第23話 クリスマスイブは二人きり その二

 

 俺は、急いで風呂の中に入るとまだ脱いでいなかった洋服と下着を少しだけドアを開けて外に出した。

 チラッと見えた一条さんは、まだ綺麗な肌を見せていた。



 体を洗いながら、

 はぁ、見ちゃったよ。お風呂上りの少しピンク色の白くて綺麗な肌。大きな豊かな胸。それに下の方も見てしまった。

 参ったなぁ。二番目が元気になっている。鎮まれ二番目。俺はこの後、どうすればいいんだ。


 湯船に入ってもいい案が思い浮かばない。それに彼女の寝る所って…。俺のベッドで寝て貰って、俺は父さん達の寝室を使うかな。


 出るか。顔が火照って来てしまった。


 ドアを少しだけ開けて彼女がいない事を確認すると風呂から出た。体をタオルで拭いた後、ドライヤで髪の毛を乾かして、持って来た下着と短パン、Tシャツを着るとリビングに行った。


 あれっ?いない。もしかして…。


 二階に上がって俺の部屋のドアを開けると、一条さんがベッドで横になっていた。可愛いオレンジ色のパジャマを着ている。

 綺麗な体のラインは見えないけど素敵な感じがした。そのまま部屋を出ようとすると


「待って雄二」

 いきなり手を掴まれた。


「行かないで。お願い」

「でも」

「雄二、女の子がここまで覚悟して来たのよ。お願い」


 俺はどうすればいいんだろうか。興味一杯の気持ちと、してはいけない気持ちが、せめぎ合っていた。



 彼女がベッドから起き上がって立ち上がるといきなり抱き着いて来た。彼女の柔らかい体が直に感じる。胸も遮るものが無くはっきりとその柔らかさが分かる。


「雄二」


 彼女の唇が俺の唇と重なった。とても柔らかかった。





 目覚ましが鳴らなくても習慣で午前六時半には目が覚める。俺の隣にはとても柔らかく暖かい一条さんが目を閉じて横になっている。

 彼女の顔を間近で見ている。とても長い睫毛。切れ長の大きな目。スッとした鼻筋。本当に綺麗だ。


 あっ、目を開けた。


「雄二」

 また、彼女が唇を合わせて来た。そしていきなり俺の体の上に乗って抱き着いて来た。


「昨日言った事覚えているよね」

「はい」

「絶対だよ。大学合格が決まったらするんだよ」

「はい」


「ふふっ、でも良いでしょう。今、雄二の上にはブラもパンティも着けてない、女子高生の体があるんだよ」

「わ、分かりました。これ以上すると俺の理性が…」

「そう言って昨日先寝たでしょう」

「いえ、胸がドキドキして一睡も出来ませんでした」

「嘘つき、しっかりと寝ていたじゃない。こんな可愛い女の子に抱き着かれているのに」

「そ、それは…」


「でも約束は約束だよ。後、キスはもうしたんだから下の名前で呼んで。千佳って」

「…ち、千佳さん」

「駄目、千佳」

「ち、千佳」

「はい良く出来ました。ご褒美よ」


 また口付けされた。



 昨日の夜、口付けをされて理性が飛びそうになったけど、大学合格までは最後までしない。でも二人共合格したらしようと言って回避した。願掛けのつもりだ。

 勿論、二番目は思い切り元気になって、一条さんが驚いていたけど。



 今日は終業式。二人共制服に着替えると朝食を食べた。

「雄二、バッグは明日にでも取りに来るから」

「分かった」


 昨日の事で俺からすると、なし崩しに千佳と付き合う事になった。でも口付けされたからか、俺も彼女に対して今までとは違う感情が心にあるのが分かる。


 そして一緒に家を出て駅に向かった。




 私、深山加奈子。堕胎して四日間位体を休めたら、体調も元に戻った。今日は終業式。いつもより早めに出る事にした。玄関を出て歩き始めると


 えっ、雄二が誰かと一緒に歩いている。私と同じ制服を着ている。あの後ろ姿、まさか…一条さん。

 雄二の家に泊ったの?どういう事?二人はもう出来ているって事?どうして?どうして?


 前を歩く二人はとても仲良さそう。二人で手をつなぎながら楽しそうに話をしている。でも仕方ない。隆に騙された私は雄二を騙していた。


 どこで間違えてしまったんだろう。



 駅に着くと二人に分からない様に別の車両に乗った。二人を見るのを止めようとしてもどうしても見てしまう。

 今の情けない自分とあんなに幸せそうな雄二。涙が出て来そうだよ。




 俺達が教室に入って行くと

「おはよ、雄二、一条さん。朝から熱いね」

「おはよう。坂口君。勿論よ。私達熱々だよ」

「おう、すげーっ。じゃあ、もしかして…」

「竜馬、おはよ。お前が邪推するような事はしていない」

「本当?一条さん」

「ふふっ、どうかしら」


―ねえ、高槻君と一条さん、なんか距離感いつもより近くない?

―私もそう思った。

―もしかして…。

―きゃーっ。



 俺は女子達の言葉は無視をして席に座った。一条さんが仲のいい友達から何か聞かれて顔が少し赤くなっている。誇張して話してないだろうな?


 あっ、加奈子が入って来た。体調は良さそうだけど…なんなんだ、あの寂しそうな顔は?



 予鈴が鳴って担任の先生が入って来た。




 無事に終業式も終わり、下校時間になった。

「雄二、この後、皆でカラオケ行くけど来るか?」

「いや、止めとく。歌全然分からないし。そういうとこ入った事無いから」

「まあ、そう言われると思った。じゃあ、来年またな」


 竜馬は手を上げると他の生徒達と一緒に教室を出て行った。前に加奈子と仲の良かった子達も一緒の様だが、加奈子は誘われていない様だ。バックを持つとそのまま一人で教室を出て行った。



「雄二、帰ろうか」

「ああ、帰るか千佳」


―えっ、今、高槻君、一条さんを名前で呼んだよね。

―聞いた聞いた。

―という事は。

―遅かったかぁ。

―残念。



 残っている女子の言葉を無視して俺は千佳と一緒に教室から出ると

「雄二、今日はどうするの?」

「普通に勉強。過去問まだやり終えていないんだ」

「でも、あれ結構厚いし。昔の問題はしなくてもいいんじゃない?」

「まあ、自己満足ってところ」

「そう、じゃあ、私も一緒に勉強しようかな」

「えっ?」

「いいでしょう。駄目と言っても付いて行く」

「分かったよ」


 完全に千佳の思惑に乗せられた感じだ。でも今はこれも悪くないかなと思っている。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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