第14話 男性乗組員
会議室への往路は案内人がいたが、復路は順路を把握した事を前提とされ、ルウリーシア一人だった。
(話し合いは終わったものの、これって……どうやって戻ったらいいの? ライも、他の人達も覚えていたの? その前に、宇宙船の案内図を見ていたけど、何を話すのか緊張していたから、道筋なんて覚えていなかった、どうしよう……)
ルウリーシアは周囲を見渡したが、辺りに歩く人影は見当たらなかった。
(ミリディアのいる会議室に戻って、尋ねた方がいいかな? でも、そうしたら、さっきの会話の後なだけに、私が、てんでダメな人間に思われそう……取り敢えず、歩いていたら、どこかに船内の案内図とか有るかも知れない……)
会議室と反対方向に向かい歩き出すと、他の会議室のドアが開いた。
「おやっ、新人のお嬢さんかな? さては、帰り道に迷いましたか?」
ミリディアのスーツと同じ色調の長身の男性が現われ、ルウリーシアに笑顔で話しかけた。
(わっ、すごく紳士的な感じの乗組員さん! そういう風に声をかけられるって事は、やっぱり、私以外にも迷っている新人って多いのかも……良かった)
自分だけの落ち度ではないと捉えたルウリーシア。
「あっ、はい。案内された時には、緊張して、周りをよく見ていなかったので……」
「そういう感じの新人さんも、ごくたま~にいるから、安心していいよ」
「はい……」
(ごくたま~に……やっぱり、ダメ人間に思われていそう)
男性乗組員に安心するよう言われても、素直に受け取れないルウリーシア。
「もしかして、一緒に志願したツインレイの事でも考えていたのかな?」
ルウリーシアの表情が、ビクッとこわばった。
(言い当てられている! 私って、はた目からは、そういう風に見られやすいのかな? でも、そんな感じだったら、いっそ、あの件も訊いてみよう……)
「はい、あっ、あの……あなたの目から見て、私は、い、異性から感じられる、み、魅力度が低いのでしょうか?」
開き直ったルウリーシアが、男性乗組員に真剣に尋ねた。
「えっ、何を唐突に……!」
男性乗組員は、目を大きく見開いた後、大笑いし出した。
(な、なに……? 私、そんな変な事を訊いた?)
「あっ、いえ、あの、い、今のは聴かなかった事にして下さい!」
慌てて、質問を引っ込めようとしたルウリーシア。
「いやいや、撤回しなくても。そうだね~、体型的には物足りない感じかも知れないけど……まあ、希少価値として、スレンダーな女性を好む男性もいるから、そう悲観的にならなくていいよ!」
「はぁ、ありがとうございます……」
(希少価値……自覚無かったけど、私って、そんなに、見劣りするの?)
乗組員の返答に衝撃を受けたルウリーシア。
「あっ、大丈夫だって、そう落ち込まなくても! 僕もそういう感じ、キライじゃないし!」
(社交辞令見え見えって感じで、この人に好かれても、あまり大丈夫な気がしない……第一、この人は何者なの?)
「お気遣いありがとうございます。ところで、あなたはどなたですか?」
「あらら~、僕の事は、ミリディアから聴いてなかったのかな? 僕は、このフロンティア隊の副隊長、メリストスだ」
急に胸を張り、自己紹介したメリストス。
「あっ、副隊長さんでしたか、失礼しました! 私は……」
「言わないで、当ててみせるから! アクエリーシア星からのライリーシアだね!」
自信たっぷりにルウリーシアの言葉を遮ったわりに、名前を間違えたメリストス。
「いえ、それは、私のツインレイの方です。私は、ルウリーシアです」
「おおっ、それは失敬! そうか、ルウリーシア、君のような隊員が加わってくれて、嬉しいよ! これから、よろしく!」
「あっ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
(この副隊長さん、なんか少し変わっている感じだけど、悪い人ではなさそう。ミリディアといい、この宇宙船の人達、良い人が多そうなのは嬉しい)
「という事は、そうか……その前に、ミリディアの所から出て来たイケメン君が、ライリーシアか」
「多分、そうだと思います」
(この人、新しい隊員に興味津々で、何度も会議室から出入りししてチェックしていたの……? すごく好奇心旺盛な人みたい)
「なるほどね、君達ツインレイにとって、この乗船期間や地球滞在期間は、かなり精神的にダメージが来そうだね。特に、ルウリーシア、君の方は……」
(また、それ……)
ミリディアとの話を蒸し返され、溜め息を小さく漏らしたルウリーシア。
「まあ、でも、何か有った時は、僕を頼りにしたまえ!」
そう言いながら、ルウリーシアの背中をバシバシ叩いたメリストス。
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