第2話 加奈子の言い訳
時間が前後する時があります。ご了承下さい。
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雄二に見られてしまった。まさかあんな所にあの時間に居るなんて。
私はその後、一緒に居た彼と別れて直ぐに雄二に連絡した。繋がらない。メッセージも一杯送ったけど既読も付かない。
急いで彼の家に行き、ドアフォンを何度も押したけど出なかった。仕方なく家に帰った。といっても隣だけど。
「あら、もう帰って来たの。雄二君と一緒だったんでしょ?」
「う、うん。雄二ちょっと用事が有るからって途中で別れたんだ」
「そう」
私は変にそれ以上聞かれたくなくて急いで二階の自分の部屋に行った。窓から覗いても雄二の部屋はカーテンが閉まったままだ。
雄二とは家が隣同士で両親とも仲が良かった。だから自然と私達も一緒に遊ぶようになった。
そんな仲だから、幼稚園、小学校、中学校そして高校も同じ学校に入った。
だけど、雄二が一緒に同じ高校に入学して直ぐの時だった。両親が突然の交通事故で亡くなって、親戚の家に行ったらしく、居なくなった。高校も転校してしまった。
それから半年して突然戻って来た。どういう理由か分からない。
最初の内は何処にも行かず、コンビニと家との間を往復するだけだった。何故学校に来ないかなんて分からない。
その姿にお父さんが見かねて、交通事故の時、雄二側についた弁護士、確か前田とか言っていた人が来て、色々していた。
そして少しして学校に来始めた。
学校に来ても元の様な明るさは無く、声を掛けたけど、両親が亡くなった事のショックをまだ引いているのか、私の顔を偶に見る時も有るけど視点の合わない灰色の瞳が何も語ってくれなかった。
半年間離れていた事も有って、幼馴染だった私とも距離が離れて行った。
◇少しだけ前に戻ります◇
雄二が居なくなって少し経った時だった。街を一人で歩いている時、男の人から声を掛けられた。
当然無視したけど、しつこく言い寄って来るし、結構イケメンだったので、その時だけと思い〇〇バでコーヒーだけ付き合った。店の中に入ると結構な数の女の子が私に声を掛けた男を見ている。
ちょっといい気分になって話をしているうちに有名な私大に通っている人だと分かった。名前は後藤隆(ごとうたかし)。大学一年生。
私の頭ではとても行けそうにない大学だ。話が上手くて結局一時間近く話をして別れた。次会う事も約束して。
雄二とも会えないので、毎週の様に会った。そして会って何度目かの時に初めてをあげてしまった。
それから数ヶ月して雄二が戻って来た。雄二が心配で隆とは少し会う時間を減らしたけど、でも雄二とは距離は段々遠のくばかり。
下手するとまたどこかに行ってしまうんじゃないかと思ったり、あまり口も聞かない雄二よりも隆の方が楽しいと思い隆と会う時間を増やした。それから私は益々夢中になってしまった。会えば必ずした。
そういう関係になってから少しして、両親から雄二ともう一度仲良くするように言われた。
なんでと聞いたけど、雄二のお嫁さんになれば不自由なく暮らせる。あの子は大金持だと言っていた。
彼との関係を隠しながら雄二とまた少しずつ話す様にした。最初雄二は一言二言しか話さなかったけど、段々心が開いて行き、いつの間にか前の様に仲が良くなった。
隆には家の事が忙しいと言って雄二と会い、隆と会う時間を少なくしたけど、雄二と会っていてもつまらない。
話しは真面目な事ばかりだし、出かけると言っても散歩したり景色を見に行ったりするだけ。ゲーセンに誘うのはいつも私。家に遊びに行っても金持ちのくせにゲーム機も無い。
私に手を出そうとした時が有ったけど、隆の事があるから、結婚までは駄目と言ってキスもさせなかった。
雄二は私が清廉な乙女と勘違いした様で、それ以来手を出す素振りも見せなかった。まあ手をつなぐことは許したけど。
雄二と比べると隆と会っている方が楽しい。会話も楽しいし、美味しい食事もご馳走してくれる。
映画を見ながら手を出して来て、周りにバレない様にするのが大変だったり、ラブホに行けば、私を思い切り気持ち良くさせてくれた。
それに雄二みたいな髪の毛がボサボサで色気も無く、背は高いけど運動も何もしていない男の子より、私的にはイケメンの隆の方が全然いい。
でも親の言い付けで仕方なく雄二に合せる様に傍に居た。昨日も雄二と会う約束していたけど、その前に隆と会う約束していた。
前はそんな時は雄二を優先したけど、会って景色見たりして楽しんでいる雄二より今回は隆を優先した。
そして昨日見られてしまった。まあ、いいや。どっちにしろイケメンの彼の方が将来性ありそうだし。私を一生大切にしてくれるって言ってくれているから。
親は雄二と結婚すれば一生幸せになるなんていているけど、そんな事本当かどうかなんて分からない。
でも両親への言い訳も考えないといけない。一応雄二には謝罪のメッセージや電話連絡を一杯いれたけど、案の定出てくれないし既読もつかなかった。
一応これでいいや。雄二が私を拒否したんだし。これで親に言い訳が付く。隆の事は黙ていればいい。
自分の部屋でベッドに横になって天井を見ているとスマホが震えた。
あっ、隆だ。私は直ぐに出た。
『もしもし、加奈子です』
『俺だ、隆だ。さっきはどうしたんだ?道路に立っていた男と目が有ったとたんに俺から腕を離して、待ってとか、違うとかなんとか言いながら追いかけて行ったけど』
『ごめんなさい。あれは幼馴染で隆の事、話してなかったから誤解されると良くないと思って』
『誤解?加奈子は俺と一緒に居るのが不味いのか。もしかして立っていた男って…』
『違う、違う。そんな事言っていない。あいつ、口が軽いからうちの親に変ないい方されると嫌だなと思って』
『ふーん。そうか加奈子は俺と会っている事を親に知られると不味いのか。なるほど』
『えっ、いや。そんな事ない。私は隆が大好き。愛している。きちんとした時が来たら両親にも紹介しようと思っていたの』
『そうか、それは嬉しいな。じゃあまたな』
加奈子の奴、彼氏がいたのか。俺より前か後か知らないが、あの慌てぶりからしても、昨日今日の付き合いじゃないだろう。
しかし、俺を両親に紹介なんて冗談じゃない。ちょっと可愛いし、いい体だから会っていただけなのに。そろそろ潮時だな。二年もしていれば十分だ。
隆、分かってくれたのかな。何となく最後の方が心配だったけど。今度会った時、もっとしっかり説明すればいいや。
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
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