第27話 共通テストまでもうすぐ

 

 二日に親戚の人達が来たが、それからは何もなかった。冬休みが終わる日曜日まで、俺の家で千佳と一緒に勉強した。


 彼女は午前八時には来て朝食を作り俺と一緒に自分も食べて、午前九時から午前十一時半まで勉強した後、また昼食を作ってくれる。


 そして午後一時から午後三時まで勉強して、三十分休憩して、午後五時半まで勉強という毎日を過ごした。


 俺にとっては、申し訳ない気持ちで一杯だが、彼女は自分がしたいから、していると言って楽しそうに食事の用意をしていた。


 一日だけ午前中の勉強を短くして掃除をする事にした。家族の部屋と自分の部屋は俺が掃除して、彼女はリビング、ダイニング、キッチンそれに玄関だ。洗濯は勿論俺がしているけど。


「雄二、いつもこれ一人で掃除しているの?」

「一度に全部はしない。毎週毎に掃除するところを決めてしている」

「そうだよね。こんなに広い家、ひとりで掃除は大変…。あっ、私が来たら毎週全部掃除してあげる」

「あの、それはまあ不確定な要素が一杯で」

「私は確定要素しかないけど」


 はぁ、千佳の中では益々距離感が縮まっているよ。



 その後は、彼女も来週末が共通テストという事もあり、変なスキンシップは無かった。でも朝来た時と帰る時は口付けをした。


 何となく、本当に世にいう通い妻とはこんな感じなのかなと思ってしまう。



 そんな冬休みも終わり、月曜日に登校した。勿論、駅で千佳と待合わせしての登校だ。

「おはよう雄二」

「おはよ千佳」


「いよいよ今週末だね。共通テスト」

「ああ、まずは第一関門だ。頑張ろう」

「うん」



 学校に着いて教室に入ると流石に皆からカリカリという音が聞こえる。加奈子も真面目というか必死の雰囲気が出ていた。

 全然関係ない無いのに何故かあいつが気になるのは、やっぱり俺がお人好しなのだろうか?



「雄二、一条さん、おはよ」

「おはよ、竜馬」

「おはようございます。坂口さん」

「しかし、益々熱々だな」

「ふふふっ」


「えっ、もしかして雄二?」

「千佳、竜馬が誤解するだろう」

「雄二まだなのか?冬休み有っただろう」

「竜馬、俺達は受験生だ。勉強しかしなかったよ」

「本当かよ。信じられない」

「そう、雄二の家でね」


 終わった。千佳、完全に頭の中がバラ色モードだ。千佳が自分の席に行くと仲の良い友達に囲まれて質問攻めに有っている。顔が少し赤くなっているのは気のせいか。


 チラッと加奈子を見ると一生懸命机に向かって勉強している。何故か心の中で頑張れよという思いが出てくるのは、やはり近所の思いからだろうか。


 予鈴が鳴って担任が入って来た。




 始業式が終わり、教室に帰ってくると二限だけ授業が有った後、帰宅となった。直ぐに千佳が俺の傍に来ると

「雄二、お昼は作るから一緒にね」


 竜馬が俺を見ながら

「雄二、結婚式は呼んでくれよ」

「あのなぁ…」

「ふふふっ、坂口君。勿論よ」


―聞いた。

―うんうん。

―羨ましいな。私なんて。

―大学行けば出会いはもっとあるから。

―そだね。


 訳の分からない事を言っている女子を無視して千佳の手を引くと


―確定ね。

―もうっチャンス無いよね。

―そうね。胸の大きさも違うし。

―うるさい。ボカッ!

―グエッ。


 

 女子達の冗談を無視して千佳の手を引いたまま下駄箱に来ると


「千佳、大学入学前に思いばかり走ると仕損じるよ。もっと気を引き締めないと」

「分かっているけど。雄二が頑固だから」


 俺が頑固?何処が?



 そんな意味の分からない会話をしながら俺の家に帰ると千佳が思い切り口付けをして来た。もう習慣化している。


 口付けをしていると千佳の背中に手を回して、偶に彼女のお尻に手が行ってしまう事がある。触るととても柔らかい。でもと思ってお尻から手を離すと

「雄二、いいのよ、いつでも。私だって…」


 彼女が俺の二番目に手を持って行った。

「ほらここは正直だよ」

「千佳。駄目。今までの努力が無駄になる。とにかくもうすぐだ」

「雄二のケチ」


 なんで俺がケチなんだ?



 二人で口付けだけを楽しんだ後、今日は俺の冷凍チャーハンに付き合って貰う事にした。今から昼ご飯作るのは時間がかかる。



 勉強は塾から貰った過去問題を解いている。問題量がとても多く感じる。得意な科目は時間が気にならないが、苦手とは言わないが、あまり得意でない部分は問題毎の時間配分を考えないととんでもなく点数を落とす事も分かった。


一日一教科複数科目という感じで千佳と一緒に勉強している。お互いに分からない事は教え合った。


 こんな感じであっという間に週末を迎えた。俺と千佳は運よく共通テスト会場が一緒だった。加奈子も同じだ。


 会場に入って自分の番号の席に着くと、周りは必死に参考書や問題集にまさにかじりついてた。みんな必死だ。



 

 そして二日間の共通テストが終わった。問題は全部解いたし、つかえた問題も無かった。テストが終わると千佳が俺の所に寄って来て、

「ねえ、今日だけは勉強休もう」

「そうだな」

「じゃあ、帰りにパフェ食べない。頭使うと甘い物欲しいって言うし」

「いいね」

「うん、行こう」



 私、深山加奈子。共通テスト二日間は苦痛でしかなかった。全部解答したけど、終わらせただけって感じで全く解答に自信ない。私学文系希望だけど、これではいける大学が相当絞られそうだ。


 今、目の前を雄二と一条さんが楽しそうに話ながら教室を出て行った。あの二人の幸せそうな顔を見ると、今更ながら自分が犯した罪の愚かさに気持ちが落ち込む。

 


 

 俺と千佳は、学校から二つ隣駅のこの辺では一番賑やかな街にあるパフェ屋さんに入った。入るのに少し並んだけど。

 窓から見える通りと街路樹がとても綺麗だ。



「雄二、どうだった?」

「まあまあかな。明日学校で答え合わせだからそれで正答率と大体の偏差値が分かる」

「自信たっぷりね。私も出来たと思っているけど、雄二みたいな自信は持てないな」

「そんなことないよ。千佳は充分優秀じゃないか」

「雄二に言われてもね」


 そう言いながら、パフェを半分こしながら食べている。偶にあーんとかするけど流石に恥ずかしい。


「雄二、まだ家に帰るのに時間有るね」

「まあな」


 千佳がジッと俺の顔を見ている。

「ねえ、共通テストも終わったし、ねっ、いいでしょ」

「志望校合格が決まったら」

「もう、雄二のケチ」


 なんで俺がケチなんだ?


「じゃあ、今から雄二の家に行って、ちょっとだけ。ねっ、ちょっとだけ」


 嫌な予感しかしない。でももうこんな誘いも前の様に面倒とは思わなくなった。心の中で嬉しく思っている自分が居るのが分かる。


「じゃあ、午後六時には帰るんだよ」

「うん」


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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