第23話 なんなの、この人たち
「三人とも仲良くなったんだね」
と、のんきなセリフとともに、王太子のルイ兄様がやってきた。
どこをどう見たら、仲良さそうなの? と思ったけれど、ルイ兄様が来てくれて良かった。ほんと、助かりました。
のほほんとした全身に、後光がさして見えるわ。
二人に見とれていた女性陣たちも、王太子の登場にさっと距離をとる。
私たち三人を見比べて、楽しそうに笑うルイ兄様。
この空気で、よく笑えるわね? まあ、常日頃から鈍感だとは思っていたけれど。
でも、今は、この空気の悪さに気づかずにいられる、その鈍感さがうらやましいわ……。
「あ、そうだ。近々、ブルージュ国にアデルを行かせようと思ってるんだ。ほら、カレナもアデルの年には外国へ行きはじめたしね」
と、唐突に、ルイ兄様が言った。
話の脈絡がなさすぎて、頭がついていかない。
が、隣から、すごい冷気が流れてくるのは感じるわ……。
ほら、ユーリの目を見て! ルイ兄様、殺されるわよ!
反対に、デュラン王子は満面の笑みを浮かべた。
「大歓迎ですよ。アデル王女が滞在中は、つきっきりでご案内しますので、ご安心ください」
隣から、舌打ちが聞こえた。
黒いものが漏れ出してますよ、ユーリさん……。
「アデルが縁もゆかりもない、これからも永遠にあるはずがない、ブルージュ国へ行く必要はないでしょ? もし、どうしても外国にというのなら、カレナ様の嫁がれたシンガロ国へ行ったらいいじゃないですか?」
あなたバカですか、という幻聴が末尾に聞こえたような気がする。
が、ルイ兄様は微笑んだまま、のんびりと言い返した。
「ユーリは反対なんだね。……あれ? もしかして、機嫌が悪いの?」
と、ユーリの顔をのぞきこむルイ兄様。
ひゃー、やめて! 鈍感なうえに、なんて、怖いもの知らずなの!?
どうしよう、ルイ兄様に命の危機が迫ってるわ。
が、私の心配をよそに、ルイ兄様はのんびりと魔王にむかって話し続ける。
「でもね、ユーリ。アデルも第二王女として、外の国のことも学ばないと。だったら、ブルージュ国がちょうどいいと思うんだ。今回、交渉もまとまって、アデルが行くことで、更に国同士も親交が深まったらいいなって」
いいなって、……じゃないわよ、ルイ兄様!
魔王まるだし状態のユーリに、よくそんなセリフが言えたわね?
うん、やっぱり、鈍感は最強だわ。
「じゃあ、自分が行けば?」
ユーリさんも……。
それ、仮にも上司である王太子への口調ではないよね?
「もちろん、いずれ、ぼくも正式に訪問するつもりだよ。でも、先に、アデルに気軽に行ってもらおうかなと思って。いい考えでしょ?」
「どこが? やめてよね、思いつきで言うの。アデルは俺の婚約者だ」
でました、ユーリの「俺」!
これは、怒ってる時だわ。
ルイ兄様なら、あっけなく消されそう……。
「心が狭いと嫌われるよ?」
と、デュラン王子が口を挟んだ。
なんだか、煽るような口調。
ええと、デュラン王子、今、それを言うかしら?
できれば、黙っていて欲しかったわ……。
ほんと、なんなの。この人たち。
魔王×魔王×鈍感。
最悪の組み合わせよね。
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