第4話 来訪

あの深夜コンコン事件の後、俺は蒼井要をテレビで見るくらいに留まり平穏な日々を送っていた。相変わらず妖は見えるけれどあの時以来黒いナニカとも遭遇していないし平穏そのものだ。今日も何事もなくすぎていくと思っていた。この時までは。


下校中、この辺りでは見かけない鳥を見かけた。真っ白い綺麗な鳥。尻尾が長くて優雅さの象徴ともいえそうな本当に綺麗な鳥。だから、どこに向かっているのかもわからないのについ追いかけてしまった。


真っ白い鳥を追いかけて来た先には鳥居があった。こんな所に神社はあっただろうか?この辺りには長年住んでいるが記憶にない。でも真っ白い鳥はこの神社に飛んで行った。まるで俺を誘い込むように。


……誘い込まれたのか、俺は。


最近気が緩んでいる気がする。いつもならこんなことしないのに。でも、ここまで誘い込まれたのには何か理由があるのかもしれない。


「ピイイイイイイッ」


「ウワッ」


色々考え込んでいるうちにさっきの真っ白い鳥が鳥居の上から俺を見下ろしている。まるで早く進めと言わんばかりに。正直危険かもしれないからこの先には進みたくない。でも、なぜか進まなければいけないような気がする。何か掴めそうなそんな感じ。俺は一旦深呼吸をして気持ちを落ち着けて覚悟を決めた。









鳥居をくぐるとそこには満開の桜が空を覆うほどに咲き誇っていた。


「やぁ、いらっしゃい。よく来たね」


声のした方向を見ると蒼井要が着物姿で立っていた。


「えっと…こんにちは」


「ふふ、そんなに警戒しなくて大丈夫だよ。僕はただ君と話をしたいだけだから。とって食いやしないよ。こちらへおいで、お茶を用意するよ」


俺は迷った。本当にこの人の話を信じて大丈夫なのかと。俺もあの黒いナニカみたいに消されてしまうのではないかそんな事をグダグダ考えていると灯篭に止まっていた真っ白い鳥が


「早よ行かんかい!奏多が茶ア淹れてくれるゆうとるやろが!ホレ早よせんかい!チビ!」


「は?鳥が喋って」


「やからモタモタすなや!早よ行け!チビ!」


「真白ちょっと」


「チービチービ!」


ブチッ


「誰がチビだ!?その白い毛毟り取ってやろうか!?」


人のコンプレックス刺激しやがって!それに俺は高校1年生だ!まだまだ伸び代はあるんだよ!


「お前以外に誰がおんねん!チビ!それにチビ如きに俺様が捕まるかいな!ふはははは!」


「チビチビうるせぇんだよ!絶対に捕まえて標本にしてやる!!」


「はい!!そこまで!!真白、彼は大事なお客様だ。無礼は許されないよ。それからウチの子がごめんね。でも僕は本当に君と話をしたいだけなんだ」


「ふー、いえこちらこそすみませんでした。少しカッとなってしまって本当にごめんなさい。俺もあなたに聞きたい事があるのでお話させて下さい」


「ありがとう。じゃあこっちだよ。着いてきて」



とりあえず深呼吸をする。つい鳥相手にカッとなってしまった。いや、最初から喧嘩腰できたあの鳥が悪い。人の気にしている事をよくも…

それにしてもなんか変な感じだ。いつもみたいに隠さなくていいから少し息がしやすい。


「早よ着いてけや、ノロマ」


いちいち腹の立つ鳥だな!?でも置いていかれるのは困る。俺は急いで蒼井要を追いかけた。





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