第4話
「成瀬さん。少しいいかな?」
いつも日比谷君のそばにいる女の子に呼ばれた。嫌な予感がする。
「…いいですよ。」
私は怖いけど後を追っていった。
「成瀬さんってもしかして透が好きなの?」
階段の影に連れていかれると突然話始める。事実を言うべきか悩んだけど言おう。
「はい。好きです。」
答えると一気に目の色が変わる。
「やっぱり。悪いけど透は私の婚約者なの。だから諦めてくれる?」
婚約者!?日比谷君はそんなこと一言も…!?
「知らなかった?まあ透のことを良く知らない証かもね?大体さ数日前から仲良くなったのに突然、隣を奪ってどういうつもり?」
「でも、日比谷君はタラシって聞いたんですけど、」
「透は優しいわ。だから勘違いする子が居ないように私が流したの。透には私しかいらないからね。」
衝撃の事実だ。やっぱり好きなんて嘘なんだ。
「じゃあ、これからは透の周りをウロチョロしないでね?」
うん。とは言えない。だってこれを聞いてもまだ好きだから。
「返事は?!」
「きゃ!」
下を向いてた私の髪を引っ張って顔をあげさせる。痛い!
「早く返事しないと殴るわよ?!」
左手を上にあげてる。でもここで折れたら…!
「早く言いなさいよ!」
「!!」
パンと音を立てる。頬が痛くて熱い。
「もう1回するわよ?!」
どうしよう。
「澪ー?どこだ?」
日比谷君の声がする。そうか、一緒にご飯食べる約束をしてから探しに来てくれたのか!
「チッ。
まあこれは始まったばかりだからね?まだまだ貴方が折れるまでやるわ。」
そう言って去っていった。
「澪!居た!どうした、…ってその頬どうしたんだ!?」
日比谷君は私の顔を見て驚く。でもあの子たちにされたと言っても信じないだろう。
「なんでもないよ。ご飯食べようか。」
「だめだ!保険室に行こう!」
日比谷君は多少強引だけど、保険室に連れていってくれた。
「…何があったんだ?」
私は無言を突き通す。
「それより日比谷君って婚約者居たんだね?」
話を無理やり変える。聞こうか迷ったが聞いて本当の話を聞いて諦めたい。
「婚約者?そんなの居ないけど?」
「え?でも、確かにあの子たちが…!」
びっくりしすぎて口を滑らしてしまった。
「あの子たち?もしかして俺の友達に何か言われて頬を叩かれたとか?」
やってしまった!こんなの自白だ!
「い、いや、叩かれたのと婚約者の話は別で…。」
「本当は?」
怖い瞳で見つめてくる日比谷君に耐えきれなくって口を開く。
「本当は、…。」
さっきあったことを全部話した。
「そうだったのか。
…悪かった!」
日比谷君は悲しそうな目で謝ってくる。
「アイツらがそんなことしてたなんて知らなかったし、婚約者なんて小さい頃にお遊びで言っただけだ。
俺が好きなのは澪だけだ!」
最後の言葉に胸が高鳴る。だめだ。きっと日比谷君は人を落とすことを目的としてる。ここで私が好きとバレたらもう相手してくれない。
「…。ありがとう。」
「澪は?好きじゃないか?」
下を向く。本当は大好き。今すぐにでも言いたい!でもだめだ。
「…日比谷君、本気じゃないのに言ったらダメなんだよ?」
言ってからハッとなる。言うつもり無かったのに!思わず顔を上げると日比谷君は必死だ。
「何言ってるんだ?
俺はいつだって本気だ!本当に澪が好きで!…」
「じゃあ、タラシを止めてから来てよ。そうじゃないと信じない。」
「あ、あれは!「治療ありがとう。またね。」」
日比谷君を残して保険室を去った。
「澪?どうした?」
人気のない廊下を歩いていると颯太に出会う。
「なんでもないよ。少し辛いことがあっただけ。」
「そうか?ってその顔どうしたんだよ!?」
颯太は私の顔の湿布を見て驚く。
「大丈夫。少し怪我しただけ。」
「まあ澪は昔から怪我してたからな。
覚えてるか昔さ、」
颯太は私を元気づけるためか、昔の面白い話をしてくれた。案の定私は笑えた。
「颯太ありがとう。じゃあ、またね!」
「元気になってよかったよ!またな!」
颯太と別れて歩き出して少しした時、
「澪!お願いだ!あいつの元には行かないでくれ!」
必死な日比谷君が来た。
「どうしたの?ごめんけど、今話したい気分じゃない…「タラシなのは違う!」」
「俺はずっと前から澪が好きで、澪が昔好きなタイプは誰に対しても優しい人って言ってたからそうしただけなんだ!」
「…それは、本当…?」
何を信じたらいいんだ?でも、本人が言うことが1番だよな。
「昔っていつから?」
「中学の頃から!
だから、あの事件のことも知ってる!なんならあの時俺が澪の友達に助けを求めに行ったんだ!きっと聞いたら分かる!」
あの事件。それは今でも脳裏をよぎる。
『先輩!やめてください!』
『澪は素直じゃないな。大丈夫だ。俺のことが好きなんだろ?』
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