第8話 遭遇


新しい家族?を迎えて1週間ほどたった。小鳥の傷も順調に回復し後は飼い主を見つけるだけとなっている。でも、この小鳥は普通とは少し違う。何故ならこの小鳥は俺がいるときは必ず頭の上か肩に止まってくるのだ。俺が学校に行っているときは家のどこかにいるのだが俺が帰ってくるまで姿を現さないと母から報告を受けている。本当におかしな小鳥だ。俺のどこがいいんだか…


そういえば齋藤さんはいまどうしてるんだろう?連絡先を交換した直後はロケ先?撮影現場近くの風景とかの写真を送ってきてくれていたのだがここ1週間ほどそれが途絶えている。まぁ、人気俳優だし忙しいのもあるんだろうが普段どこにも行かない俺にとって齋藤さんから送られてくる写真は新鮮だった。それがないから少し寂しい気もする。


それにしても今日は月が綺麗だな。齋藤さんと衝撃の出会いをした夜みたいだ。


「ピィィィィ」


「うわっ!急にどうしたんだよ?傷が痛むのか」


俺の肩に止まっていた小鳥がいきなり暴れ出して机の上でずっとピィピィ鳴いている。どうにか大人しくさせようと格闘しているとふと部屋が陰った。今日は雲のない綺麗な月夜だ。急に真っ暗になるなんてあり得ない。そう思って窓を見てみると


「ヒッ!」


あの黒いナニカが窓の外にいた。なんでここに?どうして?ウゴウゴと蠢いている。俺はいまだにピィピィ鳴いている小鳥を確保して窓際から離れた。どうやら家の中には入ってこれないみたいだ。今のうちに齋藤さんに連絡をしようとスマホを操作しているとミシミシと窓から悲鳴が聞こえてくる。マズイ、窓を破壊して無理やり入ってくる気だ。家には母さんも小鳥もいる。俺はリビングにいる母さんに鳥を預け、散歩してくると家を出た。あの黒いナニカを誘き出すために。齋藤さんには一報を入れたから気づいてくれると良いんだけど。


俺の部屋の見えるところまで行くとあの黒いナニカがやっぱりいた。


「来い!こっちだ!」


そういって走り出すとあの黒いナニカもついてくる気配がする。やはり狙いは俺だった。そうして俺が狙われるのか分からない。今まではこんなことなかったのにどうして今になって。齋藤さんと出会ったことが原因なのか。今はそんなことを考えている暇はない。あの黒いナニカをどうするか考えなくてはいけない。あれは元は妖というのならば神社や寺に逃げてしまうのが良いのだろうか?自分が追いかけられるなんて思っても見なかったから対処法を聞いていなかった。


「クソっ」


思ってたより足が速い。このまま闇雲に走り続けるよりやっぱり神社か寺を目指すべきだ。ここから1番近い神社は田走神社だ。どうにかなりますように。






「ハァハァ」


なんとか神社に辿り着いたけど、夜の神社怖い。ちょっとどころかとてつもなく怖い。こうなんというか出そうな雰囲気。後ろを振り返ると黒いナニカ、前にはやばそうな雰囲気の神社。


「…ええい、ままよ!」


境内を目指して走っていく。振り返ると黒いナニカは動きを止めていて入れないようだった。ホッと息をついたらバチィという音と共にアレが入ってきた。


「…マジ?」


神社は意味ないのか⁉︎とりあえず境内まで走って行く。


「あっ、ヤベ」


次の瞬間には俺はこけていた。マズイ、そう思った時には黒いナニカは俺に覆い被さろうと大きい布団で包んでくるような形になっていた。もう死んだそう思った時白いナニカが飛んできて辺りを眩しい光で埋め尽くしてしまった。目も開けていられないくらいの眩しさ、これは一体?


光が消えた。目がチカチカするが目の前にいたあの黒いナニカは消えていた。代わりにそこにいたのは


「ホンマに世話の焼けるやっちゃな、チビ」


「真白?どうして?齋藤さんは?」


「奏多は仕事で北におる。ここにはすぐ来られへん。なんや?俺じゃ不満か?チビのくせに生意気な」


「そんなこと言ってないだろ?というか今黒いナニカを解放したのは真白なのか」


「ふん、俺にはアレを解放する力なんぞない。せいぜい追っ払うことだけや。アレはまたお前を狙いにくるで」


「そんな⁉︎」


「当たり前や。今のお前はアレにとって極上の餌やで」


「どうして?今までこんな事なかったのに?」


「その辺はまた教えたるわ。それよりもアレをどうにかすること考え。奏多は当分こっちに戻ってこれへん。お前がどうにかするしかない」


「どうにかするって一体?何か方法はあるのか?」


「そんなもん一つしかあらへんやろ?お前がアレを解放したったらええねん」


「は?」


「やからお前がアレを解放せえ言うとんねん」


何を言ってるんだ?この鳥は?俺が齋藤さんみたいに黒いナニカを解放する?そんなことできるわけがない。ナニカの存在だって最近知ったばかりなのにそんな俺にアレの解放?

真白がまだ何かを言っていたが今の俺にはことが重大すぎて何も耳に入ってこなかった。

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