第28話 山神

俺達はなんとかあの山から下りた。そこでちょうど笹崎先輩の行方を探していた学校の先生と会った。奏多さんと先生は何か話していたけれど雲行きが怪しい。他の先生も途中できて難しそうな顔で話していた。その中に担任の花ちゃんもいた。もしかしたら、奏多さん疑われてる?花ちゃんに声を掛けたら違う所に誘導された。


「花咲先生」


「蒼井くん、どうしてここに?」


「蒼井さんと歩いていたら凄い形相の先輩を見つけたんで蒼井さんと追いかけました。」


「そう、蒼井くんは蒼井さんと知り合いなの?」


「はい、知り合いです。」


「本当に?」


「本当です。なんなら母に確認してもらって構いません。」


「分かったわ、ありがとう」


花ちゃんは少し考え込んでから他の先生の所へ行って何か言っていた。奏多さんに頭を下げていたから誤解は解けたみたいだ。俺はホッとした。先生方に笹崎先輩を引き渡して俺達はやっと息をつくことができた。


「悠加、ありがとう。あと少しで警察行きだったよ」


「いえ、誤解が解けて何よりです」


とりあえず、目の前の危機は去った。けれどこれからの事を考える方が大事だ。


「奏多さん」


「一旦家に帰ろうか。悠加も熱が出始めてるんじゃないか?」


言われて見れば身体が重い。多分危ない状況にいたから気づかなかったんだと思う。ちょっと息苦しい。


「抱えて行きたい所だけど先生方の目があるから」


「大丈夫です。歩きます」


「本当に無理だったら言うんだよ」


俺は頷いて奏多さんの車が止めてある方に進む。チラッと振り返ると先生達は笹崎先輩を車に乗せていて何人かはこちらを見ていた。いつも忘れそうになるけど奏多さん、人気俳優なんだなって思い出す。


もしかしたら学校で何か言われるかも...面倒だなそう思っていると車に着いた。辛くなったら横になりなさいと後ろに乗せられ出発しようとしたところで窓に影がかかった。奏多さんも気づいたようだ。


車の外にはさっき俺達を逃がしてくれたうちの1人がいた。奏多さんが窓を開けると


「話がしたい」


との事だった。家には結界が張ってあるからここで聞く事にした。


私達は山神様を守る者だ。あの時、山神様の使いを終えて山に帰ると山は火の海でもうどうにもできない状態であった。そしてその山火事が起こっている近くで狂ったように笑っていたのがあの人間だったのだ。あの人間が山火事を起こした犯人だと知って生き残った者達は復讐をしようと考えていた。しかしそこに待ったをかけたのが山神様だ。山神様は人間が大好きな御方だったから、人間に手を出す事を禁じられいた。だから復讐など考えず今生き残った者達で早く山を元に戻そう、そう仰られた。山神様は率先して山を元に戻そうと尽力を尽くしていた。それなのにまたあの人間が来てずっと陰気を放っていくのだ。最初は山神様も陰気に抵抗しておられたが、山火事のせいで力のほとんどを失っていたから耐えきれず黒いナニカになってしまった。ああなってしまっては他にも被害が行くそう思ってなんとかあの洞窟に封じたのはいいがそれ以上どうすることも出来なかった。しかしそう嘆いていた時に現れたのがお前だ。お前が来てから山神様の力は増し、あの人間にも印をつけられたのだろう。復讐できるそう思っていたのに山神様の言葉が頭から離れんのだ。気付けば私達はお前達を守り今に至る。


「頼む、山神様を助けて欲しい。山神様が印を刻む程のお前なら何かできるのではないか?山神様を助ける為なら私達はなんでもする。頼む」


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