第18話 見えなく

 盲目の魔女。それは誰にも見られることが無い存在。見る事が可能なのは希少な魔法使いのみ。

 この説明を受けた時、私は思った。これは体質ではなく、魔法のせいなのではないかと。

 私の考えでは普通の人からは知覚されないが、魔法使いには効果がない。その程度の魔法だと思う。


 だから私が疑問に思ったのは誰が私を見えなくさせたかという事だ。

 だけどこれは心当たりというか、多分そうなんだろうなと思う人物はいる。

 きっとその人物は私を隠したかったのだろう。


 しかし今はその事はどうでもいい。何故なら彼が目覚めたからだ。

 そして私は老婆との約束を果たす。


 私の目が見えるようになり世界が開けたように、次は私が魔法で老婆の世界を変える番だ。


「私には呪いを解呪する事は出来ません。ですが呪いから解放してあげる事は可能です。いきます……<バニッシュ>」


 <バニッシュ>は対象を消し去ってしまう魔法だ。そう私はこの魔法で老婆を消し去った。


「これで本当に呪いから解放されたのかい? 本当に私は死ねるんだね?」

「はい、これで問題無く呪いから解放されました。盲目の魔女である私が言うのですから間違いはありません」

「そうか……ありがとう」

「どういたしまして」


 私は老婆を消した。消えたものは見えなくなり、認識する事は不可能になる。

 だから私は老婆を消したのだ。呪いが老婆を認識できないように。


 本人は口にしないが、きっと私と別れたあと死ぬのだろう。それほどに今の老婆は晴れやかで、それでいて見てわかるほどに憔悴しきっている。

 だから私は敢えて何も言わない。それこそ彼女の為になるだろうから。


 一仕事やり終えた安心感からちらりと彼を見やり、視線を戻すとそこにはもう老婆の姿はなかった。

 もう会う事はないだろう。私の先にはもう老婆は立っていない、そんな気がした。

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