第103話 ついに、ドラゴン!
「保護したドラゴンを公開するのは、少しでも、ドラゴンに興味をもっていただき、ドラゴンの住みやすい場所を守ろうと思う人が増えてくれることを願っているからです」
と、おだやかな口調で話してくれたブリジットさん。
「ドラゴンが住みやすい場所というのは、どういうところですか?」
この世界のドラゴンの知識がまるでない私は、ブリジットさんに聞いてみた。
「ドラゴンは自然のままの山を好みます。ただ、近頃は、山も切り開かれ、開発が進んでいます。ドラゴンの生態は謎だらけですが、例えば、開発しようとする人工的な音が聞こえたとしたら、そこに住み続けることはないでしょう。ドラゴンが住みやすい、手つかずの山というのが減ってきているんです」
「だから、今は、ドラゴンが生息していることが確認できた山は、王家が買い取って保護するようにしてるんだ」
デュラン王子が注釈をいれてくれた。
なるほど……って、こら、ランディ王子!
王家も関わっているドラゴンの環境問題の話をしているのに、何で、胸のマカロンをさわって、にやついているのかしら。
ま、見なかったことにして、私はブリジットさんに視線を戻した。
「今、現在、保護しているドラゴンは2匹です。これから、まず、子どものドラゴンの住む部屋にご案内いたします。が、ドラゴンの姿が見られるかどうかはわかりません。ドラゴンが望まない場合、姿を見せないこともあります。ドラゴンの気分次第となりますので、ご了承ください」
と、説明してくれたブリジットさん。
「もちろんです!」
私がワクワクしながら返事をすると、ブリジットさんが優しく微笑んでくれた。
今度は、補助のアンドレさんが補足の説明をしてくれる。
「これから入る部屋に保護している子どものドラゴンですが、およそ、生後半年くらいかと推測されます。大きさは、大きめの猫ぐらいです」
「え? そんなに小さいの? ドラゴンって、生まれた時から大きいのかと想像してたわ!」
思わず、前のめりで聞いてしまう。
ランディ王子が鼻で笑った。
「ドラゴンは卵で生まれるから、最初は小さいだろ。アデルは、そんなことも知らないのか? バカだな。……いたたたた」
いきなり、ランディ王子が胸のマカロンをおさえた。
え、どうしたの? 大丈夫?
「ごめんね、ランディ。僕の魔力と連動してるから、その胸の飾りが暴れたみたい。でも、ランディが悪いんだよ? アデルへの態度が悪いから。前にも注意したよね。ほんと覚えがわるいな。どっちがバカなんだか」
と、微笑みながら、毒をはくユーリ。
私は、あわてて、ランディ王子にかけよった。
「とりあえず、その胸のマカロン、はずして。危ないわ。ユーリの魔力が流れてるから、また、同じようなことになったら困るでしょ」
「これくらいのことで、はずすかよ。俺はユーリさんの弟子だからな。俺を見くびるな」
と、えらそうに言ったランディ王子。
そこ、がまんするとこ? あきらかに、おかしいわよね?
とりあえず、ユーリの言うことなら聞くだろうから、なんとかしてという意味をこめて、隣に立つユーリを見た。
「それに、アデルは馬鹿じゃない。ばかかわいいんだから」
と、とろけるような笑みをうかべて、私の頭をなでてきたユーリ。
いや、そんなこと、気にもしてないし、聞いてもないわ!
そこへ、ジリムさんが寄ってきて、淡々と言った。
「どうぞ、ランディ王子のことは放置しておいてください」
では、お言葉に甘えて、そうしよう。それより、早くドラゴンに会いたい!
「では、この扉をあけたら、子どものドラゴンの住む部屋になりますので、どうぞついてきてください」
そう言って、頑丈な扉をあけたアンドレさん。
部屋に入ったとたん、そこには、まるで、野外のような空間が広がっていた。
木々や草花、岩など、自然そのもの。山にいるみたいなんだけど……。
その時だ。
キィー
耳をつんざくような、甲高い音がした。
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