第12話 疲労
ガサガサガサガサッ
「真白…」
「後ろ下がっとれ」
何かがこちらに向かってきている。黒いナニカだったらどうしよう。さっきの陣は一回限りなのか消えてしまった。俺も真白も警戒が最大になった時に
「いた‼︎大丈夫かい⁉︎」
「齋藤さん⁉︎」
「奏多⁉︎」
そういえば失敗してしまった時のことを思って一報入れていたんだった。返事もなかったからまぁ、見てくれたらいいなくらいでいたのにまさか来てくれるとは思わなかった。
「怪我はしてない⁉︎しんどいとか気持ち悪いとか何もないかい⁉︎」
「あ、はい。大丈夫です。怪我もしんどいとか気持ち悪いこともないです」
「本当に良かった。真白がいるとはいえ危険なことには変わりない。真白、どうして蒼井くんにこんな危険なことさせているんだ?」
「ふん、俺は手ぇ貸しただけや」
「真白」
「齋藤さん、真白は俺を助けてくれたんです!怒らないでください!俺が自分で決めて俺が動いたんです。真白は何も悪くありません!」
「だが、」
「真白がいなかったら俺はここにいなかったかもしれないし、真白がいたから黒いナニカはちゃんと解放することができたんです!」
「…解放できたのか?本当に?」
齋藤さんはなぜか驚いた表情をしていた。なぜそんなに驚いているんだろう。
「ホンマやで。アレは悠加が解放した」
真白もそう言ってくれたのに齋藤さんはまだ信じられないような顔をしていた。口元に手を当てて何か考え込んでしまった。
俺は何か悪いことでもしてしまったのだろうか?もしかしてあの黒いナニカを解放するのに何か資格がいるとか?規則違反だとかなにか大変なことをしでかしてしまったのではないだろうか。真白は妖だしそういったことには疎いのではないだろうか。
「いつまでもブツブツと1人でやかましいわ‼︎ええ加減にせぇ‼︎」
そういって齋藤さんにまっすぐ向かって行った真白の渾身の頭突きが命中した。
「ごめんね。あまりにも信じられないことだったから、つい考え込んでしまった」
「いえ、それよりも俺が黒いナニカ解放したことで何か問題が起こるんですか」
「いや、大丈夫だよ。でも色々説明しないといけないことがあるからそれはまた後日にね。それよりも家に帰らなくて大丈夫かい?」
「あっ」
やばい。俺は慌てて母さんに連絡を入れるが
「圏外…」
「そうそう、ここ圏外なんだよね。僕も蒼井くんに何度か連絡を入れたんだけれど繋がらなかったんだよね」
2日連続で母さんからの雷が落ちることが確定した。圏外エリアからでた後の携帯を見るのが怖い。
「その様子だとヤバそうだね。家までは送ってあげるから早くここから出ようか」
「はい、お願いします」
「はぁ、やっと帰れるわ。疲れた」
「真白にはまだまだ聞きたいことがあるから逃げたら許さないよ?」
「うっ、俺も疲れてんねん。明日にしてくれ」
「さ、行こうか。蒼井くん」
「無視すんな!」
真白が色々喚いていたけれど齋藤さんは完全に無視している。俺は帰路に着くための一歩を踏み出した途端
気づけば俺の視界は緑に覆われていた。薄れゆく意識の中で急いでこちらに向かってくる齋藤さんと真白が見える。何か言われているような気もするけれど口が動かない。大丈夫です、心配しないでと言いたいのに俺の意識は闇に覆われていった。
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