第19話 恋は盲目
「ここです」
私は彼に連れられ約束の場所へと訪れた。そう一緒にお花を見ると約束した公園に。
「此処が……」
綺麗だ。それ以外に私は言葉に表すことが出来ない。
空から見た世界も素晴らしいと思ったが、遜色ないと言えるほどだ。
いや、彼が横にいるだけで私には特別な景色だ。
彼の横で綺麗に咲き誇る花を見ながら思う。
老婆と出会った時、私に言った予言。あれは私の事ではなかった。
『少し変わった優しい彼女さんに一つだけ。絶対彼との約束を果たしなさい。それが彼女を救う事になるはずよ』
彼女さんは私。だけど彼女とはきっとお方の事だったのだろう。
私が彼を助けると約束をし、それを果たすには老婆に頼むしかなかった。
その為に私は呪いのせいで転生を続ける老婆を開放する必要があった。
老婆の転生が無くなればお方のように苦しむ存在はいなくなる。
老婆を開放するという事はお方を救うという事だったわけだ。
私は救われるために約束を果たすつもりはなかったが、なんだか騙された気分だ。
「どうされました?」
「いえ、綺麗だなと。それ以外に表現できない自分が悔しいと思っただけです」
「そうでしたか。ですがそうですね、綺麗としか表現できないです」
私が声を詰まらせた事に疑問を思ったのか、彼が聞いてきたので私は考えていたことを振り払い答える。
彼も同じく綺麗としか表現できないということは、本当にそれ以外に表現することが難しいほとに圧倒的だという事なんだろうな。
「これからどうするのですか?」
「どうするとは?」
「いえ、今後何か当てがあるのかと思いまして」
「当てならありますよ?」
「え? あるのですか?」
「はい、目の前に当てがいます」
「……もしかして僕の事ですか?」
「はい、私には他に当てなど一切ありません。それに約束しましたから」
「約束は先ほど果たしたではありませんか」
「いえ、まだ果たしていません」
私の目の前には彼が立っている。私は振り返らず、そして後悔をしない。
「だって私は貴方に約束しましたから。私が貴方を目覚めさせると」
そう目覚めさせる。おはようと言う挨拶とともに。
「私朝は早いので任せてください」
「え、え? ど、どういう――」
うまく理解出来ていない彼には悪いですが、これはもう決定事項です。
「末永くお願いしますね!」
彼が逃げようとも最後の最後まで約束を果たそう。
私に出会ってしまったのが運の尽きでしたね。
盲目の魔女を盲目にさせてしまった責任を取ってもらいます。
どこまでも追いかけて逃がしません。
私は盲目の魔女。そう、恋は盲目な魔女です!
盲目の私は約束をした ミギニール @hanzo999
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