第19話 悪戯

お風呂から上がると着替えが置いてあった。流石に制服はびしょ濡れだから着ることができない。すごいありがたいのだが、一つ問題がある。服がサイズが違うから彼シャツ状態になっている。ウエストも違うからどれだけ頑張ろうとずってくる。この状態で行ったらきっと俺が変態になってしまう。そんな不名誉はごめん被りたい。だからと言って濡れている制服を着ることもちょっと避けたい。さぁ、どうしようかと思案していると


「悠加、ちょっと失礼するよ。服のサイズが合わないだろうから着物を持ってきたんだけど着れるかい?」


「奏多さん、これ狙っている訳じゃないですよね?」


「何のことかな?よく似合っているじゃないか。着物はいらないね?」


「いります」


この人俺で遊んでるんじゃないだろうか。体格さがあるからサイズが違うのは丸分かりだろうに。俺の反応を見て楽しんでいる気がする。奏多さんは着物を渡してる途中で連絡が来たみたいでちょっとごめんと出て行ってしまった。これどうやって着るんだろう?見様見真似でやってみる。そうすると案外うまく行ったのではないだろうか。初めて着たけどちゃんとできた気がする。


「きゃははっ。それじゃあの世行き〜」


俺は恐る恐る後ろを見た。けど何もいない。

下を見ても何もいない。じゃあ何の声?


「こっちだよ〜。こっちこっち」


今度は後ろから声がした。振り返ったら逆さまに浮いている女の子がいた。


「ばあっ」


「うわぁっ」


「きゃはははっ。腰抜け腰抜け」


俺は驚いた拍子に尻餅をついた。でも驚きすぎて痛みも感じない。心臓がバクバク言ってる音が聞こえる。この子は誰⁉︎俺が驚いたのが面白いのかずっと笑っている。廊下の方からはバタバタ走ってくる音が聞こえた。


「悠加!何かあったのか?」


奏多さんが来た。けれど女の子が笑っているのを見て状況を理解したのか呆れたようにため息をついていた。


「光莉、無闇矢鱈に人を驚かしてはいけないと言ってるでしょう」


「は〜い、ごめんなさ〜い」


そう言って女の子は消えていった。


「ごめんね、悠加。あの子は人を驚かすのが大好きなんだ。最初のうちだけ我慢してくれないか。そのうち興味をなくすはずだから」


「…はい」


「着物も上手に着れたみたいだね。ってそのまま外に出るのはダメだね。死人になってしまう。直してあげるから立って」


奏多さんにもそう言われて俺は立とうとした。けれど、


「あの…」


「どうしたんだい?」


「……ません」


「ごめん、聞こえなかったからもう一度」


「……腰が抜けて立てません」


驚きすぎて本当に腰を抜かしてしまったみたいだ。恥ずかしすぎる。何度も立とうとはしているのだけど力が入らない。本当に恥ずかしい。奏多さんを見ると目を丸くした後何か思いついたようにニコニコしていた。嫌な予感がする。


「後で光莉にはキツく言っておくね。とりあえず部屋に移動しようか」


そう言って俺に近寄ってきて、


「な、な、何して⁈」


あろう事かお姫様抱っこをしてきた。


「おっと暴れたらダメだよ?落ちちゃうから。落とすつもりは無いけど」


俺はもう恥ずかしすぎて声も出せず顔を覆うことしか出来なかった。



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