第40話 青空なのに雨が降っている

 

 俺と千佳は大学の卒業式の会場に行くと、入口で竜馬と髪の毛の長いとても可愛い女性が立っていた。


「雄二」

「竜馬、久しぶりだな」

「ああ、早速だけど紹介する。俺の彼女の早乙女理央(さおとめりお)さん」

「初めまして、高槻雄二さん。早乙女理央と申します。そちらが一条千佳さんですよね。お二人のお噂は竜馬から一杯聞いています。一、二年の時は随分彼がお世話になりました。本当に美男美女の言葉がぴったりですね」


 竜馬、尻に敷かれているのか?


「いい噂だと良いんですが」

「雄二、法科大学院に行くんだってな。噂で聞いたぜ。流石だな。頭の優秀さは高校時代からずば抜けていたからな」

「あはは」

「そう言えば、二人共。大学卒業したら籍入れるんだろう。おめでとう雄二、一条さん」

「ありがとうございます。坂口さん」


「えっ、本当に。羨ましいなぁ。美男美女で夫は法科大学院、妻は警察官僚か。なんか住む世界が違うな」


「あっ、開場だ。中に入ろう」


 卒業式が終わった後も竜馬と早乙女さん、俺と千佳は、三十分位話をして別れた。竜馬は、早乙女さんの父が経営する会社に二人で入るそうだ。そっちの方が凄いよ。


「雄二、私の家に戻ろう。家族が首を長くして待っているわ」

「うん」



 その日は、千佳のご両親と祖父母が千佳と俺の帝都大学卒業を祝ってくれた。

「雄二君、千佳。帝都大学卒業おめでとう」

「「「「「「かんぱーい」」」」」」


「ほほほっ、これで我が一条家も安泰じゃ。雄二君は法科大学院に行くが、卒業して弁護士になる。千佳は警察官僚になる。最初は警部補からか。本当にめでたいのう」


「お爺ちゃん。明日二人で区役所に婚姻届け出してくる」

「おおう。それもじゃ。これは曾孫を見るまでは元気でいないとのう」

「あの、それはまだ先で」

「なに、曾孫が出来ても、家で儂たちが見ている。二人は外で精一杯仕事すればいい」


 話が先に行きすぎている。今日はいいか。


「雄二君、合格も決まった。もう解禁していいだろう。母さんコップをもう一つ」

「はいはい」

「儂のも頼む」


 俺は、過去の経験?から今日はセーブして飲んだ。飲むと口が軽くなるというが

「千佳、明後日にでも前田弁護士に俺と一緒に会ってくれ。この前言っていた事説明するから」

「うん」

「千佳良かったな。雄二君、娘の事宜しく頼みます」

「はい」


 雄二君の事は、娘が付き合い始めた時に調べた。総資産二十億の資産家だ。でもこの歳でそんな素振りは全く見せず、華美に走らず倹約と勉強に精進して将来は弁護士になろうとしている。

 見上げたものだ。千佳は男を見る目があるようだな。



「お父さん、お母さん。明日入籍したら、雄二の家に引越す事にするから」

「千佳、良いよ。体一つで来てくれれば。いずれここに戻るんだし」

「でも、色々といるよ」

「全部僕が揃えてあげる」

「えっ?」


「良かったな。千佳」



 その日は、失礼ながら、千佳の家に泊った。やはり経験値が低かったようだ。次の日、朝早く、俺達は区役所に婚姻届けを出した。


 そして俺と千佳は正式に夫婦になった。俺の性は一条に変わり。一条雄二になった。うん、悪くない。

 その足で結婚指輪も買いに行った。名前を入れるとかするので指に着けれたのはそれから一週間後だけど。


 次の日は、前田弁護士と会った。千佳は前田さんから俺の資産や管理について説明を聞くと目を丸くしていた。


 この日を境に資産管理を前田さんから俺に代えた。法科大学院入学までまだ時間ある。千佳もまだ警察官僚になるまで時間がある。

 この時間を使って、色々な資産の移管手続きをした。前田さんからも教えて貰ったけど、大変な数だ。


 最後に、家族の眠っているお寺のお坊様に俺が正式に墓を継ぐ事も伝えた。性は一条に代わるけど墓は俺と子供が代々守って行くと言うと大そう喜んでくれた。

 そして俺と千佳は家族の墓に行って綺麗に掃除してからお花を取り換えて線香を上げた。


 お父さん、お母さん、沙耶、お爺ちゃんお婆ちゃん達。俺は正式にここに居る一条千佳さんと結婚した。

 後、先に謝っておく。俺は一条の性になった。千佳の家の婿養子になる。でも墓はずっと守って行くから。俺が死んでも子供達に守らせるから。だからそっちで見ていてね。月命日には必ず来るよ。



 雄二が、長い時間手を合わせている。報告する事が一杯有るんだろうな。


「千佳」

「うん」


 雄二のお父様、お母様、沙耶さん、そしてお爺ちゃん、お婆ちゃん達。雄二君と結婚しました一条千佳です。

 彼を一生支えて行きます。どうぞ宜しくお願いします。



 ガタ!


「えっ?!」

「あれ、おかしいな。花瓶が倒れる訳無いのに。しっかり入れておかないと」


 私は、前回の突風といい、今の事といい、雄二のご家族は私のした事を知っているのだろうか。


 もう一度手を合わせた。

「千佳?」


 雄二のご家族様、私の過去の過ち、一生を持って償います。どうか、どうか。見ていて下さい。


 今度は何も起きなかった。



「千佳、どうしたの?二回も手を合わせるなんて」

「ううん、しっかりとご報告させて貰ったの」

「そうか」


 俺の家族も喜んでいてくれるかな。



「千佳、学校始まるまで後、一週間ある。その間に千佳の新しい洋服や家庭で必要な物を揃えよう」

「うん、ありがとう雄二」


 見上げると良く晴れていた空が曇り始め、霧雨よりも弱い雨が降り始めていた。早く帰るか。



 俺達の家の最寄り駅にあるスーパーで一週間分の買い物をした。俺が一人の時と違い、もうレトルトやカップ麺は無い。その代わりお肉や野菜、魚などを沢山買った。



「雄二の家の冷蔵庫は大きいから、二人の一週間分は楽に入るから助かるわ」

「まあ、最初は四人用だったからね」

「ふふっ、私達しっかり作らないとね」

「そ、そだね」


 俺はこれから千佳に…。


 この日の夜も千佳は激しかった。流石若くして警部補だ?


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る