引き換えにした安心
男性との距離感に悩む。
昔、同級生がストーカーみたいになったことがある。以来、それがトラウマとなり男性と適切な距離感を築くことが難しくなった。
具体的に言うと、相手から好意を向けられると気持ち悪くなってしまったり、第三者のいない空間に二人きりでいると逃げ出したくなる等々である。勿論、全員がストーカーになるわけではないとわかってはいる。しかし理解できたとて恐怖は別物なのだ。
そもそも私の場合は本当に被害にあったのかどうかわからないから、いや、被害にあったと言っていいのかどうか、わからないから、余計に物事がややこしくなっているのだと思う。
被害にあったのは子供の頃だった。そうなると相手も勿論子供である。だから、どんなに私が大人に対して被害を訴えても、誰も本気にしてはくれない。子供同士のじゃれ合いくらいに思っているのだろう。
どこへ行くにもあとをつけられたり、私物を漁られたり、じろじろ監視されたりするのは、大人ならば間違いなく問題になるだろうが、子供同士と言うと途端に軽く見られる。好きな子には意地悪したくなるものだと言われる。例え行動が過激になってトイレにまでついてくるようになったとしても、子供同士だから、大人の被害のようにはならない。保健室に逃げ込み、衝立の奥に隠れて必死に息を潜めながらやり過ごすことになったとしても、子供だから、きっと大丈夫。そんなませたことはしない、何も知らない。自意識過剰だ。こんなことも我慢できないのか。全く、わがままで困る。
そう言われてしまえば、あとは黙るしかなかった。
いまだに私は被害にあったと言っていいかわからない。私に落ち度があったのではないかと罪悪感さえ抱く。しかし、もうあんな思いをしたくないという気持ちも日増しに大きくなっていく。
だから、距離を取るしかないのだ。そうすれば少しはそんなことからも逃げられる。
ただただ安心したい。安心して、人に好かれたい。人を好きになりたい。利用されたくない。これはわがままじゃないはずだ。これさえ非難されたら私はどうすれば良いと言うのだろう。
今は適切な距離を捨ててでも、私には安心が必要なのだった。
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