第212話 見学余裕ですわー!
霊亀を実戦テストに使うと決めた理由は、クロエからの依頼や、
これが最も大きな理由だ。
無論、霊亀が厄介なのは初撃以後の話だ。この強固な魔物を一撃で倒すことなど誰にも出来ない。故に探索者達は狂乱状態に陥った霊亀と戦う必要があり、そのリスクに見合った成果が得られないからこそ、誰も進んで倒そうとはしないのだ。
だがもしも、厚い装甲を破って一撃で仕留める事が出来るなら。程よく硬く───あくまでも異世界を基準にした場合だ───、かつ群れを成すタイプの魔物ではない。試し斬りの相手としてこれほど適した魔物も居ないだろう。
そう、一撃で倒せるなら。
如何に『蛟丸』と謂えど、4メートルもある巨大な亀を両断出来る筈もない。甲羅の強度がどうとかそれ以前の問題だ。漫画ではないのだ。ファンタジーではないのだ。刀は刃渡り以上のものを斬ることなど出来はしない。それが普通で、それが常識だ。大地を抉るような斬撃だとか、斬撃そのものを飛ばすだとか、そんなことはあり得ない。身体能力が強化されているとはいえ、探索者も所詮は人の身なのだから。
「ふぅ……」
及第点をもらったとはいえ、まだまだ見習いであることには違いない。当然ながら、戦いの中で自然に魔力を操作するなどまだ出来はしない。
一方の霊亀はといえば、
こちらの世界ではどうだか知らないが、これがもしも異世界であったなら。この霊亀とやらは皆須らく、これほどの大きさへと成長する前に他の魔物の餌となっていることだろう。偉そうに腕を組みながら、アーデルハイトがそんな風に考えていた頃。準備が整った
「っ───行きますッ!」
* * *
「ちょっと、ホントに大丈夫なんでしょうね?」
「んぅー……わたくしの見立てでは、五分五分といったところですわね」
「えっ」
「五分と五分ですわ」
「聞こえてなかった時の『えっ』じゃないわよ!! そんな『見学余裕ですわー!』見たいな顔しておいて五分なの!?」
「わたくし、どんな顔してますの……?」
心の何処かでは訝しみつつも、これだけ余裕を見せているのだから大丈夫なのだろう。そう思っていた
「必要ありませんよ」
黙したまま
「そう……なの? いや、でも五分五分なんでしょ? あの子が強いのは───強くなったのはよく分かったけど、五分は信頼出来るような確率じゃないわよ?」
「仮に
「そこまでは言ってないわよ!?」
「その時は責任を持って、魔物はこちらで処理致します。まぁ、そんなことにはならないと思いますが」
それは魔法の師としての信頼からくる言葉か。
「
「もう大体見ましたわー」
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