第22話 熱
熱い。痛い。俺は一体どうなるんだ。体が燃えるように熱い。苦しい。熱くて痛くて苦しくて体を動かそうにも鉛でもついているのか動かせない。俺は確か気付けば洞窟にいてそれからどうしたんだっけ?確か…
「んっ…」
「悠加、気分はどうだい?」
「しんどいです」
しんどいどころか苦しいし熱いし痛い。声を出すのも疲れる。
「ここは…」
「ここは僕のもう一つの家だよ。詳しい事は体調が良くなってからね。静香さんには熱で倒れたところを僕の家で保護してるって伝えてあるから大丈夫だよ」
俺はもう声を出すのも億劫で頷くことしかできなかった。
「さ、もう少しお休み」
奏多さんに手で目を覆われて俺はまた眠りについた。
「真白、報告してくれる?」
「ああ、奏多の予想通りやったわ。ホンマにコイツは世話の焼けるやつや」
「ありがとう。真白は悠加についていてくれ」
「分かった」
僕は部屋を出る前にもう一度悠加を見る。悠加の顔全体に覆うような痣が刻まれている。おそらく身体にも刻まれているだろう。悠加の力が強くなければあの時、間に合わなかったかもしれない。僕のお守りを抑え付けられる程の力を持った程の妖。悠加は絶対に連れて行かせない。僕の命に変えても…
『熱い』
『痛い』
『苦しい』
『どうして』
『どうして!!』
「うっ」
俺は身体の痛みに耐えかねて目が覚めた。枕の横で真白がスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。俺は痛む身体をゆっくりと起こすと辺りを見渡す。奏多さんはいない。
御手洗いを借りるついでに奏多さんに話を聞きたい。俺はフラフラとした足取りで部屋の扉を開けたら、背中を向いているソファからはみ出してる足が見えた。窓を見ると外は真っ暗でどうやら夜になってるみたいだ。
なんとなくソファに近づく。上から覗くと寝姿もかっこいい奏多さんがいた。奏多さんはどうして俺にこんなに良くしてくれるのだろう。俺はただの高校生で奏多さんにはなんのメリットもないはずだ。どうしてだろう。しんどいからかいろんなことが頭をよぎる。これ以上はいけないと思って奏多さんのブランケットを直そうと手を伸ばしたら手を掴まれた。
「悠加?」
「えっとごめんなさい。御手洗い借りたくて」
「それなら廊下に出てすぐの右側の扉だよ。1人で行ける?」
「はい、大丈夫です」
後ろを振り返ると奏多さんが欠伸をしていた。本当に起こして申し訳ない。
俺が御手洗いから戻ると奏多さんは電気をつけて待っていてくれた。ソファに座ると
「調子はどう?」
「まだしんどいのと熱いし痛いし苦しいです。多分顔とかにある刺青みたいなのが原因かと思います」
「うん、教えてくれてありがとう。そろそろベッドに戻ろう」
「あと、夢か分からないけど変な声が聞こえます。熱い、痛い、苦しいって声が」
「そう、また聞こえたら教えてくれる?」
俺は頷いてフラフラと立ち上がりベッドに戻っていく。扉を閉める直前奏多さんを見ると難しい顔で何か考えているようだった。
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