第2話 デジャブ

今朝のテレビに映っていた俳優の蒼井要が頭から離れない。あれはきっと昨日の夜に出会ったヤバいイケメンで間違いない。なんだってテレビにやっぱり見間違いか?それに忘れてないじゃないか。何が寝てしまえば忘れるだ。むしろ思い出してるじゃないか。いや、テレビを見なければ思い出さなかっただろうか。でも既に思い出してしまった事は仕方がない。そうなると昨日の夜の踏み潰されたあの黒いナニカも気になってきた。アレは一体……


パンッ


「ワッ」


「ふふふ、私の授業より面白い事でもあったのかしら。」


「あ…花ちゃん」


「花咲先生。今は授業中よ?授業よりも気になる事があるなんて私も気になるわ〜。だから今日の放課後私の頼み事を聞いてもらうわよ。」


「……ごめんなさい。喜んでさせていただきます。」


授業中である事をすっかり忘れていた。よりにも花ちゃんの時に考えるなんてしくじった。花ちゃんこと花咲陽葵先生。俺達のクラスの担任で一見おっとりしてるが見た目と違って容赦のない怖い先生だ。怒らせたらいけないタイプ。

はぁ、明るい間に昨日の所に行こうと思ってたけど無理そうだな。






花ちゃんの手伝いを終える頃には日が暮れていた。流石に昨日の場所まで行く勇気は無い。もし妖がいてもこれまで通り無視していれば問題ないが昨日のことがあるから何かあればきっと反応してしまう。まっすぐ家に帰ろう。







おかしい。何かがおかしい。いつもの通っている通学路なのに何故だろう。まっすぐ家に帰るだけなのに何故かヤバい気配がする。まるで昨日の夜みたいな事が起こりそうな……


「あれ?君…昨日の子?」



驚いて声のした方を見てみるとテレビで見たイケメン俳優 蒼井要がそこにいた。そして黒いナニカも足で踏まれている。


「あー、昨日の子と言っても分からないね。おかしいなぁ。昨日の事があったから今回はちゃんと結界張ったのに。」


そう言いながら蒼井要はなんでだとずっと不思議そうにしながらブツブツ言っている。それは正直俺が聞きたい。なんでだ。


「んー、まぁ今回も君の運がなかったということで。大丈夫、昨日と同じで寝てしまえば全て忘れるからね。」


そう言うと蒼井要は黒いナニカを昨日のように踏み潰して軽やかな足取りでこっちに近寄ってくる。俺は昨日みたいに動くことは出来ない。でも息はできる。俺はカバンの紐をグッと握って呼吸を整える。蒼井要は俺の目の前まで来ると


「あれ?昨日みたいにパニックにはなってないみたいだね。うん、良かった良かった。大丈夫。何も怖いことは無いよ。眠れば忘れてしまうからね」


昨日と同じような事を言いながら手を伸ばし頭を撫でてくる。昨日より余裕があるからか、普段されない事だからだろうか、なんかちょっと照れ臭い。そんなことを思っていると


「あれ?え?ちょっと待って??」


俺の頭を撫でていた手が止まる。どうしたのだろうかと蒼井要を見てみると驚いてるような、理由が分からないような顔をしている。昨日とは逆で蒼井要がパニックになってるみたいだ。


「あの……」


「ちょっと待って。君もしかして昨日のこと覚えてる?」


「はい」


「………え?えええええっ」



イケメン俳優 蒼井要は俺が覚えていることに驚きすぎて叫びながら頭を抱えてしゃがみこんでしまった。


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