第11話 論外な提案
「どうする、ルウリーシア?」
記憶削除という提案について、ルウリーシアの意向を確かめたいミリディア。
(どうするって言われても……ライだって、そんな事は望んでないはず! さっき戻って来た時だって、私にいつも通り話しかけてくれていた。ライが、私との思い出を留めているのに、私だけが、その記憶を失う事なんて出来るわけがない!)
「私は、ライと一緒に過ごしてきた記憶を失いたくないです!」
キッパリと言い切ったルウリーシアに、ミリディアは溜め息を漏らした。
「今は、そう言えてもね……もっとよく考えてみて、ルウリーシア。その記憶が有るせいで、この宇宙船の中でも、地球に降り立った後も、あなたは苦しい想いをし続けなくてはならないのよ」
「ライとの記憶を無くする事に比べたら、どんなに苦しくても、我慢できます!」
揺るがない意思表示をしたルウリーシア。
「分かったわ。そうね、今じゃなくても、下船する前までの期間なら、いつでも記憶は消去出来るから、決心がついた時に来るといいわ」
ミリディアが念押しした事で、過去のフロンティア隊のツインレイに、そのように辛そうな前例が有ったのか気になったルウリーシア。
(この隊長さんは、別に脅そうとしているわけではなくて、本当に私の心配をしてくれて言っているのかも知れない。そうまで、私に勧めて来るという事は、多分、今まで、私のようなケースのツインレイ達が少なくなかった……?)
「今までのフロンティア隊で、記憶を削除した人は、随分いるんですか?」
「記憶を消すなんて、今のあなたには想像も及ばないかも知れないけど、その数は少なくないから安心して! あなた達のようなツインレイの絆が強めの惑星出身者達の3割くらいは、自らの意思で消去していたのよ」
「3割も……ですか?」
その数値の多さに愕然となったルウリーシア。
「そうせずにいたツインレイの中には、気が触れたり、殺傷行為も見られたから、それ以上、記憶を留めておくのは危険と判断し、強制的に記憶消去させる事例も有ったわ」
「強制的に記憶消去……」
自分の意志を貫く事も出来なくなる事態も、過去に見られたと知り、戸惑うルウリーシア。
「せっかく、志を持ってフロンティア隊に加わった人々が、目的を達せず最悪の事態に陥らせないよう、私も、未然に防げるものなら防いでおきたいのよ」
ミリディアが、決して意地悪で言っているわけではない事は、ルウリーシアにも分かっていた。
狂気や殺傷、そのような類の言葉が、この美しいミリディアの口から、ただの思い付きで出て来るとは思わなかった。
(気が触れる……、殺傷行為……、聴いた事は有るけど、アクエリーシア星では、全く縁の無い物騒そうな言葉。まさか、私が生きているこの現実で、そんな事が本当に起こり得るなんて信じられない……)
「そういう異常事態が起きるのは、ツインレイの二人が同時にですか? それとも、片方だけ?」
ツインレイは、意識が繋がっている。
だとすれば、一方が辛い時には、もう一方もその相手の辛さを感じ取って、同時に辛くなるのでは……?
「宇宙船内でテレパシーが出来る状態なら、二人同時にも有り得ると思うけど、この宇宙船のように、テレパシーが遮断された状態だと、どちらか片方だけが辛い立場になりやすいわ。特に、あなたやライリーシアのような感じのツインレイは……」
(また、私とライが悪い方の例えにされている……よく分からない、どうして、そういう風に言われるのか)
自分達の存在が、周りの参加者達に比べ、どう異なる状態なのか見当が付かなかったルウリーシア。
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