第2話 天使がいる!

 ここで、私の幼少期、ユーリとの出会いについて話したいと思う。


 私は、小さい頃、本ばかり読んでいる子どもだった。


 10歳年上で王太子のルイ兄様や、9歳年上で第一王女のカレナ姉様とは年が離れていて、あまり遊んでもらえなかった。二人は忙しかったから。


 と言っても、たまに会うと、めちゃくちゃ、かまわれる。

 その愛情は、両親よりも重く、暑苦しい……。


 本好きと知るや、二人は会えない分、やたらと本をくれた。

 私の本好きが加速したのは、しょうがない。


 そんな時、ひきあわされたのが、ユーリだ。

 私が5歳。ユーリが13歳の時。


 王妃であるお母様が、友達もいず、本ばかり読んでいる私を心配して、親友の公爵夫人にご子息のユーリを連れて王宮へ遊びにくるようにと頼んだ。

 

 まあ、今にして思えば、婚約者としての顔合わせだったんだと思う。


 最初に、ユーリを見た時は、本当に驚いた!

 だって、見たこともないほど、きれいだったから。


 その時のユーリは今よりも髪が長く、肩にかかるほど。さらさらの金色の髪が、ものすごく輝いていて、瞳は空のように真っ青。

 中性的な雰囲気で、とてつもない美少年だった。


「アデル王女様、はじめまして。ユーリと申します。よろしくお願いします」

と、挨拶をしたあと、微笑んだ顔は、まさに天使!


 本以外に興味のなかった私だけれど、思わず、声をはりあげてしまった。


「え、天使? もしかして、あなた、天使なの!? 私、天使とおともだちになれるの!?」


 その時、ちょうど読んでいた童話にでてくる天使みたいだったから、一気に舞い上がってしまった。

しかも、私は前世では天使グッズを集めていた、筋金入りの天使好き。


 お母様が、そんな私を見て、安心したように言った。


「ユーリ君は天使みたいに、きれいだものね。アデル、仲良くしてもらいなさい」


私は、嬉しくなって、もう一度、天使を見た。


天使は、微笑みを深くした。

長いまつげの下で、澄んだ青い目が光っている。


きれい!


……が、なぜか、わたしの体が、ぶるっとふるえた。


そう、今思えば、それは悪寒。


あの時の私に声を大にして言いたい。


それ、天使じゃないから。

まっ黒だから! って。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る