第3話

「…日比谷君?」

こんな日比谷君、少し怖い。何かダメなこと言ったかな?私が見たことないだけで颯太と仲が悪いとか?

「…。」

無言の間が辛い。あんなに明るい日比谷君がこうなるなんて。日比谷君とは知り合ったばかりなのに優しい。そして颯太も同じくそう簡単に人を傷つけないだろう。ならどうして相性の良さそうな2人の仲が悪いのか。

「ひ、日比谷君、ごめんね。嫌だった?」

「あ、悪い。少し過去の嫌な記憶を思い出してた。澪に怒ってるわけじゃないからな。」

日比谷君はいつもの優しい顔に戻って私の頭をポンポンする。嫌な記憶、か。私にも強烈な嫌な記憶があるのと同じように生きてれば人は誰しも辛いことあるか。

「そっか。話せるならいつでも聞くからね!」

安心できるように背中を優しく撫でる。

「ありがとう。」

日比谷君は何かを隠して貼り付けたような笑みだった。



「おはよう!」

「おはよう。澪。」

あれから数日後、学校の日は毎日、電車で会って学校に一緒に行ってる。友達と行ってたから私と一緒に行かなくてもいいよ?って言ったら、

「澪が好きだから一緒に行きたい。だめか?」

と言われたから認めざるを得なかった。最初は好きと言われたから本気かと思っていたが、見ているうちに日比谷君は誰に対しても好きとは言わないが優しくスキンシップは激しく、褒めたたえている。それを見て彼の好きはきっと偽物で付き合って欲しいのも嘘コクみたいなものだろう。そう思ったら悲しさが出てきた。こうなるなら日比谷君の存在に気が付かなければよかった。日比谷君のことを好きになりたくなかった。

「澪ってさよく顔が赤くなるけど緊張しやすいの?」

え、赤くなってた?そう言わると熱くなる。しょうがないじゃん!だって好きなんだもん。でも言える訳もなく私は下を向く。

「そっか。少しづつでいいからせめて俺の前では緊張しないようになろうな!」

確かに緊張はしやすいけど、緊張のせいじゃないのに!でも本音は言えないから嘘をつこう。

「あ、ありが「透ー!」」

この高くて頭にキーンとくる苦手な声が聞こえる。またか。

「薫!よう!」

日比谷君は私に対してと変わらない笑みだ。日比谷君の友達の薫さんは多分日比谷君が好き。そしてよく一緒に居る私が嫌い。

「ねえねえ!私ね課題もう終わらせたよ!」

「マジか!早いな!今回は抜かされたな!」

「透?撫でてくれないの?」

私はビクッと揺れる。日比谷君のスキンシップに驚くのと同時に好きだから見るのが辛い。

「はいはい。よく頑張りました。」

「ありがとう!」

なんで日比谷君はそんなに優しい顔をするの?なんで私だけじゃないの?なんで?なんで?

そこでハッとなる。そうだよね。日比谷君の大切な人は私じゃないもんね。

「薫!来て!」

「はーい!」

友達に呼び出されて薫さんは行ってしまった。私は涙が出そうなのを堪える。

「澪、ごめんな、騒がしくて。それでさ、」

「ごめん。私、用があるから先に行くね。」

私は涙が溢れそうなので慌てて走ってその場を後にした。



「澪?元気ないね。どした?」

友達は心配してくれている。

「澪、大丈夫か?」

大好きな声を聞いて机に伏せていた私は飛び起きる。

「颯太…!」

颯太だ。颯太を見た瞬間に涙が溢れてくる。

「何かあったのか?」

違うクラスになってから颯太は学校行事で忙しくて中々話せなかった。だから、嬉しい。

「私、私ね、…。」

「分かった。後で聞くからとりあえず場所を移そう。」

颯太に支えながら教室から出ようとした時、

「澪!?」

「…。」

あまり聞きたくない声に顔を上げる。心配そうな目だ。

「おい!何したんだよ!」

「澪、行こう。」

颯太は日比谷君を無視して歩き出すと日比谷君に私は手を掴まれた。

「澪!何があったんだ?こいつに何かされたか?」

「…大丈夫だよ。颯太に泣かされた訳では無いから。少し話してくるね。 」

私は説明して日比谷君の手を振りほどいて歩き出す。

「…澪…。」



「ゆっくりでいいから話してくれ。何があったんだ?」

颯太は優しく背中を擦りながら聞いてくる。

「…。

あのね、日比谷君の事だけど、…」

私は日比谷君に助けてもらったこと、好きになったこと、日比谷君は実はタラシなのかってことを話した。

「そうか。澪もついに好きな人ができたか。でも俺は応援できない。あいつは悪い噂しか聞かないからきっといいことは無い。」

やっぱりそうか。みんな言うから本当なのだろう。でも、

「分かってる。でも諦めきれない。

恋人になりたいとかは願わない。だからそばに居たい。ダメかな?」

「…分かった。どうしても辛くなる前には諦めろよ?」

「うん。ありがとう。」

私は落ち着いたから教室に戻ることにした。



「澪!大丈夫か?」

颯太に話したら少し気持ちが落ち着いた。

「うん。心配かけてごめんね。もう大丈夫。」

「そう、か。今日もご飯一緒に食べれるか?」

「うん。いいよ。」

辛かったけど颯太に話したら自分の気持ちに整理がついてそばに居ても大丈夫になった。でもやっぱり心臓は少し早く鳴っている。

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