エピローグ
華々しいファンファーレと共に、正装に身を包んだ北方遠征隊が王都を出立しようとしていた。栄えある彼らの晴れ晴れしい姿を見ようと、路上にはたくさんの人が集まっている。
フィルと一緒にそれを見送っている私は、周りに気づかれないように、フィルの服の裾をそっと掴んだ。
「寂しい?」
「うん」
「…僕も」
見上げたフィルは泣きそうな目をしていて、でもそれをこらえるように口元には笑みが浮かんでいた。どちらからともなく密やかに手をつないだ。
王立学院に入学してから、何かあればいつも二人が支えてくれた。その一人に、いつも手を伸ばせば触れられる距離にいたその人に、会えなくなる。たった三年が私には想像もつかない長い時間のように感じられた。
私たちの前を進んで行く一行の中に見慣れた姿を見つける。アレスに騎乗したガルディウスはこれまでで一番誇らしげで、いつかの日に見た、喜びに沸き立つような眼をしていた。その姿に、私たちの選択は間違っていなかった、と確信した。
もっとちゃんと彼の姿を見たいのに、勝手にあふれ出てくる涙で視界がぼやける。
せわしなく涙をぬぐう私を見つけたらしいガルディウスが笑顔をこぼした。
「ルディ!」
彼は頷き、いってくる、と唇だけで言った。
「いってらっしゃい!」
泣きながら叫ぶ私に笑顔を向けると、彼は手綱を握っていた片方の手のひらを私だけに見せるようにそっと開く。
彼の手の中では、軍服を着たクマが誇らしげに胸を張っていた。
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