第3話 学校にて
何とか出かける前のアップです。楽しんでももらえれば幸いです。
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昨日はあの後、午後七時に一度目が覚めた。食欲も無かったが、何か胃の中に入れておいた方がいいと思い、朝の分のパンをトーストにして牛乳で流し込んで、シャワーを浴びて寝た。
朝、意識が戻りうつらうつらしながらベッドの上から時計を見るとまだ午前六時半だ。でももう眠れない。仕方なしにそのまま起きて、着替えると近所のコンビニにおにぎりとジュースを買いに行った。
それも食べ終わってテレビを見て時間を潰したが、まだ午前七時半。いつもなら俺は加奈子と一緒に登校するが、今日は早めに家を出た。あいつの顔なんて見たくない。
いつもの様に教室に行くと
「雄二、おはよ。今日は早いな」
俺がこの高校に戻って来てからの友人、直ぐに話せた訳では無いが、何かと話しかけてくる。
何が目的なのかと聞けば、お前一人なんだろう。俺も友達まだいないんだ。だから友達になろうぜという、良く分からない理屈だった。
最初無視しようと思ったが、毎日、朝や昼休み、体育祭、文化祭の時に色々と声を掛けてくれる。表も裏も無い。物ははっきり言うし物おじしない、いつの間にか仲良くなった坂口竜馬(さかぐちりょうま)だ。一字違えば有名人な奴。まるで歴史の中の人物みたいだ。
「おはよ竜馬」
「どうしたんだ。朝早くからこの世の終りみたいな顔して。そういえば深山さんは、一緒じゃないのか?」
「ああ」
こりゃ、訳ありだな。しかしこの二人に何もある訳なんか無い筈なんだが。
竜馬が俺を気遣う様に話をしていると加奈子が教室に入って来た。俺の顔を見たとたんに気まずそうに顔を背けた。
朝、登校が気まずいなと思ったけど雄二は先に行ってしまったようで、私も一人で登校した。でも教室に入ったとたん、雄二と目が合ってしまった。
私は気まずくなり顔を逸らすと自分の席に座った。
「雄二、深山さんと何か有ったのか?」
「竜馬、昼休みの時にな」
「そうか」
昼休みになった。普段だったら、一番で深山さんは雄二の所に来て一緒にお昼を食べるのに、今日は一度彼女が雄二の顔を見ただけで雄二に近付こうともしない。
「竜馬、学食に行こう」
- えっー!
- 嘘だろう!
- どうしたんだよ!
- 信じられない!
クラスの全員が驚いている。それもそうだ。この二人は仲睦まじく、バカップルを超えて夫婦と呼ばれていたからだ。
「ああ、行くか」
俺達は、学食の入口に着くまで何も話さなかった。定食のサンプルをみながらやっと食券機で
「雄二、俺はB定食だ」
「ああ、決まりだな」
カウンタでB定食を受け取ると、なるべく学食の隅の方に行った。トレイをテーブルに置いて座ると
「雄二、何か有ったみたいだな」
「ああっ、加奈子に浮気された。いや、あれは前からかな?」
「なに?!…まさかあの深山さんが、かよ」
「ああ、昨日の日曜日、街で知らない男の腕に絡みながら嬉しそうにラブホからの坂を降りて来ていた。ばっちり見てしまったよ」
「信じられないが、雄二が嘘を言う理由無いしな。証拠は撮ったのか?」
「とっさの事だったんで、何もしないで立ち去った」
「しかし、俺には信じられないな。あの深山さんがな?」
「俺もだ。まだ頭の半分、いやほとんどついていけない」
「なるほどー。でもそれは不味いよな。揉めた時に証拠が無いと、下手するとお前が悪者になるぞ」
「分かっている。どうせまた会うだろう。その時だな」
昼休みが終わった後、教室に帰ったが、あいつ(加奈子)は、親しい友達と話しているだけだ。その友達が難しい顔をしている。やはり証拠が必要か。
あれから一週間が経った。
雄二とは口も利いていないし、登下校ももちろんしていない。親は、私が学校に行く頃には二人共仕事に出ているから、雄二との仲なんて分からない。
でも土日は、不味い。バレる前なら土日はどちらか必ず会っていたから。
土曜日、朝起きるとお母さんが
「雄二君と今日も会うの?」
「う、うん」
「どうしたの?中途半端な返事して」
「最近上手く行って居ないんだ。雄二私を避けているみたいで」
嘘は言っていない。
「えっ、どうしたんだ。雄二君とずっと仲良くしないと駄目じゃないか」
今度はお父さんが口を挟んで来た。
「そんな事言ったって」
その時だった。スマホが震えた。画面を見ると隆からだ。日曜は都合が悪いから今日会いたいと言って来た。これは都合いいや。
「あっ、連絡が来た。今日は街で会う事になった」
「そうか、それは良かった」
俺は、加奈子が相手といつ会うか知らなかった。俺と加奈子が付き合っている時なら間違いなく日曜日だろう。加奈子は日曜だけ偶に用事が有ると言っていた。だけど、俺にバレたんだ。日曜日は避けるんじゃないのか。
俺は直ぐに出かけられる用意をして俺の部屋のカーテンの隙間から加奈子の部屋を見ていた。
午前十一時半に加奈子が自分の部屋のカーテンを閉めて部屋を出た。単に一階に行くだけならいつもカーテンは閉めない。出かける気だ。
直ぐに玄関に行って、ワンクッション置いてから少しだけドアを開けると加奈子は丁度門を出た所だった。
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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