第58話 子作り旅行


ちょっと濃い目のイチャです。


―――――

 

 俺は、前田さんに申し訳ないと思いながら休みのお願いをすると先の事案で随分詰め込んだ所も有るからと好きな時に三日間の休暇を取っていいと言われた。これを千佳に話した所、


「じゃあ、二週間後、金土日で行こう。月曜日はお休みで。休暇申請出しておく。ねえ、何処のホテルにする。雄二と私の初めての子供の為だよ。素敵なホテルにしよう」

「うーん、俺はその辺全然分からないから千佳が決めてくれればいいよ」

「うん、了解しました!」

 何故か敬礼のポーズをしている。仕事病かな?



 千佳が選んだのは、伊香保温泉にあるミシュラン三ツ星ホテルだ。一人一泊とんでもない金額だ。


 彼女に少し高くないかと言ったら、素敵なお部屋が良いと言われて仕方なく彼女の言うままにした。


 俺も早乙女さんの事案が終わった後は、また前田さんの鞄持ちとして、前からの事案や新しい事案のお手伝いをしている。


 どれも証拠固めの為の情報収集やクライアントとの面談とかだ。急いでいるけど、夜遅くなったりはしていない。

 旅行に行く前日は午後七時には家に戻った。


「ただいま」

「お帰り雄二」

「あれ、帰っていたの?」

「うん、明日から大事な旅行だもの。今日は定時上がり。ちょっと皆に怪しまれたけど」

「怪しまれた?」

「そんな事いいの」


 そう言うといつもの口付けをして来た。今日は少し長い気がする。

 

 夕食を食べ終わり、リビングでゆっくりとした後、一緒にお風呂に入った。

「ねえ、雄二。今日から付けないでしたい」

「えっ、でもその辺は、きっちりしないと」

「でも、今日結構チャンスかもしれない」

「チャンス?」

「うん」

 どういう意味だ?


「雄二、先に出て」

「ああ」



 私は雄二がお風呂から出た後、一人でゆっくりと湯船につかった。手で自分の体をゆっくりと触りながら

 雄二とこれから子作りをする。私の体は雄二しか知らない。心も雄二だけ。でも過去一度だけ彼を裏切ろうとした事が有る。


 それは私の心のたった一度の雄二への裏切り。あの事を雄二は知らない。あの時、私はカフェでコーヒーを飲んだだけだと言った。

 彼は疑問を持ちながらも私を信じてくれた。このまま教えなければずっと分からないだけ。


 でも、私が雄二に前に子作りしたいと言って時から、心に大きな棘の様なものが引っ掛かって来た。これを言う前までは、もっと小さな棘だったのに。


 もし、本当の事を言って、彼に嫌われたら…。彼は厳格な所がある。勿論離婚なんてありえないと思うけど、今までの素敵な夫婦生活は無くなってしまいそう。


 でも、私の心の中に棘が刺さったまま、彼のあれを受け入れたら、私の心がそのまま子供受け継がれるかもしれない。そんな事許せない。だから…。



 私は湯船から出るともう雄二は洗面所にはいなかった。多分寝室。体をタオルで拭いて急いで髪の毛を乾かして、体のメンテをした後、パジャマを着て寝室に向った。

 ドアは開いていて雄二が寛いでいる。


「雄二」

「なに?」


 千佳が、いきなりベッドの上でパジャマを脱いで何も身に着けていない姿になった。

「えっ、一緒に横になってからでも」

「雄二見て。私の体」


 何を言いたいんだろう?見慣れているけどしっかりと千佳の肢体を見ているとなんと、彼女は足を大きく開いて上げた。


「千佳!」


「雄二、子供を作る前に言っておきたい事が有る。今から言う事は自分の身勝手な事。言う事自体が自己満足だと思う。

 でもあなたの子供をこの身に宿すなら言っておかなければいけない事がある。

 この体はあなたしか知らない。身も心も貴方だけ。でも三年前、あなたが大学院の勉強で忙しかった時、私は一度だけあなたを裏切った!」

「えっ?!」

 あれは何も無かったんじゃないの。有ったとしても何で今更。


 千佳は、ベッドの上で正座に直すと


「雄二、私の心の中に棘が刺さっていて…。あの時、私は自分の意思であいつ青山と一緒にホテルに入った。そして部屋の前まで行った。雄二からの電話が無かったら…」


「私は、私は…」


 ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら目から涙をボロボロ流している。



「千佳、知っていたよ。あいつから手紙が来ていた。もっと汚い言葉を書いて有ったけど」

「えっ!」

「千佳が正直に話してくれたのは嬉しいよ。でも…あの後、千佳は一度でも俺を裏切った事が有るの?」

「ない、ない、絶対にない。雄二だけ、雄二だけなの」


 何も身に着けないままに俺に抱き着いて来た。俺はゆっくりと彼女の頭をなでながら

「千佳、…作ろうか」

「うん」

 泣きながら返事をした。



………………


 俺はいつもより優しく彼女の体を触りながら、準備が出来るのを待ってゆっくりと彼女の中に入った。


 雄二の、雄二のが入って来る。いつもと全然違う。とても熱い。私の体の中に雄二の…。

 

 千佳の乱れ方がいつもより激しかった。何度も何度も行った。


 一回だけなのにとても疲れた。俺の横で彼女が目を閉じている。あの事でこの時まで悩んでいたなんて。早く言ってくれても良かったのに。


 千佳、愛しているよ。


 千佳が目を覚ました後もう一度した。今度も彼女は激しく乱れた。付けないとこんなに違うのかな?



 翌朝、目を覚ますと横に千佳がいなかった。あれっと思いながらベッドから起きて一階に降りると千佳が抱き着いて来た。そしていつもの様に朝の口付けをすると


「雄二、おはよう。もう支度出来たからね」

「えっ?!」

「もう午前七時だよ。早く出かけよう」

「えっ、でもまだ着替えも朝食も」

「ふふ、おにぎり作ってある。途中のSAかPAで食べよ。でもそこまでもたないから一個だけ食べようか」

「ああ」

 いつもあれした翌朝はとても可愛い笑顔だけど、今日の笑顔は飛び切りだ。


 俺も急いで支度して、おにぎりを一個食べると、スーツケースを持ってレンタカー屋さんに行って車を借りた。今回は二千CCのPHEVだ。もう若葉マークは要らない。



 環七を走って練間インターから関越道に入った。仕事で車を運転する事も有ったので少しは慣れている。


「雄二、初めての時より乗っていて安心感がある」

「あれから一年が経つからな」



 途中のSAに寄って、千佳が作ってくれたシャケおにぎりを食べてゆっくりした。

「雄二、コーヒー買って来る」

「あっ、俺も行くよ」


 千佳は結婚してから一段と綺麗になった。SAだから何も無いと思うけどやっぱり不安。だから付いて行く事にした。



 自販機で二人でコーヒーを買っていると後ろから

「あの、テレビとか出ています?」

「えっ?」

「出て無いですけど」

「芸能人ですよね?」

「いえ、違います」


 何故か俺達の傍に女の人や男の人が一杯いた。

「じゃあ、モデルさん。サイン貰えます?」

「え、えーとぉ」

「あなた達、私の夫は弁護士よ。そして私は警視庁の警部よ。いい加減にしない」

「ひっ!」


「千佳、そこまで言わなくても」

「だってぇ」

「そういう訳で一般人だから。ごめんね」


 何か言っている人達を横目にその場を離れると

「もう、雄二は優しすぎるの。もっと女性にはビシッと言って」

 

 千佳が真面目な顔をすると綺麗さが際立つ。俺は顔をジッと見て

「千佳、綺麗だよ」

「ばか」

「あっち」

「あ、ごめんなさい」

 カップの中のコーヒーが俺の手の甲にはねた。直ぐに千佳がハンカチで拭きとってくれた。


「あそこのベンチで飲んでから行こうか」

「うん」



 その後は何も起こらず、無事に渋川インターで降りて伊香保に着いた。まだ、午前十一時だ。結構近い。

「雄二。車、パーキングに置いて、散歩しよう。チェックイン午後三時だから」

「そうだな」


 俺達は有名な階段をお土産物屋を見ながらゆっくりと登って、降りて来る途中で有名なうどんも食べた。腰がしっかりとしているけど、独特の柔らかさと味がある。とても美味しかった。


 その後は、ロープウエイで山の上に行って景色を見たりしてホテルに入った。

「うわーっ、素敵なホテル」


 エントランスの窓から見える山々の景色が素敵だ。受付に行くと

「一条様、お待ちしておりました。こちらに代表者のお名前と人数をお書きください」


 記入した後、カードを渡してチェックインを済ませると

「精算はお帰りの時になります。ご予約の家族風呂は午後四時からお入りになれます」

「分かりました」


 そう言うと仲居さんが来て

「お部屋にご案内します」

 と言って俺達を部屋に案内してくれた。



 とても綺麗で大きな和室だった。

「お食事は何時に致しましょう?」

「午後六時でお願いします」

「畏まりました」



 仲居さんが出て行くと

「雄二、今日も明日も一杯しようね。昨日だけじゃ足らないかも知れないから」

「そ、そうだな」

 千佳の目がハートになっている様な。



 家族風呂は半露天の素敵な岩風呂で二人でゆっくりと入った。体を洗って湯船の中で抱き合っていると

「雄二、する?」

「い、いやここでは。声も丸聞こえだし」

「ふふ、声出さないから」

「で、でも止めておこうよ」

「雄二のケチ」


 なんで俺がケチなんだ。



 お家族風呂から上がりビールを一本開けてのんびりしていると仲居さんが和卓一杯に料理を並べてくれた。

「こ、これ。二人分ですか?」

「はい、お二人分です。お食事が終わりましたら、あちらの電話でお知らせください」

「分かりました」

「雄二、凄い量だね」

「ああ」


 夕食でお腹一杯になった。食事も終わり、仲居さんがお布団を敷いてくれた。そして出て行くと


「雄二」

 千佳が着ていた浴衣の紐を解いた。素敵な姿が現れた。



………………


 違う、全然違う。雄二の熱いものが私の体の中に入って来るのが分かる。凄い、凄いー。


 今日も千佳の乱れ方は凄かった。何度も何度も激しく求めてくる。流石に疲れて


「千佳、少し休もう」

「うん、私もちょっと休む」



 朝、目が覚めた。まだ午前五時だ。昨日寝るのが早かったかな。雄二と思い切りしたから。

 雄二寝ている。触っちゃお。あっ、雄二の目が開いた。

「千佳?」

「ふふっ、朝もね」


 結局、朝一回戦が終わって、二人で別々に温泉に入って朝食を摂った。その後は、榛名湖に行ったり、山の上までロープウエイで上がったりと楽しんだ。

 午後からはヤギやヒツジのショーも見に行った。


 そして夜は昨日に負けない位、雄二から思い切り貰った。これで大丈夫かな。



 俺は帰る朝、少し腰と足に来ている気がしたが気の所為だろうか。帰り道は千佳がルンルンしていた。来て良かったようだ。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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