第74話 アイデア発表!

 私は、思いついたアイデアを早速発表しようと、「はいっ」と、手をあげた。


「どうしたの? アデル王女」


 真っ先に反応してくれたのはデュラン王子。


「ランディ王子だけれど、ユーリに魔力について、教えてもらったらどうでしょうか?」


「何、言ってんの、アデル?」


 不機嫌そうな声をだしたユーリ。


 だけど、ここは無視。

 自分の保身よりも、みなさんのため、話をすすめなくてはね。


「ランディ王子は、目に見える魔力にこだわってるけれど、その魔力を今から努力で持つことは不可能なんですよね? でも、目に見えない魔力は、量は多くはないけれど、持っているんでしょう? それなら、その魔力を自分にあった方法で、自信をもって使えるようになれば、満足すると思うんです。ということで、ここで、ユーリの登場です!」


 私は手をひらひらさせながら、ユーリの方を示す。

 ちなみに怖いので、ユーリの顔は一切見ていない……。


「どういうことかな?」


 王太子様が首をひねっている。


「ユーリはこう見えて、膨大な魔力があります」


 私の言葉に、「見たまんまですが……」と、つぶやくジリムさん。

 ここも無視。


「もちろん、ユーリの魔力は、ブルージュ国王家の魔力ではないので、目に見えません。そこで、ユーリには、目に見えない魔力の圧倒的な威力を、ランディ王子に見せつけてもらって、ランディ王子の目に見える魔力への長年の憧れを、粉々にぶち壊してもらうんです!」


 そう言うと、私は力いっぱい、にぎりこぶしを作って、振り上げた。


 シーン。


 あら? 静まり返ってますね……。

 ええと、だれか、何か言って? 


 振り上げたこぶしが、とっても恥ずかしいんだけど?


 が、私はめげない。

 こぶしを、ささっとおろして、話を続けることにした。


「ここまでが第一段階。そして、憧れを打ち砕いた張本人であるユーリの言うことなら、ランディ王子も素直に聞くのではないかしら? 魔王なみに魔力のあるユーリに指導してもらって、ランディ王子にあった魔力の使い方を身につけてもらうんです!」


「いいんじゃないでしょうか? 今のところ、他に、なんの打開策もありませんし。次期公爵様さえよければ、お願いいたします」


 すぐさま、私に賛同してくれた、ジリムさん。

「どうでもいいから、なんとかしてくれ」と、心の声が後に続きそうな感じね。


「しかし、お客人に、そこまで面倒をかけるのは、さすがに申し訳ない……」

と、王太子様。

 

 デュラン王子もうなずいて、言った。


「僕が、また、説得してみるよ」


「そう言い続けて、もう3年だぞ! ランディ王子は、デューに意地になってるから、聞きゃしないだろ。遠慮してる場合か? 使えるものは、何でも使え!」


 本性まるだしになったジリムさんが、デュラン王子に食って掛かっている。


 やっぱり、ユーリしかいないわ!

 私は、隣のユーリをきりっと見上げる。お願いモードだ!


 すると、ユーリは、ため息をついて言った。


「ねえ、アデル。僕に何のメリットもない、ただただ面倒そうなことを、丸投げするの? しかも、僕って魔王なの?」


 あ、しまった! 

 常日頃から、心で呼び慣れている「魔王」が、つい口にでてしまってたのね。


「いえ、魔王なみに魔力があるって言っただけで、ユーリが魔王だなんて、みじんも思っていないわよ?」

と、なんとか、取り繕ってみる。


「ふーん? まあ、魔王だって思われてても、別にいいんだけどね?」


 そう言って、意味ありげに微笑んだユーリ。

 え、いいの……? やっぱり、自覚があるのね……。


 ここで王太子様が言った。


「ロンバルト殿。あなたの魔力が並外れておられることは、魔力の少ない私でも感じられる。お客人にこんなことを頼むのは、失礼だとは思うが、一度、あいつの魔力を見て、なんでもいいから、気づいたことをアドバイスしてもらえないだろうか?」


「僕からも頼みます」

と、デュラン王子も言った。


「お願い、ユーリ。私も手伝うから!」


 私も一緒にお願いする。ユーリは少し考えてから、うなずいた。


「わかりました。教えたことはないから、どうなるかわかりませんが、まあ、やるだけやってみます」


 王太子様にそう答えた後、ユーリが私にささやいた。


「アデル。上手くいったら、僕のお願いも聞いてね」


 え? ユーリのお願い……?   

 とまどいながらユーリを見ると、やけに美しい笑みを浮かべている。

 なんだか、嫌な予感がして、ぞくっとした。


 やっぱり、魔王に何かを頼むのは、いけなかったかしら?

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