第17話 新しい作戦、考えました

 真実の愛作戦が失敗してから1週間。

 

 私は婚約解消のため新たな計画を考えていると、はたと気が付いた。

 ユーリが言っていた言葉にヒントがあるって!


 確か、自分の知らないところで、自分のことを決められるのが嫌い、みたいなことを言ってたんだよね。

 

 つまり、ユーリ自身が婚約をやめたいと思ったらいいんだ。

 ということで、ひらめきました!


 私以上に、ユーリが退屈しないと思える相手を見つけること。

  

 大丈夫、ユーリにあこがれている女性は山ほどいる。

 その中には、ユーリが気に入るような、おもしろい令嬢もいるはず。


 しかも、早速、チャンスがやってきた!


 先日、ユーリ達が交渉した隣国の方々が、明日、帰ることになった。なので、今晩、王家主催のパーティーが開かれるのだ。


 そこにおもだった貴族も招かれている。

 もちろん、ユーリファンのご令嬢たちもわんさかくるだろう。

 

 今までは、悪口三昧が聞こえてくると思うと憂鬱だったけれど、今日はどんとこいだ! いくらでも言ってちょうだい!

 どうせなら、ユーリが興味をひかれるような、独創性のある悪口を言ってくれたらいいわね。

 ユーリが「あの子、おもしろそう」と思うように、私も全力でアシストするわ!

  

「……王女様、アデル王女様。どうされましたか?」

と、私を呼ぶ声に現実にひきもどされた。


 そうだった。

 今、そのパーティーのために、髪を結ってもらってたんだった。


 髪を結ってくれているのは、メイドのアン。

 子どもの頃から私についてくれているから、もはや、年の離れた姉みたいな存在で、気心がしれている。

 

「今日のパーティーが楽しみだなあと思って」


「あら、珍しい。パーティーにでるくらいなら、本を読みたいって、いつも、おっしゃってるのに?」


「今日は特別なの……。ムフフフ」


 鏡越しに、アンの顔がひきつったのが見えた。


「そのお顔。王女様とは思えませんね。何か悪だくみをしてるみたいですけど……」


「まあ、失礼ね、アン! 私が悪だくみなんてするはずないでしょ? すっごくいい計画を考えているの。アンにも教えてあげたいんだけれど、慎重にならないといけないから、まだ秘密。成功したら、アンにも伝えるわね。楽しみにしていて。……ムフフフ」


「やっぱり、悪だくみなんじゃ……」

と、アンは心配そうにつぶやきながらも、手はとまらない。


 あっという間に、華やかに、盛りに盛った、パーティー仕様の髪型をつくってくれた。


「ありがとう、アン! なんだか、いつもと違って、大人っぽく見える」


 アンは誇らしげに胸をはった。


「そうでしょう! 今日の濃紺のドレスにあわせて、大人っぽく、アップにしてみました。ほら、すごく、お似合いです! きっと、ユーリ様もドキドキされますよ」


 うん、ゴメン。それいらない。

 今日の目的は、ユーリの相手探しだからね。


 まあ、でも、髪を変えたところで、ユーリがドキドキなんてことはあり得ないし、そもそも私の髪型に、まるで興味なさそうだし。

 

 なんて、アンに言うこともできず……。


「素敵ね。いつもありがとう、アン」

と、お礼を言った。


 では、張り切って、パーティーに行ってこよう!



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