第34話 大学には入学したけれど

 

 大学にはいつも二人で行っている。初年度つまり一年次は基礎教育だけだ。聞いていてもこれといって難しさは感じられない。高校の勉強を発展したもの位な感じだ。


 俺を真ん中に左に千佳、右に竜馬って感じで講義を聞いている。竜馬とは完全に取っているコマが一致している訳ではないので、会った時そんな感じだ。


 竜馬がいる時は、何も気にしなくていいのだが…。いない時は千佳と二人で座っていると

「あの、ここ空いています?」

「ええ空いているけど」

「座っていいですか?」

「どうぞ」

 千佳がジッとその子を見ている。


 その内、前や後ろ斜めなんかも女子学生で埋まれて行く。講義途中でもチラチラと俺の顔を見てくる。とても気になる。そして終わると


「次は何を受けるんですか?」

 となる。いやあ、履修登録しているんだからそれ聞いても意味ないと思うんだけど?



 そんな状況に千佳は

「雄二、次のコマ空いているからカフェ行こ」


 なんかわざとらしく彼女モードを出しているのだが…。本当は二限も取っているんだけどなんであんな事言うんだ。


「あの、コマ空いているならお話しませんか。少しでもいいので」

「あのね。彼は私の彼なの。だから口聞かないで」

「えっ!」


 スゴスゴ教室を出て行く姿に

「千佳」

「だってぇ。雄二の彼女は私だってはっきり言わないとまた話しかけると思って」

「それは分かるけど…」



 という時も有れば、たまたま俺がトイレに行っている間、千佳を待たしていると


「ねえ、君とても綺麗だね。今同じ講義受けていたよね。少し話できないかな」

「結構です。人を待っています」

「でも、その人まだ来ないんでしょう。少し位いいじゃないか。カフェに行こうよ」


 俺が、戻って来ると

「あっ、雄二」

「えっ、知り合い?」

「いいえ、婚約者です!」


 と言って千佳が婚約指輪を見せると、本当かという顔で俺の左薬指を見て同じ物だと分かるとスゴスゴと千佳の傍を離れて行く。




お昼になりいつも混んでいる学食に行きながら


「千佳はもてるなぁ」

「何言っているの。雄二の方こそ。毎日、毎日、女子に声を掛けられているじゃない」

「それは…」


 確かに千佳の言う通りだ。まさかこれほど声を掛けられるとは思わなかった。俺はあまり千佳との婚約を大っぴらに言うと要らぬ誤解、噂を立てられかねないと思い、なるべく婚約の事は言わずに断っているのだが、何故か千佳は断る時必ず婚約の事を言う。気持ちは分かるけど。



「雄二、五月祭行く?」

「うーん、あっちのキャンパスは行っていないし、先輩達の成果というのも見て見たいし。千佳は行きたくないの?」

「本当は行きたいんだけど、雄二の事が心配で」

「……………」


 何も言えない。確かに毎日あれでは、千佳が心配するのも分かるけど…。



「今は千佳が傍に居てくれるけど、元々は陰キャだよ。今だって陽キャには程遠いし。なんであんなに女子が寄って来るのか分からない」

「雄二、また悪い所が出た。それって周りの男子を馬鹿にしているように思われるよ。雄二はもっと自分を自覚しなさい。

 美容室の時だってそうだし、街を歩けばスカウトに声を掛けられるし、講義で教室に座れば女子が集まって来る。

 これでも自分が陰キャでもてないなって思っているの!私だって雄二に会うまでは男なんて興味も無かったのよ!雄二は特別なの」


「分かったよ。そんなに怒んないでくれよ。俺は千佳はともかく、そっちには興味無いんだ」

「それは分かるけど」


 本当に雄二は恋愛というより異性に興味が無い様だ。私だってあんなにアプローチしてやっと恋人になれた。


 その間も女の子からどれだけ声を掛けられたのか。でも全く興味を示さない。中には私より容姿がいいと思う人もいたけど。

 やっぱり、この人の心の底にあるあれが、そういう事に興味を持たせないんだろうか。



「千佳が嫌ならいいよ、あっちのキャンパスには三年から行くし」

「そうね、ちょっとだけ見ようか。雄二の気持ち優先。でもいつもの事になりそうだったら直ぐに退却ね」

「そうしようか」

「でもその前に、じゃ、じゃーん。GWが有ります。何しようか?」

「ごめん、そっちの知識カラ」


「ふふっ、そう言うと思った。雄二、勉強が趣味だものね」

「それほどでもないけど」

 やっぱり自分の事分かっていない。


 目の前に迫ったGW。本当はもっと早く準備しないと宿なんて取れない。両親は二人で行く事に反対はしないだろうけど、宿が無い事にはどうしようもない。


「雄二、二人で考えよ。まず山か平野か海か湖か、どこがいい?」

「凄く選択肢有るね。天気次第だけど…。そうだな。まず電車とバスで行ける所。俺運転免許無いし」

「私も無いからそうするとそれなりに限定されるね。でも何処が良いかな。昼食の時また考えようか」

「そうしよう」



 今日は四限で終わりだ。家で復習と予習をするので週中は大学が終わると千佳を家まで送ってから俺は自分の家に戻る。



 そう言えば、大学に入学して少し経った時、千佳の両親から金曜日の夜、用事が入ってなければ一緒に食事しないかと言われた。もちろんその時間は千佳のお父さんは居ないのだけど。


 俺は、まだそういう事には精神的に抵抗が有ったので、大学生活が慣れて来てからという事にして貰った。


 千佳は少し残念そうだったけど。俺の気持ちの中は、まだ俺の家族はあの家にいると思っているからだ。


 しかし、GWか。去年までは考えた事も無かった。どうしようかな。一人になってから俺の頭に遊びとか全く知識無いからな。

 千佳と過ごすうちに少しは知識として溜まると良いんだけど。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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宜しくお願いします。

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