第41話 千代子のその後
千代子が入学してから少し経った時点位戻ります。
―――――
私、高原千代子。隆と付き合う様になってから大学に来るのが楽しくなった。授業はしっかり受けるけど、空いているコマがある時は、隆と会っている。
でも、隆ももう四年次の所為か大学に来る日がとても少ない。土日は一緒だけど、やはりつまらない。
そんな時だった。私が学食で昼食を食べた後、本を読んでいると
「ここ良いかな」
誰?と思って、本から目を離し、声の方に向くと、えっ?とってもかっこいいというか、言葉で上手く表せないようなイケメンが、声を掛けて来た。
私は、直ぐに顔が赤くなったのが分かった。
「え、ええ。いいですよ」
「昼食は終わったんですか?」
「はい、さっき」
「じゃあ、少し話せますね」
「あっ、はい」
「高原さんですよね。授業でよく見かけるので」
「なんで、私の名前を?」
「授業の時、他の女子学生が君の事そう呼んでいたから。俺、四限で終わるんだ。君は今日は何限まで?」
「私も四限までです」
「そう、良かった。授業終わったら食事でもしない。二人で」
「えっ、でも。初めてだし。あなたの事誰かも知らないので」
「あっ、ごめん。名前も言ってなかったね。俺は榊原悠馬(さかきばらゆうま)。英文の一年。出来れば君と友達になりたくて」
「で、でも」
私は隆がいるし。でもこの人、隆よりかっこいい。背も高い。友達って言うからいいか。
「友達になれない理由。何か有るのかな?」
「い、いえ。はい友達なら」
先輩の言う通り、結構チョロいな。まあ急がずに。
私は、その日の夜、夕食に誘われた。当然下心有るんだろうと思っていると、この人は、あっちの素振りは全く見せずに
「高原さん、明日からの授業、時間合えば、一緒に受けませんか?」
「ええ、嬉しいです」
私は、次の日から榊原君と時間の合う授業は一緒に受ける様にした。彼は女子からとても人気があり、私が横に座っているのを羨ましそうに見ている。ちょっと優越感に浸っている感じ。
でも隆といい、榊原君といい、こんなにイケメンから声を掛けられるとは思わなかった。ふふっ、楽しい学生生活が送れそうだ。
授業が終わり、榊原君は用事が有るというので、構内を歩いているとスマホが震えた。隆からだ。
『隆、私』
『千代子。今大学に居るんだ。会えないか?』
『うん、もちろん大丈夫。何処に行けばいい』
『じゃあ、門の所で待っていて。直ぐに行くから』
『うん』
その日は、隆が夕飯をご馳走してくれて、あっちも思い切りした。嬉しい。
七月に入ってから
「高原さん、もうすぐ試験だけど、一緒に勉強しない?」
榊原君とは一緒に授業を受けたりお昼を一緒に食べたり、偶に夕飯をご馳走してくれているから、抵抗も無く
「はい、一緒にしましょうか。でも何処でします?」
「週中は図書室か学食の隅で」
「週末は俺の所に来ない。俺一人暮らしなんだ」
「えっ!でも」
流石にそれは控えたい。
「じゃあ、高原さんの家」
「私も一人暮らしなの」
「じゃあ、止める?」
「えっ、それも残念だよ。榊原君の家に行っても本当に勉強だけだよね?」
私のアパートは遠いし、ぼろいから来させられない。
「何を考えているのか知らないけど、勉強だけ」
それから週中は学食の隅や図書室で時間が合えば一緒に勉強した。その週末に榊原君の所に行ったのだけど
「こ、ここ榊原君一人で住んでいるの?」
「うん、親が大学入学と同時に買ってくれたんだ」
凄い、都心一等地の高級タワーマンション。いくらするのか想像もつかない。
「リビングでしようか」
「あっ、うん」
万一があると思って用心していたけど、彼はそんな気は全くなく、土日一緒に勉強しただけだった。少しだけがっかり。
試験も終わった日、
「高原さん、試験終わったし、打ち上げしようか?」
「うん!」
流石に何回も夕食を一緒に食べているので、今日はいいかなと思って少しだけお酒を飲んだ。彼も飲んでいる。本当はいけないんだけど。
「ねえ、高原さん。試験も終わったし、俺達、こうして友達になってから二か月経つよね。そろそろ次のステップに行かない?」
単にあれを期待しているなら断っていたけど、
「それって、告白?」
「まあ、そう受け取っても良いよ」
「で、でも」
隆の事をどうすればいいんだろう。あいつは洋服も買ってくれるし、美味しい食事にも誘ってくれる。手放すには惜しい。
「もし高原さんが、今誰かと付き合っているなら、二番目でもいいよ」
「えっ?!それって」
「そういう意味。重きは今の彼氏でいい。俺は次で良いから」
こんなイケメンお金持ちも手放す訳には行かない。
「分かった」
それから私達は、ラブホに行った。部屋に入ると積極的だった。洋服をあっという間に脱がされて、ベッドの上に寝かされた。後はされるままに大きな声を出してしまった。
洋服の上からも想像ついたけど、出ている所はしっかりと出ているし、今の彼氏がいるせいか、直ぐに感じる。二年位、セフレにして別れればいいか。
高原さん、君は三番目だよ。でもこの子良く感じるな。直ぐに行ってしまう。
夏休みは、隆と榊原君、今は悠馬と呼んでいるけど、二人と交互に遊んだ。実家が夏休み位帰ってこいと言っているけど、この二人のお陰でバイトしなくて済んでいるんだから。
そして授業も後期に入って悠馬と一緒に校内を歩いていると
「あっ!」
目の前から隆が歩いて来た。
「千代子、そいつ誰だ?手なんか組んで、どういう事だよ」
知っていたけど。
「あの、こ、これは」
「千代子、誰この人。君を名前呼びしたよね。あっ、もしかして元カレ?」
「えっ?!」
「だって、今は俺と付き合っているだろう」
「えっ、でも」
悠馬は二番目で良いって言ってくれていたのに。
「ち、寝取られたんかよ。最低だな。このくそ女。こっちからお断りだ。じゃあな」
ふふっ、これで千代子と上手く別れる事が出来た。俺にはもう新しい女が居るからお払い箱だ。でも榊原も上手くやってくれたな。ありがとよ。
隆が過ぎ去って行ってしまった。私は気まずくて下を向いていると
「千代子、俺が居るから」
「う、うん」
良かった。悠馬は私の恋人。
それから一年後、夏休み。悠馬は色々忙しいと言って会ってくれていない。八月も終りの頃、体調がおかしくなった。食べ物の匂いで吐き気がする。
もしかしてと思ってドラッグストアで妊娠検査薬を買って確かめると
+プラス
そんなぁ。二か月前に悠馬が付けないでしたいと言って二回位つけないでした。生理も終わったばかりだから大丈夫と思っていたのに。
急いで悠馬に連絡すると、出ない。なんで?チャットメールもブロックされている。まさか!
私は自分のアパートの一室で途方に暮れてしまった。頼るのは親だけ。仕方なく実家に帰ると、両親から思い切り怒られた。特にお母さんは私に裏切られたと言って泣き崩れた。
お父さんは、私の頬を何回も叩いて
「馬鹿野郎。おまえが東京で一生懸命勉強しているからと思って、父さんも副業して、母さんも仕事に出ていたんだぞ。どういうつもりだ。出ていけ」
「やだ、行くところがない」
「千代子、誰なんだ相手は?」
「榊原悠馬。私と同じ大学で同じ英文。でも連絡が取れない」
「くそっ、どうすんだよ。お腹の子は?」
「産めない」
「畜生、しょうがねえ。あの時、やられた前田って弁護士に頼るか」
でも、前田弁護士は電話の向こうで
『二人共完全に同意の上でした事です。私には何も出来ません』
と言って断られた。両親は仕方なしにお腹の子を堕胎させると、
「どうすんだ。大学は?」
「続けたい」
「また同じ事になるんだろ?」
「絶対に、絶対に、もうしない。勉強を一生懸命するから、お願い。通わせて。お父さん、お母さん」
私は、畳に思い切りおでこを擦りながらお願いした。
両親は、私に大学に戻る事を許してくれた。良かった。もう男なんて作らない。英文学で食べれる様になるんだ。
それからは真面目に勉強に取り組んだ。何故か榊原悠馬とは、一度も会っていない。どうしてかは分からない。
一年後、もう三年次も終わる頃、声を掛けられた。
「君、可愛いね」
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます