第7話 鳥

俺が齋藤さんと話して数日経過した。あの後も色々聞いたりしたけど俺は圧倒的に妖に関する知識が足りないのだとそう痛感した。とはいえ普通に暮らすことに全力を注いでいたから仕方のないことだ。でも、齋藤さんみたいに黒いナニカをどうにかするという覚悟はない。話を聞いて少し知識は得た。けれど、俺はきっと普通の生活を捨てられない。あの時みたいなことになるくらいなら今まで通りが1番いい。


「きゃー、はるくんはるくん!要くんが出ているわ!相変わらずかっこいいわね!いつか会ってみたいわね〜」


「はいはい」


母さんは相変わらずだな。母さん、あなたの息子はその画面に映っている人とお友達?になりました。連絡先も交換しています。こんなことが知られた暁にはどうなることやら。


「あ、そうだわ。はるくん、実はね今日のお買い物の帰りなんだけど道路に怪我をしていた小鳥がいたの。本当に綺麗な鳥でもしかしたら誰かに飼われていた鳥かもしれないんだけど飼い主さんが分からないからとりあえずうちで面倒を見ながら怪我の治療をして飼い主さんを探そうと思うの。いいかしら?」


「母さんがそうしたいならいいんじゃないかな。でも鳥なんてここにはいないけど今どこにいるの?」


「あまり騒がしいとびっくりしちゃうと思って和室にいてもらってるの。連れてくるわね!」


「あ、待って。俺が和室に行くよ。移動してる時に怪我が悪化したら大変だよ」


「そうね、そうしましょう」


鳥…か。あの不遜な態度の鳥を思い出す。姿はとても綺麗なのに口を開けば残念な鳥。人ではないけれど天は二物を与えずという言葉が似合うやつ。ファーストコンタクトがアレだから今更態度を変えられても鳥肌ものだが。


「あら、起きてたみたい」


ケージの中には真っ白な鳥がいた。真白のような鳥ではないけれど色は真白と同じ。


「あら、ご飯がなくなっているわね。持ってくるからはるくん、ここお願いね。」


「うん、分かった」


改めてその鳥を観察してみる。なんの種類かわからないけれど、動物で真っ白なものといえばアルビノだろうか?でも鳥では白い鳥もいるよな、白鳥とか鶴とか鷺とか。少し距離を詰めてみると目の色は赤色じゃない。ならアルビノじゃない。少しホッとした。アルビノだと日光に弱いとか聞くから寿命が短いイメージがある。頑張って生きようとしているのに死んでしまうのはとても悲しいことだと思う。でも、妖たちは長い生を生きることをどう思っているんだろう。


「おまたせ〜。ご飯持ってきたわよ〜」


母さんが戻ってきてご飯の入れ物を変えようとケージを開けた瞬間、今だと言わんばかりに鳥が出てきた


「あ!」


高いところに行かれたらヤバい。そう思って捕まえようとしたら真っ白な鳥は俺の頭の上に収まってきた。


「あらあら、はるくんの頭の上が心地いいのかしら。物凄くくつろいでいるわよ。リビングに移動させようかと思ったけれどはるくんのお部屋の方がいいかしら?」


ちょっと待って、母さん。とりあえず次のことを考える前に俺の頭の上に止まっているこの鳥をどうにかしてくれないかな。俺が身動き取れないんだけど…


「あ、ごめんねはるくん。すぐに移動させるわ」


そういってケージに戻そうとすると飛び立ってまた俺の頭の上に収まってきた。


「ピィ」


そうしてケージに戻そうとしては飛び立ってきて俺の頭や肩にまで止まってくる。


「うーん、ケージに入るのが嫌みたいだからもうこのまま過ごしてもらいましょうか」


「え⁉︎母さん⁉︎」


「はるくんのことが大好きみたいだからお願いね。一応ケージとか部屋に運んでおくわね」


そう言って母は、俺の部屋に行ってしまった。何故か分からないけれど、一瞬あの不遜な態度を取る鳥を思い出した。

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