第4話 14歳になりました
※ 幼少期が終わり、現在に戻ります。
14歳になった私。マルクとは本を語り合う親友になっていた。
が、日本での前世の記憶がある私にとったら、この国は、読みたい本が圧倒的に少ない。
教科書や学術書みたいなものは沢山あるけれど、物語が少ないというか…。
なので、勉強以外には本を読まない人も多い。
特に、男子は、剣の修行もはじまるので尚更だ。
だけど、マルクは剣は苦手で、大の物語好きという、私にとったら、少ない物語の本を貸し借りして、感想を語り合える貴重な友!
だから、しょっちゅう、私は公爵家に遊びに来ている。
「マルク、この作家さんが好きでしょ。読んでみてよ」
そう言って、手渡した本は、ドラゴンの表紙がかっこいい、ファンタジーものだ。
「え、なんで!? これって、まだ発売されてないよね?」
普段はおっとりしたマルクが、驚いている様子に大満足。
「フフフ! ほら、よく見てよ。それ、シンガロ国版の原書。まだ、こっちには入ってきてないから」
「じゃあ、新刊なんだ! どうやって手に入れたの?」
「カレナ姉様が送ってきてくれたのよ」
姉の第一王女であるカレナは、隣のシンガロ国の王太子に嫁いでいったばかり。
「あ、でも、ぼく…。シンガロ国の言葉、まだ読むのがちょっと苦手で…」
「そう思って、ジャジャーン! これ、マルクにあげる」
私は、紙の束をマルクに差し出した。
マルクは手に取り、びっくりした顔で私を見た。
「アデル……。これ、訳だよね? しかも、手書き……。もしかして、アデルが書いたの?」
「そう! マルクのために、私が睡眠時間をけずって訳してきたわ! 一刻も早く読みたいでしょう? ほら、ほら、存分に感謝して!」
マルクは、ふーっとため息をついて言った。
「ものすごく嬉しいし、短時間で、こんなに訳すなんてすごいと思う。本当にありがとう、アデル。……でもね、なんだろうな……。友人として助言すると、その能力、もっと王女らしいことに使ったらいいのに」
「いやいや、マルク。それは無理よ! 本のためになら、がんばれるけれど、王女としてなら、睡眠時間を削ってまで、翻訳するなんて、できなかったわね」
「ん? でも、この翻訳は、ぼくのためにしてくれたんだよね?」
「もちろん。でも、厳密には違うわね。マルクのためというよりは、本のため。ほら、マルクに訳を渡せば、マルクにこの本を早く読んでもらえる。なら、感想が言い合えるでしょう?! つまりは、私が本で楽しむために、がんばったの。私は、訳されるのが待てないから、本が多いシンガロ国とブルージュ国の言葉を必死で勉強してきたわ。そう、私の夢は、のんびり、ひたすら、本を読みまくる人生! そのための努力は厭わないんだから!」
と、マルクに向かって、高らかに宣言した。
その時、私の背後から、笑い声がした。
「あいかわらず、ばかなこと言ってるよね?」
振り返ると、いつの間にかユーリが立っていた。
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