第8話 テレパシーさえも

 シェイプシフトが出来ないと聞き、今後ずっと、今の姿でいなくてはならない事に衝撃を受けたルウリーシア。


(今までは、シチュエーションや衣装に合った姿に変わって楽しんでいたのに、その自由も奪われてしまうなんて……)


「私は、地球でずっと、周りの女性達に比べて貧相なこの体形のままで、何度も転生する事になるのですか?」


 単刀直入に尋ねたルウリーシア。


「そうね、魂の記憶というのが有って、生まれ変わっても、同性の場合は、ほぼ似たような姿で生まれて来る事になるわ。生まれる地域によって、若干、顔の外観や体形に相違は有るけど、瞳と声と手の形などの印象はほぼ変わらないわ。ただし、それは、地球での話よ。乗船中の今ならまだ、その基本形を変えたいという願望が有るなら許可するわ。ルウリーシアは、どうしたいかしら?」


(この基本形を変える……? 確かに、他の女性達のように、見映えするグラマラスな姿は憧れるけど……ライの面影と似ている私のこの姿を変える事なんて出来る? もしも、地球で転生した時に、パッと見た目で手がかりになるはずの大事な特徴を今、私は、ここで捨ててしまえるの? 第一、さっき、ライは見慣れている基本形のままの姿で戻ったのに……)


「基本形は、変えたくないです!」


 迷う事無くキッパリと言い切ったルウリーシア。


「そうでしょうね。あなたは、ライリーシアによく似ているから。私は、隊長という立場上、これまで色んな星のツインレイを見て来たのよ。ツインレイと一言でいっても、似ているかどうかは、星系によっても個体差が有るのだけど、あなた達二人は、かなり似ている部類に入るわね」


 ルウリーシアの姿を見つめ、先刻、この場に来ていたライリーシアの姿を思い浮かべながら言ったミリディア。

 

(私達、他のツインレイ達に比べて、かなり似ているんだ……それなら尚更、もうこれからは、ライと逢えなくなるんだから、ライの姿に似ているこの容姿まで失う事なんて出来ない! そんな事をしたら、地球に降り立ってからは、ライの事を全く感じ取れなくなってしまうから! 良かった、ライが基本形を変えないでいてくれて……)


「ライリーシアも変えなかったのだから、私もこのままでいたいです!」


 断言するルウリーシアを前に、躊躇ためらうような表情になるミリディア。


「そうね……そういう気持ちでいるあなたにとっては、耳が痛いような内容かも知れないけど、一応、伝えておくわね。あなた達ツインレイは同じ容姿をしているけど、異性から感じられる魅力度は、随分、差が生じているわ」


「異性から感じられる魅力度……ですか?」


「それが、二人とも対等な感じなら良かったのに。残念ながら、あなたより、ライリーシアの方がはるかに上なのよ!」


 ミリディアの発言をすぐに把握できなかったルウリーシア。


(異性から感じられる魅力度……って、何の事? ライの方が、私よりもはるかに上……?)


「み、魅力度って、どういう事ですか?」


 見当が付かない様子のルウリーシアに、どう伝えてよいのか困惑した面持ちになるミリディア。

 

(隊長さんは、言い難そうにしている。だったら、いっそ心を読むのはどうかな?)


 ミリディアの心を探ろうと試みたルウリーシア。


(あれっ、読心が出来ない! でも、この部屋のせいなのか? もしかして……この宇宙船全体がそうなのかな? そういえば、さっきも、ライからは返事が無かった……)


「ルウリーシア、もしかして、私の心を読もうとした? ここでは、それは無駄なのよ。後から、有志達全員に説明するけど、この宇宙船の中は、テレパシーは禁止よ。今までの生活と比べて、色々不便が生じていると思うけど、それも、これから向かう地球環境に少しずつ適応させる為よ」


 地球に着いてから、急に生活が変わるわけではなく、この宇宙船に乗船した時から、既に地球的生活を強いられていた事にやっと気付けたルウリーシア。

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