悪いこと

 五年前に一度、遺書を書いたことがある。

 いつも机の引き出しにしまっておいて、いつ死んでもいいようにしていた。結局使うことはなかったけれども、それがあることによって精神的には大分楽なものだった。

 自殺願望があるのかと人に聞かれれば、それは少し違うのだと思う。私は別に積極的に……いや、積極的に死にたいのかもしれない。よくわからない。生きていたくはない。できれば早く死んでしまいたい。

 私のこの願望に他人が悲しむ必要はないし、わざわざ重み持たせてくれなくとも良い。そういうのは疲れるから、七夕の願い事よろしく、軽く捉えていてほしい。

 生きていたくないのなら、なぜ早々に死なないのか、とまた人に聞かれたとしよう。それは、私の好きなものが私をか細い蜘蛛の糸ようなもので無理やり繋ぎ止めているからにすぎない。小説、漫画、映画、ドラマ。私にもはや夢などはないが、これらは私に束の間の夢を見させてくれる。その間だけ、痛みが止む。

 正直、よくやっていると思う。

 このカクヨムという小説投稿サイトで一年以上も詩を書き続けるなど、想像もしていなかった。二、三ヶ月が関の山だと。前回がそうだったから、今回もそうだと思った。

 五年の月日を経て、私は自分が思う以上にさらに繊細な人間になってしまったらしい。フィクションに自分と似た人間が出て来ると、どうしようもなく精神が乱され、しばらく夜が荒れる。大抵の登場人物は周囲の人間がどうにか引き上げてくれてことなきを得る。力を貸してくれとか、共に生きようとか、環境もそれを後押しして、なんとかなるけれど、現実はそうじゃない。しるべになる人などはいない。

 なんだかもう、疲れてしまった。

 ただ「死にたい」と書くのにこんなに長々と書き連ねてしまうなんて笑ってしまう。たしかに詩人の才能はあるらしい。いや、死にたくなったから詩人になったのだったか。

 前回から五年も生き延びてしまった。これ以上生きながらえないためにも、何か具体的な方法を考えた方が良いかもしれない。

 読者には悪いが、作品の更新が止まったらそうなのだと思って欲しい。続いているうちは少なくとも健康であろう。

 それでは今夜はここまで、また次に。

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