第268話 遊んどるやないかーい!
アーデルハイトと獅子堂姉弟が公園で遊んでいる、ちょうどその頃。
会場内の『水際族』のスペースは、それはそれは大変な繁忙に見舞われていた。元より、
「ぬぉぉ! 忙しすぎるッス!」
毒島さん着ぐるみに身を包んだ
「んぉ、寝てた」
特に何をするでもなく、椅子の上でうつらうつらと船を漕いでいるオルガン。彼女が座るテーブル上には『写真は三枚まで』と書かれた札が立てられていた。その隣には『お触り厳禁』とも。
「マジでエルフが役に立たねぇんスけど!」
「む……よせやい」
「褒めてねぇんスよ!」
当初の予定では、既にアーデルハイトと
今にして思えば、四人で回せるという見込みすら甘かったと言わざるを得ない。『水際族』のスペースはそれほどの盛況ぶりであった。これは
そんな折、
整理のため列の後方に居たクリスが、漸く売り場へと戻ってきたのだ。
「只今戻りました」
そう言って
「っしゃあー! これでどうにかなるッスよ! クリスが女神に見えるッスよ!」
「む……よせやい」
「エルフがうるせぇー! アンタに言ってねぇんスよぉ!」
そんな、客を前にして行われる言い争い。
「あのあの! オルたその耳、触ったら駄目ですか!?」
「む……私は許そう。だがこの『
そう言いつつ、オルガンが脇に設置していた木魚をポコリと叩く。すると木魚の割れ目部分が怪しく光り、謎の赤い輝きを放ち始めた。ついでに不穏な駆動音もセットだ。これにはファンも怯み上がり、本人も気づかぬうちに一歩後退してしまっていた。
「ひぇ……」
「いやぁー申し訳ないッス! 気持ちは分からないでもないんスけど、お触りは禁止させてもらってるんスよー」
「あ、いえ、私もちょっと興奮しちゃって……変なこと言ってごめんなさい」
我に返った女性ファンは失礼を詫び、一礼してその場を去っていった。去り際にしっかりと写真を三枚撮っていったあたり、なかなかに根性の座った団員である。
しかしそんなものをいちいち許可していては、いつまで経っても列を捌く事など出来はしない。どこぞの銅像よろしく、オルガンの一部が変色しても困るのだから。
終わりの見えない長蛇の列、夏に引き続き自分の考えが甘かったことを再認識させられる
「っていうか、お嬢達はまだなんスかね? 遅くなるって連絡はあったッスけど、流石にちょっと遅すぎるというか」
開場してからこちら、既に一時間が経とうとしている。あの二人がすんなりと合流してくれるとは思っていなかった
「先ほどSNSを確認したところ、まだ暫くは来られない様子でした」
「うぇー、そッスか……ん? 何でSNSなんスか? 電話とかじゃなくて?」
「ええ。先程列に並んでいる方に教えて頂きました。少々お待ちを」
クリスはそう言うと、着ぐるみの内部から自らのスマホを取り出した。そうして何かしらの操作をしたあと、とある画面を開いて
「いやいや! 遊んどるやないかーい!」
「ふふ、楽しそうで何よりですね」
「出たよ! 全然何よりじゃねーッスよ! このアデコンが!」
主従に呆れ、
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