれに応えていると


「雄二、抱いて」

「えっ、でも時間が」

「我慢出来ないの」


 大学で雄二のいない午前中は、結構他の学生から声を掛けられる。中にはしつこい奴もいて、頭に来る時も有った。


だから私に優しくて普通に接してくれる青山君に仕方なく、もう一度雄二の授業が終わるまで私と一緒に居て欲しいとお願いしたら、いつか必ず外で食事をして下さいと約束をさせられた。


その時は雄二にも理由を言えば良いしと思った。変な男が声を掛けて来るより余程いい。でもそれがストレスになっているのは自分自身分かる。


本当は青山君でさえ、雄二以外の男と話すなんて勉強の時以外はいやだ。だからその気持ちを解消したかった。そして私の体の底にあるものが悲鳴を上げていた。


「いきなりでいいからして」


 千佳は、いきなりスカートをめくるとパンティを下げた。本当に準備が出来ていた。こんな事を要求してくるなんて初めてだ。


 でもそれを見ると俺も流石に二番目ちゃんが元気になる。ベッドの上でうつぶせで腰だけ上げている彼女にすると


「あうっ」

「声は駄目」

「う、うん。でも…」


 雄二は終わるけど私は全然足らなかった。どうしよう。



 終わらせると彼女が抱き着いて来た。

「雄二がいない午前中はいや。いろんな男が声を掛けてくる。勿論全部断っているけど。だからストレスを感じるの」

 少しだけど初めて雄二に嘘をついた。


「千佳…」


 俺が勉強ばかりして彼女の事を考える時間が少なくなっていた事は確かだけど。でも午前中だけだから問題ないと思っていたんだが、ここまでストレスを感じていたなんて。


「だから、今日雄二の家に行ったら、思い切りして欲しい。前の様に。それでわたしの心からストレスを追い出して」

「分かった。ごめん。俺が勉強ばかりしているから」

「それはいいの。仕方ない事だし。でも我慢しきれない時がある。その時は雄二が助けて」


 大切な婚約者にここまで言わせてしまっている俺自身に責任を感じる。法科大学院の一次選抜が十一月初旬、二次選抜は十一月中旬、もうすぐだ。一ヶ月も無い。



 俺達は、一条家の夕食が終わると俺の家に急いで?帰った。玄関に入るなりいきなり千佳が口付けして来た。

「さっきので火が付いちゃった」

「でもお風呂入った方が」

「雄二は、今の私では駄目なの?」

「それは無いけど」



 千佳は激しかった。物凄く感じるし、声も大きかった。一回目が終わった後、

「雄二、シャワー浴びようか?」

「そうしよう」


 お風呂場に行って二人でシャワーを浴びてそこでも一回戦してしまった。ベッドに戻ると更に彼女は求めて来た。こんなに我慢していたんだ。



 それも終わると午後十一時半。

「千佳。ちょっと聞いて欲しい事がある」

「なに?」

「来月十一月半ばに法科大学院の入試がある。もう一ヶ月も無い。試験内容は広範囲だ。だからそれまで我慢してほしい。勿論終わったら思い切りしよ」

「分かった。でも一ヶ月か長いな。私耐えれるかな」

「えっ?!そ、それって!」

「ふふっ、何を誤解しているの。誰か他の男とするとでも」

「……………」


「流石にそれはないよ。大切な婚約者がいるんだもの。だから明日の朝もう一度して、そしたら我慢する」

「わ、分かった」

 俺、結婚したら痩せ細りそう。


 これでいい。何とか我慢する。体の奥底にあるものも抑え込まないと。雄二が試験を終われば、それも満足させる事が出来る。




 十一月初旬に第一次選抜が通った。そして第二次選抜の詳細の連絡が来た。いよいよだ。

 第二次選抜終わるまでは、千佳と普段会う事も一条家の夕食も千佳の泊りも無い事にした。大学入試の比じゃない難しさだ。



 そして十一月中旬。二次選抜試験が有った。難しかったが、今まで勉強した知識を全てぶつけた。もしこれで落ちれば、勉強が足りなかったという事だ。またチャレンジするしかない。

 今日は土曜日。そうだ、千佳に連絡しないと


『千佳、俺だ』

『雄二』

『今試験が終わった。これから家に帰る。来るか?』

『当たり前。先に雄二の家に行っている』

『分かった』


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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