2章

第17話 雨

あれから俺は妖達の事について奏多さんから色々教えてもらった。難しい事も沢山あるけれど少しずつ自分の知識になっていくのが本当に嬉しい。そしてもう1つ変化があった。俺は前まで人とは違うものが見える事を必死隠していた。でも、前みたい隠そうと意識しなくなったからか俺の視界に妖が度々入るようになった。奏多さん曰く俺は力が強いから無意識的に視界に入らないようにセーブしていたのではないかと言われた。俺の力はどのくらい強いんだろうか?真白が言うには相当強いみたいだけど俺には正直分からない。


「は〜るっ!何考えてんだ?彼女でもできたのか?」


「うっ!後ろから飛びついてくるな!危ないだろ!」


こいつは俺の同級生の稲葉晴臣。俺と同じはるが付く名前ということからよくつるんでる。少しうるさいのが玉に瑕だが。


「だってよー、お前なんか最近変わったじゃん?前は長い前髪でちょっと近づきにくい雰囲気出していたのに急に切ったりなんかするからみんな気にしてんだぜ。なんせ前髪を切ったら超美形が出てきてるんだから」


「何を訳のわからないことを言ってるんだ。彼女もいないし前髪を切ったのだってただの気分だよ。人がすることにどうしていちいち理由をつけたがるんだよ?」


「んなもん、女子たちに聞いてくれよ。俺は頼まれてるだけなんだから」


コイツ女子たちと取引してるな。俺のことを聞き出す代わりに何か要求しているはずだ。コイツはそう簡単には頼み事は引き受けてくれないから。


「それよりも窓の外ずっと眺めてどうしたんだ?梅雨入りして雨しか降ってないのに何か面白いことでもあったのか?」


「何もないよ。それよりも重たいからそろそろ離れろ!」


「うーん、悠と俺の身長差がちょうど良くてつい、」


「俺がチビだって言ってんのか、臣?喧嘩なら買ってやるぞ?」


「や、ごめん!!次は移動教室だから俺先に行ってるな!」


臣はそう言って逃げた。もう少しすれば俺の身長も成長期でグングン伸びていく…はずだ。まだ時間があるから目線を窓の外に戻す。そうしたらこんな土砂降りなのに蛇の目傘を持って着物を着た綺麗な女の人が立っていた。学校へ用があるんだろうかと思っていたら


「あ、あの蒼井くんよかったら何だけど今度の休みの日にみんなで遊びに行くから一緒に行かない?」


「ごめん、今度の休みは予定があるんだ。俺以外のみんなで楽しんできてくれ」


「そう…急に誘ってごめんね!また今度行こうね!」


「ありがとう、予定が合えばよろしく」


俺は会話が終わるとさっきの人が気になってまた窓の外を見た。


「…まだいる」


こんなに土砂降りなのにまだ校門のところに立っていた。綺麗な着物を着ているんだから早く学校に入ってくればいいのにそう思っていると予鈴のチャイムが鳴った。次は移動教室だから急いで行かなければいけない。最後にもう一度窓の外を見た。あの着物を着た綺麗な女の人はいなくなっていた。



授業が終わり何故かどうしてもあの着物を着た人のことが気になって話しかけてきた女子に聞いてみたらそんな人いなかったと言われた。もしかしたらあれは妖だったのかもしれない。でもなぜ校門のところに立ち続けていたのだろう。


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