第3話 同意
イリュージョンは二人の心模様を反映し、雲行きが怪しくなり、しばらくすると小雨が降り出した。
小雨は、イリュージョンの産物である植物や動物、地面を潤していたが、二人は瞬時に、防御用の透明な簡易バリアで自分達の身の回りを囲った。
「私だって、ライと離れるのは辛いわ! ライといつまでも、この星で一緒にいる事の方が幸せって思っているけど……ただ、このままだと、心の奥で、何かずっと満たされないものが有るの。それが何なのか、確かめたいから!」
「その為に、気が遠くなるくらい長い間、僕らが離れ離れになるとしても……?」
それほど長期間、ルウリーシアと離れ離れになるくらいなら、地球への志願を止めさせたいライリーシア。
「ライ、私達ツインレイは二人で一つだから! たとえ、身体が物理的に離れていても、心はいつでもライと一緒にいるって感じている!」
「僕は、離れてしまったら、もうルウを近くに感じる事なんか無理だ! ルウがそばにいてくれなかったら、僕はどうやって生きていけばいい?」
ライリーシアは、これから先の想像をしただけで絶望的な気持ちに駆られ、その気持ちのままルウリーシアを強く抱き締めた。
顔の造作は似ているが、かなり華奢で頼りなげな彼女の身体からは、彼の言葉を受けて、戸惑いの感情が伝わって来た。
ルウリーシアの身に、万が一何か有ったら……
彼には、
「落ち着いて、ライ。これは、永遠の別れじゃないから! いつかまた、私達は必ず出逢えるようになっているはずなの! きっと、自然と導かれるように、また再会出来る! だって、私達の魂は元々一つなんだから! 再会した時は、ずっとずっとお互いに起きた出来事を話しましょう! テレパシーなんかじゃなく、声を出して。私は、ライの声も大好きだから!」
潤んだ大きな瞳で訴えるように、ライリーシアを見つめるルウリーシア。
「僕も、ルウの声が大好きだよ! 歌う声も話す声も、独り言のようなささやき声も全部……」
『ルウの声、ずっと、覚えていられたらいいのに……』
まだ、テレパシーを使用していたものの、ライリーシアが久しぶりの笑顔を見せた事で、ホッとしたルウリーシア。
二人を取り囲むイリュージョンは、雨が上がり、二重の虹が現れた。
「ライ、見て! あれが、虹よ!」
「未開の惑星だけど、こんな美しい現象も有るんだな。本物の虹を観に行くのも、悪くないかも知れない……」
ライリーシアが、地球へのボランティアについて、初めて肯定的な言葉を発した事が、喜ばしいルウリーシア。
「そうでしょう! 虹だけではなく、特定の地域でしか見られないけど、オーロラという光のカーテンのような現象も、地球には有るそうよ!」
「それは興味深いけど、その時には、ルウが隣にいて欲しい」
「ライ、それは……」
「分かっているよ。いつか、お土産話の自慢をし合おう!」
「そうね!」
二人が顔を見合わせて笑った瞬間、頭上から虹色の光が降り注ぐように、オーロラのイリュージョンが展開された。
見上げた二人の感動顔を祝福するように、オーロラは更に広範囲に広がって行った。
「キレイだな! 本物じゃなくても、ルウと観られて良かった!」
「ライの心が、地球行きに同意してくれたおかげよ! ありがとう!」
爪先立ちで背伸びしてもまだ届かないライリーシアの額に、両肩を掴んで前かがみにならせてから、ルウリーシアは額を合わせた。
二人の心のエネルギーが、額を通じて交流し合い、心も体も心地良い波動に満たされる。
それは、アクエリーシア星人の最大の愛情表現。
この星のツインレイ達は、いつでもそうして、互いの感情を確かめ合い、エネルギーを交流し合っていた。
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