第27話 対峙

真白は山に着いた途端俺を振り下ろして物凄い形相で文句を言っていたが俺はそれ所ではない。真白への謝罪は程々に俺は走り出した。


笹崎先輩が何処にいるか分からない。だから今は洞窟の近くにいるだろう奏多さんの所なの行くのが一番いい。奏多さんのお守りのおかげなのか奏多さんが何処にいるか分かる。俺はお守りが示す方向に進んでいく。そうすると洞窟近くの開けた場所に奏多さんはいた。


「奏多さん!!」


「悠加?どうしてここに⁉︎」


「ハァ、ハァ、多分ここに山火事を起こした犯人が来てるはずなんです!俺と同じ痣の刻まれた女の先輩が」


奏多さんは一瞬驚いたような表情をしたがすぐに気を引き締めて


「分かった、ありがとう。でも今すぐここから逃げるんだ。ここは危険だから早く!」


その時洞窟の中から黒いナニカの触手が俺の片足に絡みついてきた。


「悠加!」


「うわっ」


奏多さんがすぐ術で触手を引き離してくれた。


「悠加とりあえず下がって!」


俺は言われた通りに後ろに下がった。振り返ると黒いナニカが洞窟から出てきていた。


デカい。この前見たやつよりデカい。図体がデカい分動きが遅い。けれど触手の動きが早い。触手を伸ばしながら俺の方に近づいてくる。

奏多さんの陣まではあと少しだけど俺に向かってくる触手の方が早い!


「悠加はやらせへんで!」


「真白!」


間一髪の所で真白が助けてくれた。奏多さんの方を見ると黒いナニカが陣の中に入っていて奏多さんが詞を唱えている。


「ちゃんと見とけ!ボーッとしとったらアカンで!」


「分かってるよ!」


俺はまだまだ未熟だと痛感させられる。奏多さんはあのデカいのを相手に怯むことなく事を進めていく。


黒いナニカが陣の中でもがいている。もう少しで解放が終わる。そう思った時


「きゃはははははっ」


俺は笑い声のした方を見る。そこには


「笹崎先輩」


行方を探していた先輩がいた。何かブツブツといいながら黒いナニカの方へ進んでいく。黒いナニカを見るとさっきよりもさらに強く抵抗している。


このまま進めばあの黒いナニカのいる陣に入ってしまう!


「あ、待て!悠加!」


俺は真白の静止も振り切って笹崎先輩に向かって走り出した。お願いだ。どうか間に合ってくれ!


「私が...なった...せい。ゆ...い...ゆ...な...。」


あと少し!


「全部お前のせいだぁ!消えてしまええ!」


笹崎先輩がそう叫んだ時パリンと陣が壊れる音がした。無数の触手が笹崎先輩の方へ向かっていく。俺は笹崎先輩に飛びついて巻き込みながらゴロゴロ転げていった。笹崎先輩は衝撃のせいか気絶しているようだった。


「「悠加!!」」


前を向いた時には触手が目の前まで迫っていた。間に合わない...そう思った時


「早く逃げろ!人間!」


「主様!お願いです!お気を確かにお持ち下さい!!」


角の生えた2人組が触手から俺たちを守ってくれた。


「あなた達は...一体?」


「悠加!大丈夫か!?」


「はい...大丈夫です。笹崎先輩も無事です」


「心配さすな、アホ悠加!」


「真白もゴメン」


「もたもたするな!早く逃げろ!我らとてそう持たん!」


「悠加、立てる?この人達の言う通りにしよう。急いで!」


「はい!」


奏多さんはスッと笹崎先輩を抱え、俺たちはあの2人組に黒いナニカを任せて急いでこの場所から離れた。

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