第42話 テレパシー?
それと、まだ気になることがある。
「デュー先生の魔力は目に見えるのね。私の住むオパール国では見える魔力って、聞いたことがないんだけれど。もしや、ブルージュ国では、よくあることなの?」
「そういや、そうだな。聞いたこともないなあ」
と、師匠もつぶやいた。
「いや、目に見える魔力は、わが国では、今は王である父と僕だけだ。他には聞いたことがない」
「え!? それって、見せて良かったの? ブルージュ国王家、最大の秘密とかじゃないの? 知ったら暗殺されるとか? あ、そうだ。見なかったことにしましょうか? 私、素早く忘れるのが特技だから。安心して!」
プハッと、デュラン王子がふきだした。
「アディー、大丈夫だよ。殺さないから。魔力が目に見えること自体は、知る人は知ってるし、なんの秘密でもないよ。どんな魔力を持ってるかのほうが重要だし」
なるほど、良かった!
が、師匠は、あきれた目で私を見ている。
「しかし、ほんとに王女様なのか? しかも、忘れるのが特技って、……なんだか、かわいそうになあ」
「ちょっと師匠! かわいそうって、なに? すぐさま、忘れられるのも、立派な特技でしょう!?」
と、言い返したら、更に、デュラン王子が笑い出した。
ふと見ると、ドーラさんが茫然としている。
「大丈夫? ドーラさん?」
ドーラさんが、はっとしたように、私に言った。
「……あの、今、王女様って? ……もしや、アディーさんは……アデル王女様なのですか? しかも、デュー先生も、ブルージュ国の王が父って、……もしや、隣国の王子様なのですか? ……そんな、……私、どうしましょう」
よろめきながら、ベッドから降りようとしたドーラさんを、私は抱きつくようにして止め、ベッドにそっと押し戻した。
「今は、助手のアディーと、医師のデュー先生です。気をつかわないで!」
「そうだ、そうだ。どっからみても庶民だろ? こんな王女様がいるか?」
と、師匠。
悪かったですね、こんな王女で。前世、庶民ですからね。
「それに、こんな男前で色男の王子様がいるか? 頭もいいし、病も診れる。いたら、完璧だろ。世の中、不公平すぎるだろ……」
師匠、語尾のテンションが落ちてるわ……。
それにしても、デュラン王子と私へのコメントの差が激しいわね。
師匠には、一度、王女らしさが爆発しているところを見せないとね。
覚悟してらっしゃい!
「そうだ、さっきも言ったように、熱はさがったけれど、ぼくの魔力で病気が治った訳ではないからね。ちゃんと、薬を飲んで、栄養のあるものを食べて、とにかくゆっくり休んでね」
そう言うと、ポケットから手帳をだして、なにやら書き、紙をちぎって、師匠に渡した。
「薬屋で、この薬を買ってきてもらいたいんだけど。あ、でも、この国だと薬の名前が違うかもしれないな」
確かに、ブルージュ国の薬とは違うかもしれないしね。
そうだわ! ないものは、かわりの薬が何か、王宮の薬師さんに聞いてみたらいいから、ロイドに頼もう!
「その紙、ちょうだい。ロイドに頼んでくる」
と、私が師匠に言った瞬間、
「およびですか? アデル様」
ロイドが、開いたままの扉から顔をだした。
うわ、びっくりしたー!
「ロイド、ずっと、そこにいたの?」
「いえ、今、来たところです。ずっと、居間で子どもたちと遊んでましたから」
と、ロイドは答えた。
「ちょうどのタイミングだよ。すごい偶然だね!」
と、驚いた声をあげた私。
「いえいえ、偶然ではありませんよ。アデル様にもうすぐ呼ばれる気がして、のぞきにきたんですから」
と、当然といった顔で答えたロイド。
ええっ? それって、テレパシー?
怖すぎるよ、ロイド……。
そして、師匠、なに笑ってるの? ここは怖がるところよ!
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