第16話 契約
「詐欺だなんて酷いな。ちゃんと言質はとったでしょ?」
「あんな騙し討ちで言質をとったとは言いません!とにかく俺は契約なんて結びませんからね!」
「まぁ、蒼井くんには拒否権なんてないんだけど」
「え?」
そう言った齋藤さんは俺に近づくと流れるような仕草で俺の手を取り口付けた。
「な、な、何して⁈」
「蒼井くん顔が真っ赤だよ?可愛いね」
齋藤さんはクスクスと俺の反応が面白いからか笑っている。齋藤さんは自分がイケメンだという事を自覚してるのか?あんな自然に行動されたら驚くに決まっている。もし母だったらきっと気絶しているはずだ。
「うん、綺麗にできた。蒼井くん右手見てみて」
言われるがままに確認すると俺の手の甲には綺麗な紋様が描かれていた。俺は口をハクハクさせて齋藤さんをみた。
「契約とは言ったけどお守りみたいなものだよ。君に何かあれば僕の所のにそれを通じて伝わるし逆もまた然り。君を1人にすると何しでかすか分からないから僕にとっては保険みたいなものだよ」
ほらっと齋藤さんが見せてくれた右手には俺と同じ紋様が刻まれていた。それなら最初から契約とは言わずにそう言えば良かったのでは?俺が疑問に思っていると急に説教が始まった。
「蒼井くん、こちらではね口でした小さな約束事も守らなければいけないんだよ?契約や約束を破ることはルール違反だからね。さっきみたいに何も考えず肯定していたらいつか皺寄せが自分に来るよ?これみたいに」
齋藤さんが右手をひらひらさせている。確かに何も考えず全部はいって言った俺が1番悪いな。これは齋藤さんからの洗礼と言った所だろう。これを機会に気を引き締めろっていう洗礼。
せめてもの抵抗にニヤニヤしている齋藤さんをきっと睨んで
「…これからもっと精進させていただきます。」
「うんうん、その調子で頑張ろうね。これからよろしくね、蒼井くん」
「はい、齋藤さん。これからよろしくお願いします」
これからどうなるか分からない。でも俺は俺のできる事を精一杯する。あの時みたいな事が起こらないように俺はもう逃げない。
「あ、そうだ。蒼井くんの事悠加くんって呼んでいいかな?僕の事も名前で呼んでくれると嬉しいな。」
「はい、良いですよ。呼び捨て大丈夫です。奏多さん」
「ありがとう、悠加」
奏多さんは何故か物凄いご機嫌で俺にお菓子を勧めてくる。名前で呼ばれることが嬉しかったのだろうか。この人もまだまだ謎だらけだ。これから沢山知っていけるといいな。
この後お菓子を食べすぎで晩御飯が食べれなくて母さんからオヤツ禁止令が出ました。奏多さん許すまじ…
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