第51話 加奈子のその後と青山の事情
加奈子の所だけ少し時間が戻ります。
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私、深山加奈子。大学で小学校の先生になる為の小学校教員養成課程を選択した。そして小学校教諭一種を取得した。
四年の時、地元の小学校、私が卒業した小学校で教育実習も行った。そして地元の区の教員採用試験を受け合格した。
だけど日勤講師は非常勤のみしか空いておらず、仕方なくその小学校で仕事をする事になった。非常勤と言っても週四日は出るし、色々な資料作成も大変だ。でも充実している。
私は、毎日家から通っているが、大学卒業した頃から、雄二の家に一条千佳さんが毎日いる様になった。
外で偶に見かけても仲睦まじい。前に大学卒業したら友達になってくれると言っていたけど、もう友達になる事も無理だなと感じる。でも近所で知合いだからと挨拶できる位になりたい。
そんな思いをしている時、外と言うか家の前で雄二と一条さんとばったり会った。
私はジッと雄二と一条さんの顔を見た後、雄二が一条さんと繋いでいる手の薬指に指輪が光っているのが見えた。
一条さんの左手薬指にも同じ指輪が光っている。
「加奈子、久しぶりだな」
「うん。雄二も」
「あなた、もしかして深山加奈子さん?」
「はい。こんにちは一条さん。お二人は結婚したんですか?」
「そうよ」
「お二人共おめでとうございます」
「加奈子、今、どうしているんだ?」
「大学で小学校の教員免許とって、二つ隣町の小学校で非常勤講師している」
「そうかぁ、良かったぁ。おめでとう」
「うん、ありがとう。あの雄二…」
「ねえ、人の夫を下の名前で呼ばないでくれる。今は私と同じ姓の一条雄二なの」
「えっ、ほんとにゆう、いや一条さん」
「ああ、でも千佳と一緒の時はどっちか分からないから雄二でいいよ」
「ありがとう。あっ、もう行くね。急いでいるから」
「ああ」
本当は急いで行く所なんかない。駅前のスーパーに買い物行くだけだ。でもあの二人の前であれ以上平常心を装う事は出来なかった。
雄二、友達に戻れるんだよね。なんて奥様の前で言ったらどうなるか想像出来なかったからだ。そして分かった事はもう友達にも戻れないって事。
大学で真面目に勉強して小学校の教員になって雄二と友達に戻れれば、その先もあるかも知れないという私の夢は妄想でしかなかった。道を歩きながら涙が出そうで堪らない。我慢しないと。
俺は加奈子が、急いでいるからと言って走り出す前に言いたかった言葉を知っていた。
友達に戻れるんだよねと加奈子の顔は言っていた。
でも千佳がそれを拒否した。明確にはしていないが、あの時の千佳の態度からはそう読み取れる。仕方ない。俺はもう結婚しているんだ。
加奈子が男なら名前呼びも良いだろうが女性である限り千佳は許さないだろう。今度加奈子と二人で会った時、その辺は説明してあげないとな。でも加奈子が小学校教員か、あいつがんばったな。
「私嫌よ。雄二は私の夫なんだから。例え隣近所でも他の女から名前呼びは許さない」
「分かっている」
「ほんと?じゃあ、家に帰ったら証明してね」
「あ、ああ」
俺、青山祐樹。地元茨城県で起きた贈収賄事件のお陰で一条千佳とまた近付く事が出来た。こういう事件は時間がかかる。その間にはいくらでもチャンスがあるだろう。
「祐樹、何考えているの?」
「仕事の事だ」
「私といる時は私の事だけ考えて」
「当たり前だよ」
ベッドの上で俺の横に居るのは、高校から付き合い始め、大学が受かった後、地元から一緒に出て来た女、大頭美代(おおがしらみよ)だ。
身長は低いが、腰まで有る艶やかな髪の毛。少し丸顔だがぱっちりと大きな目、すっとした鼻にちょっとえくぼがある。胸は大きくないが、お尻が大きい、世間から見れば間違いなく美人の部類だ。
高校時代に知り合って、俺から告白した。それ以来の仲だ。
同じ帝都大には行けなかったが私立の有名な丸山大学では英文学を優秀な成績で卒業している。
俺が大学校時代は土日だけ会っていたが、現場研修になってからは一月に一度位しか会えなかった。
だが、地元茨城の県警に配属になってからは、毎日の様に俺のアパートにやって来る。
こいつの親は地元で大手の建築会社を経営している。本当は、この会社に入るつもりで居たが、一条千佳の事を知ってからは方向転換をした。
一条千佳と上手く行けば、こいつを捨てて乗り換えればいい。もし上手く行かなければ、こいつと結婚すればいい。
俺の親は、普通のサラリーマン夫婦だ。だから、俺が帝都大に入った時は近所からトンビが鷹を産んだと揶揄されたものだ。
そして俺が警察官僚になっと知ると、さすが青山さんの息子さんだに変わりやがった。人間なって所詮そんなもの。目の前の人間が自分より下だと勝手に決めつければ上目目線で来るし、自分より上だと分かれば媚を売る。
だから、俺は地元の建築会社よりエリート警察官僚一家の一条千佳を選んだ。人にものを言われる筋合いはない。
「祐樹、また何か考えている」
「ごめん、美代」
そう言って、俺は彼女に口付けした。これだけでも彼女は夢中になる。
「ねえ、そろそろ先の事も考えたい。両親もどうなっていると聞いて来る」
「分かっている。だけど今の事件の決着が見えないと落ち着かない。もう少し待ってくれ」
「分かっている。ねえ、安心させて」
「分かった」
彼、祐樹に高校時代に告白されてからもう六年が経つ。最初は大学を出たらお父さんの会社に入社する予定だったが、大学で勉強している内に国の為に尽くしたいと警察官僚を目指した。
勉強が忙しくて、何か月も会えない時が有ったけど、その間は同じ大学の素敵な友達と時間を潰す事が出来た。
でもその人は、何が理由か分からないが、親から言われた、もう会えないと言って関係を絶ち切られた。
別に遊びだったので構わないけど、とても中途半端な気持ちがした。だけど、今はこうして毎日の様に会って抱いてくれる。
彼の横顔を見ていると本当にこの人で良かったと思っている。茨城県警に配属されてからはずっと一緒に居る。
もう離れる事も無い。両親も彼の事を気に入っていて結婚しろと言っている。早く今の仕事に区切りをつけて欲しい。
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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