第15話 望み


「さぁ、これからのことを考えようか」


「はい」


俺は今まで普通に生きようとずっと目を逸らしてきた。自分が見えることも何もかも。齋藤さんにあんな偉そうことなことを言っておいて俺が逃げるなんてあり得ない。俺も変わらないと。でも、そのために妖の事や齋藤さんたち黒い何かを払っている人たちのことその他いろんな事を俺は知らないといけない。


「僕は君にあまりこちらのことに関わってほしくないと思う」


「え、どうして?」


「君の力を妬んでいっているわけではないよ。この前は運が良くて怪我もしなかったけど、今度は怪我どころじゃ済まないかもしれない。最悪命を落とすこともある。だから僕はこれまで通りこちらの事に関わらず普通に生きてほしい」


齋藤さんの言いたい事は痛いほど分かる。俺だってもし齋藤さんの立場なら生死の分からないこんな危険なことに他人を巻き込みたくない。でも、


「齋藤さん、俺は今まで自分が見えることを隠して普通に生きてきました。でも俺はこのままではダメだと思うんです。俺が知らないせいで何か取り返しのつかない事が起こった時きっと俺は俺を許すことができません。もし知っていたら防げたかもしれませんから。今の俺に出来る精一杯の事を俺はしたい。だからお願いします。俺に妖達の事や色々な事を教えて下さい」


齋藤さんはまっすぐ俺を見つめてくる。そして

大きく息を吐き出して


「分かったよ。でもこれだけは約束してほしい。危険だと思ったらすぐに逃げる事。そしてナニカあればすぐに僕に知らせる事。相談する事。無茶をしない事。こちらは何があってもおかしくない世界だ。僕との約束が守れなかったらどうなるか、分かってるよね?」


「はい」


俺は齋藤さんに許可をもらえたことに少しホッとした。ここで許可がもらえなくても何度でもお願いするつもりだったけど本当に怖かった。


「ところでお願いがあるんだけど聞いてくれる?」


「僕にできる事なら」


「大丈夫。誰にでもできる簡単な事だよ。僕が何を質問しても『はい』って答えてくれるんでいいんだ」


「分かりました」


そうして何故か変な質疑応答が始まった。テンポよく始まったが終わりがいつなのか分からない。俺はずっとはいと返事をするだけ。そろそろ疲れてきたなと思ってたら


「私と契約してくれるかい?」


「はい」


「言質はとったよ。否は聞かないから」


「は?」


いまなんつった、この人?契約?俺はなんて答えた?


「さぁ、蒼井くんの気が変わらないうちにサクッとしてしまおうか。大丈夫、本当にすぐに終わるから」


「さ、さ、さ、詐欺だああああああ!!!」


「何のことか分からないな〜。さ、始めようか」


この人、しれっとヤバいことしてくる!俺色々間違えたかもしれない!!この人は優しい人じゃない!!羊の皮を被った悪魔だ!!

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