第10話 対策

昨日は色々あったけど真白のおかげでどうにかなりそうな気がしてきた。今俺たちは黒い何かをどうにかするために齋藤さんと出会ったあの神社に来ていた。


「なぁ、勝手に入って大丈夫なのか?」


「問題あらへん。お前が優先や。奏多もそんなみみっちいこと言わん」


真白から神社に行くと言われた時に一応齋藤さんには連絡を入れた。けど昨日の返事が返ってきていないことを思うともしかすると電波の入らない山奥にいるのかもしれない。芸能人は大変だ。




それにしてもやっぱりこの場所は不思議だ。この前見た桜は相変わらず綺麗だけど、その傍には時期としてまだ早い大輪のひまわりが咲いている。本来なら出会うことのない異色のタッグだ。写真に残したいくらいに綺麗だ。


「見惚れてる場合ちゃうぞ。早よ準備せなアレが来んで」


「うん」


真白が先導してくれて神社の奥に進んでいく。その先々にも綺麗な花達が咲き誇っていてお花が好きな人が来たら発狂するのではないかと思う。真白に連れられて進んだ先には


「蔵?」


「そうや。ここには色々しもてあるさかいお前が必要としてるもんもある。貴重な資料ばっかりやから扱いには気いつけや」


「分かった」


それにしても大きい蔵だ。一軒家くらいの大きさはありそう。蔵ってもう少し小さいイメージだったけどこれほど大きいってことはそれだけこの神社や齋藤さん一族にまつわるものが保管されてるってことだよな。蔵の扉を開けて一応声をかける。


「お、お邪魔します」


「邪魔すんなら帰れ」


「はーい、ってふざけてる場合じゃないだろ」


「定番やろ、気にすんな」


そう言って先に入って行った。本当にこの鳥は‼︎色んなタイミングで茶々入れしてくる。でも、そのおかげで助かったりしてることは言ってやらない。真白に続いて入ってみると埃っぽいかと思っていたが定期的に掃除されているのか案外そうでもなかった。たくさんの本や巻物が置いてあってそれ以外にも俺の知らないものがたくさん置いてある。なんかちょっと怖い…真白を早く追いかけようと一歩踏み出すと


「ふふ、ふふふ」


バッと声のした方を見てみると何もいない。あるのは日本人形だけ…


「………真白ぉ!待って!置いていかないで!」


俺は急いで真白を追いかけた。





真白にどうにか追いつくと遅いと言われた。真白が俺を置いてズンズン進んで行ったのが行けないんだ。


「見つけたで、この本や」


真白が示した本を手に取って中身を見る。


「これでどうにか出来るはずや、良かったな」


パラパラとめくっていく。


「なぁ、真白」


「なんや、礼は終わってからや」


「…………読めない」


「は?」


「だから、字読めない」


「はああああ!?」


この本見る限り凄い古い本。つまり字も昔のミミズみたいな文字なわけで俺には読めない。


「なんで読まれへんのや!?奏多はスラスラ読んどったで!?」


「それは齋藤さんが特殊なんだって!普通の高校生の俺にはこんなミミズ文字読めるか!とにかく無理なもんは無理!」


「ああ、もう!ほんまに世話の焼けるやつやな!ええかこれはな」


そこから俺と真白の第1回古書翻訳が始まった。学校が休みの日まで勉強するなんて俺はエラい!





全てを覚えることは無理だったけど必要な事は覚えた。後はどこで黒いナニカを迎え撃つかを考えなければ行けない。誰も巻き込まないそんな場所。


「黒いナニカは俺をターゲットにしてるんだよな?だったらまっすぐ俺の所に来るか?」


「ああ、その通りや。ええ場所見つけたんか?」


「山西山の途中に少し開けた場所がある。今は滅多に人が近寄らないから迎え撃つならそこがいいと思う」


「そんなとこあったか?」


「真白は空を飛んでるから分からないんだよ。あそこはちょうどいい感じに木に覆われていて上からじゃ分からないと思う」


俺もあの場所を見つけたのは偶然だった。それからたまにあの場所に行っていた。俺の秘密基地みたいなところだ。


「ならそこで決まりやな。早よ行って準備すんで」


「うん」


黒いナニカを解放出来るかどうかは分からないから不安だけど何もしないまま終わるのも嫌だ。でも、俺にできるだろうか。齋藤さんみたいにあの黒いナニカを解放する事が…


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