第18話 接近

あれから数日経ったけど、あの時以来あの着物の女の人は見ていない。やっぱり俺の気のせいだったのか。そう思っていたのに今日たまたま校門の方を見てみるとそれはいた。今日も土砂降りの中、蛇の目傘を差し綺麗な着物で立っている。休み時間になっても立っている。俺は妖かどうか確かめるために臣に声をかけた。


「なあ、臣。校門のところに綺麗な女の人が立ってるぞ」


「何⁉︎本当か⁉︎」


聞いた途端に窓際に近づく臣。着物の女はずっと立ち続けている。


「何だよ!誰もいないじゃないか!俺を騙したな」


「この前俺をチビって言ったお返しだ」


「直接的には言ってないじゃないか」


「へぇ、内心では俺の事チビって思ってるんだな」


「あ、あ、俺トイレ!」


全く分かりやすすぎる。でも、臣のお陰であれが妖ということは確定だ。何か学校には入れない理由でもあるんだろうか。いや、むしろ入ってこないほうがいい。何が起こるかわからない。…そういえば学校で妖を見たことがない気がする。小さい妖とか居そうなのに隠すのをやめてからも一度も見ていない。何か理由でもあるんだろうか。時間があれば学校の歴史でも調べてみるかな。







今日は奏多さんのところに顔を出す日だ。今日と明日はお休みらしい。真白が昨日伝えにきてくれた。スマホに連絡入れてくれればいいのにと思ってたら真白が


「もう限界やねん。悠加なんかオヤツくれ」


どうやらまだまだ罰は継続中らしい。奏多さんの怒りはまだ治らないみたいだ。可哀想になってきたからウチに置いてあったお饅頭をあげた。久しぶりに甘いものを食べれて満足した真白はまた明日なーと飛び立って行った。口の周りを食べカスだらけにして。


奏多さんには早く休んでほしいから早く行って早く帰ろう。足早に挨拶をして校門の方へ向かうと何故か今日はまだあの着物の人が立っていた。周りのみんなは気づいていない。俺もこのまま通り過ぎようとした時


「…み…た。や…け…た」


こんな感じの声が聞こえてきた。雨が土砂降りに降っているはずなのにはっきりと聞こえた。多分これはマズイ。危険な妖かもしれない。俺は雨に濡れるなんてお構いなしに奏多さんのいる神社まで走って行った。








神社に着くと不思議なことに雨が降っていなかった。何故と思って一歩鳥居の外に出ると雨でずぶ濡れになった。この空間が不思議なだけだったみたいだ。相変わらず桜は満開で綺麗に咲いているし今日桜の近くに咲いている花は紫陽花だ。季節通りだけど赤、青、それに珍しい白色まで咲いている。きっとこの空間にいたら土壌も関係ないんだろうなって思った。


「いらっしゃい、悠加。待ってたよ」


「こんにちは奏多さん」


「ってずぶ濡れじゃないか!このままでは風邪をひいてしまう!お風呂を貸すから入っておいで」


「拭くものをかしてくれるだけで助かるんですけど」


「悠加」


「はい、お言葉に甘えさせていただきます」


有無を言わせない圧が奏多さんから感じられた。奏多さんは一度決めたことは本当に譲らないほど頑固だ。真白も奏多さんのこういうところには敵わないみたいでやばい気配を察知するとすぐにいなくなる。


「悠加、早くおいで」


「あ、はい」


とりあえずお風呂を借りてからさっきの着物を着た妖について聞いてみよう。




















奏多さん家のお風呂は温泉でした。とても気持ちよかったです。本当に何でもありだなこの空間。

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